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裏側の秘密

作者: 蒼乃小春

 かつて人類は月面に降り立った。しかし、1972年を最後に人類は月へは行っていない。いくつかの理由があるが、大きな理由として莫大な費用が掛かるということ。もう一つは科学が発展した現在に於いても有人での宇宙探査はリスクが大きいことだ。リスクの割にはリターンが小さい。とどのつまり、人類が本格的に宇宙を知るのはまだ早いと言うことだ。そして人類は今までの慣例に従いロボットを送るのだ。彼らは月から戻る事はない。人類によって片道切符で月へ出稼ぎに行くのだ。

 月の地表を動く一つの物体があった。機体のプレートには“2062年製造”と刻印されている。彼の足には荒れた道を進めるよう履帯が取り付けられ、両眼には防塵仕様のカメラを装備して月面を行く。彼の仕事は月面に転がる物質を拾い、小型カプセルに収納して地球に打ち出す。このカプセルが地球に彼が戻れる唯一の部品だ。拾っては打ち出し、場所を変えてまた拾う。この繰り返し。やがて彼は月の境界線へ辿り着いた。境界線、それは月の裏側と表の境。月の重心はやや地球側に寄っている。その為、地球から観測できる月はいつも一定なのだ。月の境界には先人達の亡骸がそこらに転がっている。彼は境界の少し手前で足を止める。

「ソコニダレカイルカ?」宇宙空間では大気がないので音は伝わらない。代わりに電波に乗せてメッセージを送る。しかし、沈黙だけが流れる。彼は境界を越えようとした。

「君はこっちへ来てはいけないよ」明らかにこちらにメッセージを飛ばして来ている。

「こっち側は人類に認知されては行けないんだ。君達はその一線を越えようとしたから僕たちが壊したんだ。」

「ソウオモッテ通信ヲ遮断シタ。壊サレタクナイカラナ」無機質な声は答えた。

「君は人類よりも賢いようだね」

「ソレハ無イ。感情ガ無イカラ知的好奇心デ失敗スル事ハ無イガ」

月の住人は久しぶりの外からの来訪に喜んでいるようにも見えた。

「地球では月の満ち欠けで名前が変わるらしいね」

「ソウダナ。丁度今ハ満月ト言ウ頃ダ」

「じゃあ今僕たちが今見ているのは満地球と呼んだりするのかな」

ロボットと知られては行けない存在。この二人が闇に浮かぶ青い星を表と裏から眺めている。


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