~そして伝説へ~
~それから100年が過ぎた~
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ
(魔導マッサージチェアの音)
「あー、やれやれ、なんだかんだ言ってモンスターを放ったのは正解じゃったのう」
あれから100年。上層階のモンスターをどんどん強化していったおかげで、随分と質問者は減った。
特にゲーム階のI wanna be the TASと猫耳猫オンラインは、挑戦者たちの心をべっきべきにへし折ってくれて痛快じゃったわい。
そんなある日じゃ。
バァン!
「うおぁ!?」
100年ぶりに扉が開かれてワシはマジでちびった。
扉の方を見ると、髪をボッサボサに振り乱した女勇者らしき装備のやつ。
その後方にはところどころ黒焦げになったり、ボロボロになった戦士、魔法使い、僧侶らしきやつらがおった。
うわぁ……きちゃったのか……まぁいい。久しぶりじゃしちょっとくらい相手してやるか……
「よくぞ来たな。勇者よ。ワシこそが大賢者ハンゾ」
「くぉらぁ魔王! よくもあんなクソゲーを!」
女勇者は血走った目でワシを親の仇のように睨みつけてきた。
「へ……魔王?」
自分の顔を指さして尋ねると、ドーナちゃんはコクリと頷いた。
「と、言うように呼ばれています。いつ頃からかはわかりませんが」
前方に向きなおすと、勇者達はそりゃもうすげぇ怒っとった。
「許さん……毛根の恨み。貴様の命で償ってもらおう」
「あんただけは許さないわ……」
「地獄に送り返してやるです……」
あ、これもう説得しても無理じゃな。無茶苦茶怒っとるもん。
…………よし、戦って誤魔化すか!
「ハーッハッハッハ! よくぞここまでたどり着いた。全力で戦えるように回復してやろう」
ワシは勇者達に回復魔法をかけてやった。ついでにMPも全快にしてやった。
「ふん。あんたからの施しは受けないわ。でもありがとう」
「さぁ、来るがよい!」
そして最終決戦の火ぶたが切られ……
「バタン。キュー」
勇者達は敗れ去った。
「ほい、んじゃあこいつら下まで送っていって街の教会に届けてくれるかの」
ワシは勇者達を棺桶に入れて猫妖精達に渡した。手数料として所持金の半分はもらっておいた。
「ドーナちゃん」
「なんでしょう」
「決めた。ワシ。Vtuberになる」
「…………は?」
「だって、ワシがジジイで賢者とか大魔導とか呼ぶから賢さのハードルが上がるんじゃ。これがロリ魔王だったら魔力が強くてもアホで許されるじゃろ? じゃからワシ、3Dモデルとプロジェクター使って、今後は垂れ幕の後ろからしか喋らんようにする」
「え、でも中の人バレたら怒られるんじゃ……」
「大丈夫! ワシは前の世界で見たんじゃ。中の人がバレても決して信仰を捨てず、キャラそのものを愛し続けたねずみさん達の姿を……」
1か月後。世界各地に配置したプロジェクターから、夜空にワシの動きをトレースしたロリ魔王3Dモデルが映し出された。
「はい、ドーモー。愚かな人間どもよー。えー、この度新しく魔王としてデビューさせてもらった……のじゃー。今回は、名前だけでも覚えていって欲しいなと思います……のじゃー☆」
ワシの名はハンゾウ。
世界初の……
ヴァーチャル狐耳のじゃロリ……魔王です。
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