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異世界図書館長の日常   作者: 香宮 浩幸
手違いで転生することになりました
14/15

1ー番外編 ライラの思い人

な、なんで。か、館長がここにいるんでしょうか?私は確か歓迎会の途中で……寝てしまいましたよね。


確か、そうだったと思うのですが………い、一体なぜこんなことに。




私の名前はライラ、つい昨日まではヴァルゴと呼ばれていた、ホムンクルスです。


仕事は異世界図書館アカシックレコードの司書長で、長い間この仕事を続けています。えっ、正確な勤務年数ですか。私は生まれた時からこの仕事をやっていますから、勤続年数=年齢になります。女性の年齢を聞くのはタブーに決まってるじゃないですか。


私を作った前館長は、ロリコン少女趣味の変態で、私は何度襲われ、何度撃退したことか分かりません。そんな最悪な館長は人間の上位種<ハイヒューマン>でしたが、それでも生物ですので寿命が来て、やがて亡くなりました。


その時、館長は異世界図書館管理のためにと、私たちを遺しました。あんな人でも初代館長ですから、この図書館には思い入れがあったのでしょう。事実、内装や機能を含めて今でも役に立っていることも多いのですから。


初代館長の死後も私たちは、周辺世界の情報を集め、異世界図書館の運営を続けました。



初代館長の死から500年後、新しい館長がやってくると女神さまから連絡が来ました。連絡とは言っても女神さまからの一方通行なので、私たちからコンタクトを取るのは不可能ですが。


私は期待半分、不安半分で新しい館長を待っていました。初代館長は最悪でしたから、それも仕方がないとは思うのですが………




「しかし、なかなか来られませんね」


女神さまからの連絡があってから、早や3日。私はすっかり館長室の整理も終えて、何度も館長へのあいさつを再考していました。


「ひょっとしたら、館内で迷っているのかもしれませんね。少し探しに……」


そう思い、館長室の扉を開けると


「うわあ」

「大丈夫ですか」


そこにいたのは、見覚えのない男性でした。おそらくこの方が新しい館長なのでしょう。


ただ、問題は……


「ええと、イファリア様ですか」

「いえ、私は先代館長に作られましたホムンクルスの司書長です」


思わず、いきなりの質問に冷たく答えてしまいました。いや、だってこの人……


「名前は何ていうの」

「先代館長が次の館長様が男性なら、名前を付けて下さいご主人様、と猫なで声で言えば萌えるとおっしゃっていましたので新館長様が付けて下さい」


ああ、もう新館長様が微妙な顔されちゃったじゃないですか。こんな、あのエロ初代館長が言ってたことを口走ってしまうなんて。


……こんなタイプど真ん中の人に嫌われたらどうするんですか。


新館長様は私の葛藤など知らないでしょうが、ライラという素敵な名前をくださいました。


さらに新館長様は、私たちホムンクルスの感情や思考について、元が無機物であっても、命を持った以上はそれに魂が宿ることは素晴らしいと言ってくださいました。


私にとって一生忘れられない言葉をくださったこの新館長様の名前は修也様。私が初めて恋した人の名前です。


そんな思いの中、いろいろと失態を犯しながらもなんとか館内周りを終え、館長の歓迎会が開かれました。


一目ぼれから10時間以上が経って、落ち着いて考えてみると失態やら失言やらが頭に回り、最終的にやけ酒の様相となりました。荒ぶる思考の中で、ただこんな醜態を見せたら、確実に修也館長に嫌われるという考えだけがさらに深く頭の中を回っていくのでした。


私はホムンクルスですよ……でもだからって人に恋しちゃいけないとかはないと思うんです。少なくとも思うことは自由ですから。ああ、でもこんな女じゃそもそも……



気が付くと、私は自室にいました。どうやら誰かが連れてきてくれたようです。ほんとに酔いつぶれて運ばれるなんて、私ってホントにダメですね……今日は誰が運んできてくれたのでしょうか…………んっ、えっ。


顔を上げて、私は叫びそうになりました。私のベッドの横に座っているのが修也館長だったからです。幸いなことに一瞬目を開けたのには気づかれなかったようですが。


でも、なんで館長が私の部屋に……。 絶対パイシーズさんですね。あの人なら館長をけしかけてもおかしくありません。まさか今もどこかで見てるんじゃ……


そのとき、館長がふとつぶやきました。


「落ち着いたみたいだね。じゃあ、そろそろ」


そう言って、館長は私の手をそっとローブから外させました。てっ、言うか。私はずっと館長のローブを握ってたんですか。も、申し訳ないです。


私、寝言で変なこと言ってませんよね。大丈夫ですよね。まさか、さっきのことを寝言で言ってたりとかは……。ま、まずいです。もう瞼が……



「ライラちゃん起きて」

「ああ、パイシーズさん。もう朝ですか……」

「違うわ。お酒臭いだろうから、着替えさせに来たのよ」

「そうです、か。すいませ…… ちょっと待ってください。私の部屋になんで館長が来ていたのか説明してください」

「やっぱりばれちゃったか。で、一部始終を聞く気、ある?」

「もちろんです。すべて聞かせてもらいますよ」


私はパイシーズさんから、ことの全てを話されたせいで余計に落ち込むことになったのですが……



ともかく、まだまだこれから先の時間は長いのです。最初の失敗より、これからのことを考えましょう。何より館長はホムンクルスが恋愛しても良い、と言って下さったのですから。

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