アホ様。大図書館をご建設に御成りになる
~賢者の塔。ハンゾウの私室~
「今日も訳のわからん質問者が来たの……」
「今日も来ましたね」
「すげぇ怒っとったの……」
「物凄く怒ってましたね」
今日も訳わからん質問者が来てワシは参っておった。
親切に答えてやったのに「これが世界一と謳われた大賢者か。聞いて呆れる!」とか言われた。
ワシがなにしたっちゅーんじゃ。
「なぁ……220年も経っとんのじゃから。もういい加減ワシ賢くないよって事、世間に伝わって欲しいんじゃけど……」
ワシが愚痴を吐くとドーナちゃんが眼鏡をクイっとさせる仕草をして答えた。君眼鏡かけてないじゃろ……
「ご安心をアホ様。アホ様がアホな事は全世界の9割に知れ渡っております」
「えっ!?」
え、いや、それはそれで傷つくんじゃが……うわ、もう一生塔の外に出るの止めよ。
「じゃあなんでこんな毎日質問者くるんじゃろ? 嫌がらせじゃろうか?」
ドーナちゃんは大きなため息をついて答えた。
「アホ様……全世界の人口と言うのは物凄く多いのです。1割のアホが賢者と言う呼び名だけでアホ様を賢いと決めつけたとして。更にそのうちの1%でも訪ねてくればそれはもう掃いて捨てるような数になります」
「……地獄じゃないか……」
世間にはアホと思われとるのに、人の話聞かないクレーマーみたいなアホの相手を365日せねばならんのか。
そう言えば前の世界でも、悪質なタックルをした大学と似たような名前と言うだけで無茶苦茶クレームを受けた大学があったのぅ。
「え、それじゃあこの前の王様とか言うのは……」
「1割の側のアホです」
……大丈夫なんかその国。
まぁ、前の世界でもそうめんを茹でたらカロリーが2倍以上になるとかツイッターで言ってた人もおったし専門家ってそんなもんなのかの……
「それにしても。そもそもの勘違いの原因ってワシが魔法を使える事にあったと思うんじゃが。なんで魔法使えるじいさんって賢い設定なんじゃ? 基本歳とったらボケる一方で賢くなんかならんぞい?」
「そりゃまぁ……呪文書とか色々本読んでるイメージあるからでは?」
「いや、そんなんワシ、チートで魔法使っとったから全部無詠唱じゃし……」
「読んでみてはどうです?」
「え?」
「本……取り寄せれますよ。お暇でしょ?」
そしてワシは31階から44階まで改装して大図書館を作った。
改装に一月半。貴重な古代の本から最新のアルゴニアン謹製エロ本まで揃えた世界一の蔵書量を誇る大図書館が完成。
そしてワシは学術書を30ページほどと、ラノベを3冊ほど読んで力尽きた。
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ
ワシが魔導マッサージチェアで癒されておるとドーナちゃんが紅茶とドーナツを持ってきてくれた。
「アホ様。せっかく図書室作ったのに全然読まれてないじゃないですか」
「いや、だって常人の集中力とかそんなもんじゃろ……ドーナちゃんはどのくらい読んだ?」
「え、あ、いえ、私は……」
特に他意もなくなんとなく聞いてみただけじゃったんじゃが、ドーナちゃんの頬がちょっぴり染まったのをワシは見逃さんかった。
「ド、ドーナちゃん! おぬしまさかエロ……」
「アホ様」
ピシャリ!
幻聴じゃろうか。ホントにピシャリと言う音がして部屋の空気が一刀両断された。
「セクハラですよ」
「……すいません」
ワシの名は大賢者ハンゾウ。世界一の大図書館の主。
だがワシはそこに書かれておる内容をほとんど知らん。
世の中には……知らぬほうが長生きできる事もたくさんあるからのぉ……