1話
描ききりたい…
今日は待ちに待った試験の日。
何の試験かって?
俺がこの世に名前を轟かす第一歩になる記念すべき日だ!
「よっしゃー、行くぞ!今日から俺は探求者だ!!」
「やれやれ、気が早いですねユートは。試験に受からなきゃ免許は取れないんですよ?」
「そうよ。受かる倍率は50倍、50人に一人の確率なのよ?しかも今年は随分多くていつもの3倍、300人くらい王都に集まってるって話だし」
「おいおいレンもリアも弱気だな!?んなこと関係ねーって!300人なら、、、5人は受かる計算だろ?俺たち3人がその中に入ればいいだけの話さ」
「300人なら6人ですよ…」
「はぁ…なんでこんなバカとずっと一緒に居るのかしら」
俺とレンとリアは同じ村の幼馴染。森に囲まれた田舎町で育った仲間だ。15歳を迎えるとレンジャーになる資格が取れる試験を受けれるようになる。15歳の誕生日を迎えた俺たちは徒歩で2日かかる道のりを越えて俺たち3人は小さい頃からの夢であるレンジャーになりに来たのだ。
レンジャーというのは世界各地を飛び回り人類の発展に貢献するため活動する職業のこと。新種の生物の発見や未開の地の発掘、昔は戦争が起こった時に傭兵として駆り出されたこともあるそうだ。全世界の国々が公認で認めている職業で、富も名声も働き次第で得ることができる。
誰もが一度は夢見る職業だ。
だが、その仕事柄危険は常につきまとう。命を落とすことも多いので、能力のないものはなることができないよう国が配慮して試験の難易度を上げているのだ。
「まぁ、確かに全員受かる可能性はありますが」
「そもそもレンはいいとして、あんたちゃんと勉強してきたの?」
「へっ!いつまでも俺を力自慢の単細胞だと思うなよ!ちゃんと本くらい読めるように勉強してきたぜ!!」
「字が読めるレベル…ですか」
「はぁ…また来年頑張りなさいね」
「何だよその落ちる前提の発言は!?」
レンは昔から頭がいい。本ばかり読んでいて体力はあまりない方だったが一緒に野山を駆け回り遊んでいるうちに随分と身体能力も上がっていた。
リアも物事を冷静に分析できる頭の回転力を持っている。俺やレンを上手くまとめ上げることのできる同い年なのに姉御肌だ。
俺はというと、生まれつき力が強く頑丈で村の大人達にも負けない腕っぷしだ。しかしどうも勉強とか頭を使う分野は苦手だ。
三者三様、それぞれ別のタイプの3人が集まっていたものだ。
「でもさぁ、試験の内容なんて毎年試験官が変わるから誰もわからないんだろ?筆記テストがあるかもわからないのに勉強したって無駄さ」
「リアが言いたいのはそういうことではなくてですね、レンジャーとしてやっていくにも知識と教養が大事だと…」
「あぁっ!見えたぜ、試験会場!俺がいっちばんのりー!!」
「レン、あのバカもう居ないわよ」
「…やれやれ、僕たちも行きましょうか」
ユートの後を追い、レンとリアも人だかりを進み試験会場へと向かって行った。