1-11歓迎会
今日は本編を出さなかったので、気まぐれ投稿です。
「・・・修也館長の就任を祝って、この会のあいさつに代えさせていただきます」
「じゃあ、私が音頭取るわね。館長、就任おめでとう。カンパーイ」
疲れ切って帰ってきた俺だったが、司書たちは館内の大ホールの一つで歓迎会を開いてくれた。そこで、面倒くさい魔導書の件をいったんわきに置いておいて、本気で楽しむことにしたという訳だ。挨拶はアリエスで、乾杯の音頭はサジタリウスだ。ちなみに幹事やら、買い出しやらはレオがやらされたらしい。なんか、年齢の関係性が体育会系の部活みたいだな。
「館長は、ビール党ですか、日本酒党ですか、それとも洋酒系ですか」
「じゃあ、ビールで」
「おーい、レオ日本酒が足りなくなってるぞー」
「キャンサー先生、そこら辺の魔法の鞄にはいってますから、勝手にとって飲んでてください」
あきらかに成人年齢に達していそうにないやつが多いが、ライラによると成人してないのは容姿だけで、中身は数千歳らしいし、まあ問題ないか。
「館長、料理はお口に会いましたか」
「ああ、あれってアグリアスが作ったの。かなりおいしいよ」
「そうですか。まあ作ったのは私だけじゃないんですけどね」
アグリアスとライラによると、今日の料理はキャンサーとライブラとライラの合作らしい。種類は和食、洋食、中華から、見たことない料理まで混ざっているのは異世界図書館らしいと言えるだろう。ちなみに一番料理がうまいのはあのマッチョなタウロスらしい。まあ、確かに家政学って技術・工学の棚だけどさあ。
「今日のメンバーだと一番うまいのはキャンサー先生ですけどね。レパートリーがすさまじいですから」
「がんばろうよ、女性陣」
「はい……」
私は聖職者なのでお酒は飲みません、と言ったアグリアス以外は飲めや歌えやの大騒ぎ。あっ、でもアリエスとカプリコーンの二人は端のほうでちびちび飲んでるし、ライラは俺についてるし。というか、うるさいのはとある三人だ。
「ねえ、館長。今日私の胸みてたよねえ。責任とってよう」
「酔ってるな」
「酔ってないよーう」
サジタリウスの酒癖が異常に悪かった。朝起きたら記憶がなくなっているそうなのでたちが悪い。
「ライラさん、聞いてくださいよ。私のレー君への気持ちどうしたらいいんですか」
「もう伝えてしまったらいいんじゃないですか」
「それができないから、困ってるんですー。うっ、うう」
「もう、泣かないでくださいよ。まったく、レオ、この人の話を聞いてあげてください」
ライブラは泣き上戸+女性陣への絡み酒がひどい。ライラがぼそっと、鬱陶しいからさっさとくっつけこのバカップル、とかなり怖い顔で言っていた。俺の方を向いたときには元の顔に戻っていたけど。よっぽど絡まれてるんだろうな。
「館長殿、刀のすばらしさについて夜通し語らいましょう」
「結構です」
「そう言わずに」
タウロスはとにかく酒が入ると刀について語りだすらしい、まあさっきもそうだったけど。
「日本酒っていいですよねー」
「私はウォッカが一番いい」
「だからと言って、度数が70度のものをロックで飲むのは危ないわよ、ジェミニちゃん」
キャンサー、ジェミニ、パイシーズはザルだ。レオが大量に消えていく酒を見て涙目になっていた。どうやら資金もレオが出したらしい。
後のメンバーは普通に飲んでいる。ちなみに俺も普通ぐらいだ。まあ、前世より若くなった分、多少は飲めるようになっているのだが。
「おやすみー、レオ」
「ちょっと、ライブラ姉。寝ないでくださいよ。もう、また僕が連れてくんですか」
「寝ちゃったサジタリウスとジェミニちゃんは私が連れて帰るわ」
「あっ、じゃあお願いしますパイシーズさん」
「じゃあ、館長はライラちゃんをお願いね」
「えっ、俺、男ですよ」
「大丈夫よ、信用してるから」
数時間後、寝始めた面々をかかえて、転移で部屋に送っていく。俺とレオを除く男性陣はまだ飲むらしい。もう深夜2時だけど。ちなみに前世とこの世界の時間の流れは同じだ。あのひとたちは徹夜で飲む気なのか。まあ明日の仕事に差し支えなきゃ……
「あの、バカな男どもは。絶対、明日は二日酔いで、仕事できない言い訳にする気ね」
仕事に差し支えるまで飲むなよ。どんだけ飲みたいんだ、まったく。
酒臭い宴会場を出てライラの部屋に瞬間移動する。部屋は白を基調とした部屋で女の子らしいかわいい部屋だった。
「よっこらしょ、と」
ライラをそのままベッドに下ろす。服や体が酒臭いだろうが、まあ明日の朝、風呂に入ればいいだろう。そのまま離れようとした時だった。
「いかないで」
ライラが突然、俺の手をつかんだ。
「何だ寝言か。普段、真面目にやろうとしてるからその反動が寝てる時に出たのかな」
「一人は、いやです……… なんで私は人造人間なんでしょうか…… 私だって人並みに……」
苦しそうな顔で寝言を言っている彼女が辛そうでなかなか動けなかった。30分ほどして静かな寝息を立て始めたの確認して、部屋を出た。
「一線、超えちゃった?」
「うおっ、なんだパイシーズさんですか。何でここに」
「いや、あの子を着替えさせてあげようかと思ってこっちに来たんだけどあなたが中々出てこないから待ってたのよ」
「さっさと入ってきたらよかったじゃないですか」
「でもねえ、密室に男女が二人っきりって状況だったし」
「あなたの考えてるようなことは、一切ないですからね」
というか、この人、扉開けてないのに俺が中にいることを知ってたな、まさか
「ひょっとして、魔法で、中見てたんじゃないでしょうね」
「ばれたか。透視っていう特殊魔法を使ったのよ」
「特殊というか、命名まんまじゃないですかその魔法。というか、それってどういう目的で見てたんですか」
「もちろん、修也館長がライラちゃんに欲情して飛び掛かったら助けに入るためよ」
「そのまま、観察する気でしたよね」
「………」
この短期間でも彼女の性格はよく分かった。あぶねー。下手な事してたら有罪確定だった。YRNTの紳士の方々にも怒られていただろう。
「今度、ライラちゃんに手をだしたくなったら言ってね。ウォッチしにくるから」
「そんなことしませんし、もしもあったとしても絶対あなたには言う訳ないでしょう」
異世界図書館の夜は過ぎていく。