2話
大きな城の城門に入ると大きな宮園が試験会場となっていて、多くの人が集まっていた。
「うひゃー。これ、300人以上いるんじゃないか?」
「ですね。思ったより人が多い気がします」
「恐らく理由は、、、あれよ」
リアが城の入り口の大きな門の前を指差した。
「おぉっ!アレは…」
指差した方向には光り輝く五つの武器が飾り並んでいた。その前後左右には武器の警護である城の衛兵たちが立っている。
「すっ、、、げー!!なんだあの武器!?めっちゃカッコいい!」
「ふー。ユートは本当に何も知らないんですね。あれは試験に合格した者に贈られるこの国の最高峰の鍛治職人が作った武器ですよ。剣、槍、拳、弓、杖の五種類ですが、今年はここ数年隠居していた大親方が打った最後の作品と呼ばれる物が商品になっているそうです」
「ま、最大の目玉よねあれは。買おうと思っても普通に働いても手に入らないような値打ちだそうよ」
「欲しい!あの剣欲しい!!」
「だと思いました。ユートはわかりやすいですね。僕はやはりあの杖が。何とも言い知れない存在感を感じますし」
「あたしはどれでもいいわ。何でも使いこなしてみせるから」
「リアは器用だからな。俺は断然、剣!巨大な岩も一撃だぜ!!」
「はいはい、頑張りなさいね。来年」
「だからぁ!なんで落ちる前提なんだよ」
「あ、二人とも。そろそろ始まるみたいですよ」
立ち並ぶ武器の前、木枠で作られた壇上に白い鎧に身を包んだ肩まで伸びた金髪の男が上った。年は二十代前半だろうか。ザワザワと賑やかだった会場が一気に静まり返り、よく通る声で男が言った。
「それでは、これよりレンジャー試験を開催する!今年の試験を担当する王国騎士団副団長のカルナバルだ。無論、レンジャー資格も持っている!!」
シーンと静まり返った会場内からヒソヒソとささやき声が漏れ始める。
「おい、あの人…」
「ああ、史上最速で副団長になった…」
「功績を買われて騎士団にスカウトされた…」
色々な情報が飛び交っている。
「なぁレン、リア。あの人有名人?」
「はぁ?知らないの?マジであんたバカなの?アホなの?」
「リア、もう手遅れですよ。あの方は元Cランクレンジャー〝閃剣のカルナバル〝。目にも留まらぬその剣技は切られた事もわからない早業とか」
「へー、強い人なんだな…ってこらっ!お前もサラッと蔑むな!!」
「未開のダンジョンを発見し踏破したり王都と他の村をつなぐ道の整備に貢献したり。一番大きな話は数年前の魔物の襲来から城を守った第一貢献者ってやつね」
「ええ、僕たちも王都に来る途中モンスターに出くわさなかったのはあの方の功績のおかげでもありますからね」
「えっ?そうなのか??」
「「……」」
「な、なんだよ二人とも」
「はぁ、、、」
「いえ、もう諦めましょう。モンスターはダンジョンの中から自然発生するこの世界の負のエネルギーの塊。生き物、特に人間がいる以上負のエネルギーが無くなることはあり得ません。ダンジョンを踏破、すなわちダンジョンマスターを倒すとそのダンジョンからはモンスターは生まれなくなります。カルナバル氏はこの国のダンジョンを踏破したので、モンスターが出てこなくなったというわけですよ」
「ありがとレン。いくら脳細胞が一つしかないミジンコでもわかりやすい説明だったわ」
「へー、凄い人なんだな。って、俺に対してひどくね!?」
「もーうるさい!あんたは黙ってなさい」
少し声をあげすぎたようだ。周りの人たちに睨まれてしまった。
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「以上で簡単な説明と挨拶とさせていただく。では、これより第一試験に入る!」
ユートは、試験は全部で3つということ。試験に説明したら先着順に新レンジャーとしての賞品として前の武器から一つを贈られること。試験は全て自己責任によるもので、例え死んでも訴えることはできないというくらいの内容は理解できた。
「しゃあ!いよいよだぜ!筆記試験じゃありませんように!!」
「始まりますね」
「ええ、いよいよね」
参加者全員に緊張が走る。
「第一試験は、、、キノコ狩りだ!」
・・・は?
会場中から、そう聞こえた。