02
大きく息を吸い込んで、静かに息を吐き出す
目前の敵を見据え、二歩前へ進む
面の隙間から見える敵を竹刀で構えると同時に神経を尖らせて迎え撃つ
私は、昔から何の取り柄もなかった
だけど、歴史が大好きだという理由から剣道を親から進められ、16年間ひたすら続けてきた
剣道が好きなのかと言われると正直よく分からないけれど、竹刀を持って戦うという行為は嫌いではなかった
決して危ない意味ではなく、そういった行為が昔の人々の事を想像できるからだ
そして、特に辞める理由もなく、辞めたいと思う事もなかった私は剣道を続けて今に至る
竹刀と竹刀がぶつかる音と束釣り合いをした際に発せられる竹刀の鞘が重なる音が体育館に響く
私はこの音が好きだった
「夏歩、今日俺ん家で飯食ってくだろ?」
「あ、いいの?」
「だって、今日親2人とも仕事で遅くなるんだろ?」
「やった。ありがと咲良」
「待ってましたと言わんばかりの笑顔だな」
「あ、ばれた?」
同じ剣道部の工藤 咲良
彼は私の幼なじみで、幼稚園の頃からの付き合いだ
幼なじみでありきたりな話だけれど、小学生までは私の方が背も高くて強かった
剣道だって、私の真似をして咲良は入部した
なのに、いつのまにか咲良は私の背を超え、強くなっていた
「咲良先輩、稽古付き合ってください」
「おう」
咲良は優しい
だから、後輩もすぐに懐いた
とても良い先輩だと思う
それに比べて、私は咲良とは真逆で
後輩には厳しく、目に物を見て言う
そこで、お疲れさまのアイスでもご馳走してあげられる優しさがあれば、私ももう少し後輩に好かれていたかもしれない
だけど、そんな事ができない私は後輩に懐かれた事が一度もなかった
「あー腹減ったあ」
「咲良、いつもそればっかだね」
「お前は痩せすぎ。もっと食べなくちゃ駄目」
「私はもともとこういう体質なの」
「羨ましい体質だな。そんな事言ってるとそのうち女子皆から疎まれるぞ」




