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異世界図書館長の日常   作者: 香宮 浩幸
手違いで転生することになりました
7/15

1-7異世界図書館巡り(1)

すみません、更新できてませんでした。本日一話目です。

 

 光がおさまるとあたりの様子が変わっていた。


「ここであっているのかな」

「はい、ここが0番書庫です」


 転移した先は最上階とは違って、大きく部厚い本がどこまでも並んでいた。


「ここに置いてあるのはどんな本なの」

「ここは総記の書庫なので、情報学や図書館学の本や、百科事典、一般論文集などが置かれています」

「それって、俺たちの世界の図書分類番号と同じ……」

「はい、ここは異世界図書館アカシックレコードですから」


 そうだった。この図書館では近隣世界の情報も取り込まれている。俺のいた世界はこの世界の隣だというし、図書分類番号が使われていても何もおかしなことはなかった。


「なるほどね。ということは0番書庫という名前も」

「はい、館長の世界の情報から作られたものだと思います」

「そうか。おっ、そろそろここの司書がきたようだな


 ライラといろいろと話していると、この書庫の司書がやってきた。


「これは新館長、お待たせして申し訳ありません」

「全然気にしてないよ。まだ、この区画に来て一分も経ってないし」

「そうですか。ああ、自己紹介がまだでしたな。異世界図書館0番書庫、総記の棚の管理を任されておりますアリエスです」


 そこにやってきたのは、白髪に長い白鬚しろひげという賢者のような恰好をした老人だった。確かに総記の棚の管理者という感じがするな。


「新館長のシュウヤ・イフィリアです」

「おお、では女神さまの息子ということですか」

「いや、まあそれに近いというかなんというか…」


 アリエスに俺に女神の魂が入り込んだいきさつを話すと、それは貴重なような運のないような複雑な体験をなされましたなあ、と苦笑いで感想を語ってくれた。


「館長、そろそろ」

「そうじゃな、お引止めして申し訳ない。ヴァルゴ……いや今はライラか。確かにほかの司書のもとへも行くのなら急いだほうがいいでしょうな」

「もう、行くのか?」

「ええ、こういうことは早めに終わらせておきましょう」

「そういう理屈か。わかった、じゃあ行こう。アリエスさん今後もよろしく」

「もちろんですとも」


 そう言ってから転移で1番書庫に飛んだ。


「ここが1番書庫ってことは、哲学・宗教の棚か」

「はい、その通りです」

「新館長、お初にお目にかかります。1番書庫、哲学・宗教の棚を預からせていただいておりますアグリアスです」


 今度の司書はすぐに現れた。その姿はとてもかわいい巫女さんだった。服は白い宗道着でボディラインが出にくいが、それでもまな板少女だということは分かった。ほんとに前館長がロリコンだったとよくわかったよ。


「ああ、よろしく。それで、その服は」

「ええっと、一応女神さまに仕える者としての服のチョイスだったのですが…… おかしかったですか」

「いや、全然(むしろいいと思う)。ところで、この世界ってやっぱり女神様を信仰してるのか」

「はい。基本的には大多数の人が女神教またはイファリア教と呼ばれる教会の信者ですね。一部、土着の神や精霊神を祭っているところや、女神教から分裂してできた宗派などもありますが」

「その、分裂した宗派の一つが起こした魔導書暴走事故が先代の最も大きな仕事ですね」

「そっ、そうか…… ところで女神様の名前なんてよく広まったね」

「女神さまが信託として語り掛けたり、私が最初期に布教をしたりしましたから」

「結構、きちんとしてるのな」

「ええ、もとから女神さまの力はお強いですが、信仰によるエネルギーでさらに強化されますので、星の管理を安定させるためには結構重要ですね」

「へえ」


 途中途中にライラが解説を入れながら話しているとアリエスと話していた時間とほぼ同程度の時間がたっていた。


「じゃあ、そろそろ」

「そうですか、またいらしてくださいね」

「ああ」



 こうして再び転移して2番書庫にやってきた。


「2番書庫、歴史・地理の棚担当のキャンサーです。新館長よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


 今度の司書はワイシャツにネクタイ、ブラウンのズボンに眼鏡という学校の先生みたいな30歳ぐらいの男の人だった。

 よくみるとワイシャツの襟元には金色のフレームの中に黒で本のマークとakashic recordsという文字が刻まれたピンバッチがついている。ライラによると、なんでも異世界図書館アカシックレコードの関係者の証明になるものだそうだ。よく見るとおれのローブの襟や、ライラのワンピースの胸ポケットにもついていた。


「それで聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょうか」

「この星の歴史について、かんたんに聞かせてくれ」

「ええ、わかりました。この星ができたのは約20億年前です。人類が発生したのが約50万年前。その後初めての国家が誕生したのが2000年前でそれから約100年もの間その当時の2大国家が、館長の世界で言う冷戦に近い状態を続け、最終的には複数の国家に分裂しました。現在では最大の大陸フェルナンド大陸上に17の国家が、南方のユーフィリア大陸に2つの王国が、その他の大陸には未開地が大半で、一部に大国の飛び地があるのみです…… このぐらいでよろしいでしょうか」

「ああ、丁寧な解説ありがとう。また細かく聞きたいことがあったら聞きに来るよ」

「ええ、お待ちしています」


 こうしてから、またまた瞬間移動で3番書庫に飛んだ。そのタイミングで少し気になったことがあったのでライラに聞いてみた。


「ついたか」

「はい、ここが3番書庫です」

「そうか。ところで司書たちってみんな人造人間ホムンクルスなのか」

「はい、現在では全てが人造人間ですが……」

「ですが?」

「初期の頃は幼女、童女型はすべて人造人間でしたが、それ以外はすべて自動人形オートマタでした」

「なんでそんなことになってるんだ」

「なんでも先代館長が私を含めた司書を作る際、「幼女、童女型はともかく、それ以外の方にわざわざ労力と高い触媒用いてまで人造人間にする気はない」だそうで…… 結局仕事効率が悪く、メンテナンスも必要だったので、5年程ですべてが人造人間に代えられました」

「よく、そんな館長のところでひねくれず真面目にやってたなあ」


 本当に先代は筋金入りのロリコンだったらしい。ほんとうにライラたちに同情するわ。


「最初は辛くてもいつかは慣れるものですよ。それに先代館長にかかわる仕事以外は楽しかったですし、司書で集まって愚痴を言ったりもしていましたから」

「そうか。たしかに仲良さそうな感じがしたもんな、30年ほぼボッチだった俺と違って……」

「き、気にしないでください。そんな人だって中にはいらしゃいますから」

「ああ…… そうか……」

「ちょっと、なんで余計に落ち込まれてるんですか、館長」

「何かうるさいと思ったら、ヴァルゴか」

「今は、ヴァルゴじゃなくてライラと呼ばれています。というかあなたまた寝てたんですか」

「そうだけど。ということは隣にいる暗い人は新館長さん?」


 冗談で言ったボッチ発言を、ライラから結構本気で慰められて、落ち込んでいる俺のもとへ、パジャマ姿の幼女がやってきた。話からしてどうやらこの子が3番書庫の司書のようだ。


「新館長よろしく。社会科学の棚担当のジェミニ」


 しかし、本当に異世界図書館の司書たちは個性豊かだな

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