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アホ様。街をお造りになられる

 それから3か月。ワシはある作業に没頭しておった。


「出来た。出来たぞい……グッフッフ。ゴミ共がもがき苦しむ姿が目に浮かぶようじゃて……」


コンコン


「どうぞ」


 ワシは慎重に入室の許可をとってから僅かにドアを開け、中の様子を伺う。

 また不用意な発言をしてガトリングガンでハチの巣にされてはたまらんからの……


「アホ様。セクハラですよ」


「なんでじゃ!?」


「いや、動きが……」


 まぁ、確かにドアの隙間からジジイに覗き見られるのは気持ち悪いかもしれん。


「そんなことより、ドーナちゃん。ついに完成したんじゃ」


 ワシはドーナちゃんを1階に案内した。



「こ、これは……」


 ドーナちゃんが1階の様子を見てポカーンと口を開ける。

 そうじゃろう、そうじゃろう。なんせ壁は迷路に作り替え、そこら中にスライムがウヨウヨしとるからのう。


「ワシは閃いたんじゃ。アホ共が気軽に入ってこれんように番犬を置いたらいいんじゃないかと。最初はケルベロスを放とうかと思ったんじゃがのう。

 しかし、アホが迷い込んでいきなり噛み殺されたら流石に可哀想じゃろ? じゃから1階には毒を抜いて服だけを溶かして食べるスライムを放っておいたんじゃ」


「なにかやってると思ったらこんな事を……相変わらず無駄な方向に凄い人ですね」


「ほっほっほ。褒めるな褒めるな」


 普段無表情じゃから、たまに見せる驚いた顔が可愛ぇのう。なんか若干呆れとるような気もするが……まぁ気のせいじゃろ。


「更に2階には迷路を洞窟風にしてゴブリンを。3階には人工芝と観葉植物とテンタクルスウッドを。4階には泥沼風ローション地帯の先に、牢獄とオークを配備しておいた」


「な、なんかそのチョイス偏ってませんか?」


「いや、大丈夫じゃ。しかし、この程度のモンスター。簡単に突破してしまう者もおるじゃろう。再挑戦する度に毎回毎回下層のモンスターを皆殺しにされてはたまらん。そこでじゃ……」


 ワシはリモコンのスイッチを入れた。


「用意した……顔認証付きエレベーター。5階まで来れば、1階まで帰還出来て次はここから再スタート出来ると言う訳じゃ」


「ま、また無駄に凝ったものを……」


「フッフッフ。ワシは前世でVtuberやらなんやらが流行るはるか以前から、ウィンドウズ用のキネクトを買って自作ツール組んでおったからのう。静止した相手の顔認証くらい朝飯前じゃて」


 どうじゃ、見たかワシの技術を。ちょっとくらい尊敬してくれてもいいんじゃよ?


「更に、満足感を感じてそのまま帰ってもらえるよう、お土産も用意した。異次元空間と繋がった宝箱からランダムでアイテムが出てくるようになっておる。さらに10階には……」


 そしてワシは自慢のダンジョンの仕様を詳細に説明した。

 もはやこれであのゴミ共から気軽に質問される事も大幅に減るじゃろう。

 もしクレームが入ったら「この程度のダンジョンも突破出来ん愚か者に授ける知恵はない!」とか言って追い返そう。


 そして半年後……



「ウォォォォォォ! 進めぇぇぇぇ!!」


「20階まで到達したら凄いお宝があるらしいぞ!」


「宿屋一晩20ゴールドだよ! さぁ、寄っていった寄っていった!」


「7階のリザードマンには痺れ針が有効だ。12階のポイズンタラテクトを抜けるには毒消しが必須だよ! 」


 塔のまわりには物凄い人だかりが出来ておった。



「な、なんか街が出来とるんじゃが……」


「有名な雑誌のおススメダンジョンランキングで世界一になったそうですよ」



 ワシの名は大賢者ハンゾウ。なんで……こんな事になっちゃったんじゃろう…… 

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