〈第49話〉青空キンタ・マンキ
「だ、だ、だけど、ヒトは本来、霊長類の主役っぽいけ、けどね。緑じゃ脇役っぽくない?それになんで緑だけ日本語、な、なの?」
「そして紅一点、チンパンジーのおしりピーンク!!」
「も、もう、えーーと。なんだっけ。もう、ややこしいよ、ボケが」
息子の健三とブロリ先輩の息子(推定)の掛け合いを「くっくっく」と笑いながら、長瀬は楽しんでいた。
二人とも声がよく出ているし、結構ウケてる。ツッコミが少々長すぎたり、口調がセリフくさかったりと、あらを探せばキリはないが、中学生でこれだけやれたら上等だろう。
プロのお笑い芸人でもない自分がどうしてこんなに偉そうに、息子たちの漫才を分析しているのかと長瀬は自分で自分がおかしくなって、また笑った。
「そ、それに、ケ、ケンちゃん、チンパンジーのおしりはピ、ピンクじゃないよ」
「そうなんですけどね。でもまじめな話、アフリカのケニアにはキンタマがすっごく綺麗な青色をしたサルがいるらしいですよ」
「え・・・?な、なにを言い出してるの、きゅ、急に。そ、そういうサルがいることは、ぼ、僕も知ってるけどね。え?」
「なんかね、エメラルドみたいな、スカイブルーみたいな色らしくて、なんていう名前だったかな」
「え?ケンちゃん?だ、だから何を。ま、まあ、そ、そのサルの名前はサバンナモンキーっていうんだけどね」
「いや、そんな名前じゃなくて、なんだっけな。スカイブルーキンタマンキーじゃなかったかな」
「さ、さっきから何を言ってるんだい、ケンちゃん」
「日本名は青空キンタ・マンキ」
「ええええ?ケンちゃん?」
「キンタ・マンキってお前ら、漫才コンビかよ、ってね。それからブロッコリー君、僕のことはケンゾーって呼んでくれるかな」
困惑する相方をよそに、やりたい放題勝手に話を進めていく健三。さっきまで笑っていたお客さんたちも、どうしたんだ?と戸惑ったような、気まずそうな顔だ。
あいつ、調子に乗ってアドリブ入れだしたな。長瀬は苦笑しながら、息子の暴走するマニアックな下ネタに、いかにも中学生らしい失敗だなとほほえんだ。
それでも下痢になって舞台からトイレに走るなんてハプニングに比べれば、かわいいもんだとも思う。
陽月祭マニアのおじいさんは、すっかりしかめっ面に変わって、またこちらに顔を向けた。
「おい。初代。まさか、あいつもこれからトイレに行くんじゃないだろうな」
「ははは。まさか」
「それにしても懐かしいのう。今年の陽月祭も来てよかった」
見ず知らずのおじいさんと小声で談笑しているうちに、ケンゾー&ブロッコリーの出番は終わっていた。




