アホ様。荒廃した大地に法の光をお照らしにならせられる
「ドーナちゃん。聞いてくれ!」
ドパァン!
ドアを開けた瞬間。ワシの腹に12.7mm弾が叩き込まれる。
「ぐほぉっ! あ、アンチマテリアルライフルはやめて……」
だからワシ純魔じゃから装甲は紙なんじゃって! 殺す気か!
「一生近づかないでくださいと言ったはずですが?」
警備室でモニターチェックしていたところがバレて以来、ドーナちゃんはご機嫌ナナメじゃった。
「ご、ごふ……そ、そんな事よりドーナちゃん。ワシ、良い事思いついたんじゃよ」
「なんですか? またイヤらしい事だったら殺しますからね?」
「い、いや、違……」
そう、ワシは思いついたんじゃ。
あらゆるアホ共を追い返す必殺の秘策を……
ドスッ
『ここは私有地です。許可なく立ち入る事を禁止します』
ワシは頃合いを見計らって看板を地面に突き刺した。
「どうじゃ! もうこれで誰も入ってこれんじゃろう!」
口で言ってわからんやつには法の力で訴えるに限る。
人の話を聞かんクレーマーは、権威のラベルには滅法弱いからのう。
そしてしばらく塔の影に隠れて様子を伺っておったんじゃが……
ズカズカズカ ズカズカズカ
なんとやつらは看板に一瞥もくれずに勝手に塔に入っていくではないか。
「こらー! なにしとんじゃお前らー!」
ワシは勇者っぽい一行を引き留めて怒鳴った。
「なんだ貴様。邪魔をしないでもらおうか。この塔の最上階には大賢者様がいるはずなのだ。我々は国難を救うために、彼の者の知恵を授からねばならん」
「この看板が見えんのか! 立ち入り禁止と書いとるじゃろうが!」
「国の一大事なのだ! 私有地だからなどと言う些細な理由のために引き返す訳にはいかない!」
「やかましい! 帰れー!」
ズドォォォォォォォン!
こうして悪逆非道な無法者たちは退治された。
「はぁ、はぁ。なんと世紀末なやつらじゃ。法の光も届かんとは……」
「鍵、かければいいのに……」
ドーナちゃんは何か呟いていたが、ワシの耳に入る事はなかった……