〈第45話〉おれたち、霊長類レンジャー!!
意識をステージのほうに戻すと、
「おれ、新しいヒーロー考えてきたんだよね」
と健三が得意顔で言っている。
うん?ヒーロー?
「な、な、なに、ケ、ケンちゃん、新しいヒーローってなんなの?ゴレンジャーみたいなの?」
「そうそう。今日、おれがヒーローやるから、ブロッコリーは怪人やってよ」
「い、い、いいよ。で、で、でもさ・・・」
なんだよ。まさか。おれたちのパクりじゃないだろうな。しかし息子は親父たちが昔、寸劇をやったなんて知らないだろうしなあ。
気になって、隣のおじいさんの表情を盗み見る。「まさか。ごぞうろっぷレンジャーじゃなかろうな?」なんと。やっぱり、間違いない。このご老人は確実に、われわれの伝説の寸劇を見てくれている。そして、おれとおんなじ疑念を抱いている。それにしても、ひとり言が多いおじいさんだ。
「おれたち霊長類レンジャー!!」
再び息子のよく通る声が響く、長瀬は漫才に意識を戻す。
「れ、れ、霊長類レンジャー?」
「そうだ。とーーう。ゴリラレッド参上!」
「ご、ご、ゴリラレッド?」
観客が「わはは」とどっと沸く。
「ひ、ひ、ヒーローっぽくないね」
「うるさい、とーーう、ブルーおらうーたん参上」
「ぶ、ブルーおらうーたん?き、き、気持ち悪いよ」
「うるさい。どんどんいくぞ!イエローモンキー!!」
「い、い、イエローモンキー?そ、それヒーローじゃないよね。黄色人種に対する蔑称だよ。べ、蔑称ってのはバ、バカにした言い方ってことだよ」
「うるさい。豆解説はいらないんだよ」
なんとも、ブロリ先輩の息子さんっぽい(もう絶対息子さんだと思うが)ツッコミの仕方に、思わずほおが緩んでしまう。
客席の反応は上々で、大きな笑い声が起きている。おじいさんも「ははは」と楽しそうだ。
「とーーーう。人緑」
「え、え、え、ヒトミドリ?」
「そうだ、人緑参上!」
「も、も、もう本格的に気持ち悪いよ。ヒトミドリって。た、た、確かに人も霊長類だけどさ」
ここで客席が爆笑に包まれた。
「くそう、おもろいやんけ、ジブンの息子」
熊谷が長瀬の肩に手をかけ、少し大きめの声を出したときに、いすのおじいさんが視線をこちらに向けた。
一秒か二秒ほどだろうか。じっと、長瀬を見て、その後、熊谷と清花にも視線をはわせる。
少しほうけたように「ああ」と息を漏らし、おじいさんは結構長めのひとり言を吐き出した。
「心臓レッド。心臓レッドじゃないか。痔と下痢で途中交代になった、初代心臓レッド」
熊谷と清花は驚き顔になった。
長瀬は「初代って」と苦笑いするしかない。
高橋のおばちゃんは「ふふふ」と優しくほほえんだ。




