〈第41話〉五臓六腑という言葉は知っていても意外と六腑の詳しい内訳知らなくない?
清花は気を取り直したように僕を見ると、そこから息を大きく吸って立ち上がり、両手で両方の耳たぶを引っ張ってつかみ、ダンボのようにパタパタとさせながら、
「はつみみ―――!!」
と叫んだ。
お客さんが一瞬、ぽかんとしたのを見て、僕が慌てて、
「なんだそりゃーー!」
と返す。お客さんたちは安心したように「あははははは」と笑った。
僕は小声で「なんだそりゃ。初耳って。お前のギャグか」と聞いてみる。
「なんだそりゃ、って小声で聞くなーーー!!」
清花の叫びに、今度はすぐに爆笑が起こった。
「だいたいオレは味方だ。味方にカンチョウするな」
「ごめんー」
「いやいやジブンらもう、めちゃくちゃやん。台本、原形なくなっとるやないかい」
熊谷が絶妙なタイミングで入ってきた。さすがだ。
うーん。それにしても、おしりが痛い。そしてなんで三好が・・・。ケガしたんじゃなかったのか。だけど、今はそんなことを考えてる場合じゃない。ここからは清花と息を合わせて、さらに盛り上げていかなければならない。僕は流れを戻すべく、こう叫んだ。
「台本とか言うな。さあ、十二ページの六行目に戻るぞ」
「そやから、言うな。そういうことを」
お客さんの笑い声を聞きながら、清花と目を合わせ、小さく「せーの」と言って客席を向く。
「おれたち、二人そろって五臓六腑レンジャー!!」
「いやいやいや、だから足らんねん。二人じゃ」
客席がドッとわく。
「五臓六腑やったら、五足す六で十一人おらんとあかんのちゃうん?それにしてもジブン、青いなあ」
熊谷が細かいアドリブを入れてくるのに、思わず僕も笑いそうになる。もう一度、清花と目を合わせ、「せーの」とうなずき、
「うるさい!!おれたち二臓六腑レンジャー!!」
と叫ぶ。「どははははは」グラウンドのあちこちから舞台のほうに、まさにわき上がってくるような笑いの波が押し寄せる。
客席で「なんだよ二臓六腑って」と吹き出すような声が上がるのも聞こえた。三好もしっかり笑っている。もはや最前列に座っているお客さんの中には涙を拭きながら「ひい」と言ってる人までいるじゃないか。
「いやいや。二臓って。三臓どうしてん。大事やぞ三臓。百歩ゆずって二臓やったとしても六腑はどうしてん」
「う、うるさい。まじで。ぷのことは言うな、ぷのことは」
「ぷって。ぷが一人も出てきてないやん」
もう学校中が笑いの渦に揺れていると言っていい。こんなにウケていいのだろうか。
三たび、僕と清花は息を合わせ、
「おれたち、二臓レンジャー!!」
とポーズを取った。
「いやいや二臓レンジャーはやばいやろ。十一人おらなあかんのに九人おらへんのやろ。ちびっ子泣くわ」
「おれたち二臓!!」
「なんでやねん。レンジャーを付けろよ、レンジャーを、せめて」
もう僕も熊谷もアドリブが止まらない。
「おれ心臓!」
「心臓って。自己紹介やし、ヒーローの要素ゼロやん。ぷを一人でもええから出せ」
「ぷはいない。図書館で借りた本にもあんまりちゃんと載ってなかったんだ。ぷのことは。大腸、小腸、胃、胆、膀胱、三焦。三焦ってなんだよ」
「知らん!」




