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〈第30話〉夕日がオレンジ色にグラウンドを染め出した前日、僕たちは最終リハーサルを行った

 夕日がオレンジ色にグラウンドを染め出した陽月祭の前日、僕たちは特設ステージを使って最終リハーサルを行っていた。


 テントの設営や、机や椅子の運び出しをしている生徒がそこらを行き交っている。にぎわった雰囲気に、いよいよだなという気持ちが湧いてくる。


「熊谷は登場したら、もう少しだけ素早く真ん中に移動できる?」


 舞台の上で動きを確認する役者四人を僕は下から見上げて、思いつくままに指示を出していった。


「オッケー分かった。長瀬、よう声出てるやんけ。やっぱジブンも出たらええのになあ」


 熊谷に言われて初めて、僕は人がたくさんいる中でも、大きな声で平気に話せていることに気づいた。もちろん人がたくさんといっても、みんなそれぞれの準備で忙しくて、ステージのほうに注目なんてしてないのだけど、それでも今までの僕だったら、緊張して、こんなにハキハキとはしゃべれなかったはずだ。


 そう。僕は人前で話すのが好きじゃないだけ、別に苦手なわけじゃないなんて強がってきたけど、やっぱりほんとは苦手だったんだよね。今、克服できた(のかな)ということを実感して、あらためて、そのことが分かった。明日の本番に出演するわけではないけれど、寸劇委員に思い切って立候補してよかったなと心から思った。


「先輩。私が登場するときのアドバイスもしてくださいよお」

「ケンちゃん、ぼ、僕はどうだい?」

「おれはもう完璧だよな。絵が本職っていうのに、こんなことさせやがってよ、まったく」


 熊谷はもちろん、清花、ブロッコリー先輩、三好もよく練習を頑張ってくれた。明日はきっと大丈夫。大成功が待ってる気しかしない。


「四人とも完璧だよ!」


 腹の底から声を出して、僕はとても爽快な気分になった。


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