1-1 平凡な男の日常
完全な趣味作であり、面白さは保障しかねます(笑)
空き時間で思いついたネタでプロットを補完していく形になるため、更新は不定期ですが、この五日間は21:27に定期投稿します。
あっ、更新時は二話連続投稿します。本日一話目です。
俺は今、女神様の前にいる。
決して冗談なんかではないし、檻のある病院に入れられるような病気も持っていない。
もっとも、俺の体感時間にしてほんの30分前にこの言葉を同僚や友人に話していたら、間違いなく異常者扱いされただろうが。
俺、立川修也はごく普通の32歳の会社員だ。
生まれたのは日本のごく普通の家庭で、父は家電量販店の社員、母は専業主婦、兄も中堅大学をでて教師になった。俺も学校生活では小、中、高と地元の公立校に通って、中堅どころの県立大学から、東京の小規模な出版社に就職して営業部に配属されるという本当に一般的な生活をたどっているといえるだろう。
しいて自分の特徴を述べるとすれば学生時代、本好きが行き過ぎて中毒となり、かなりの友人を失ったことぐらいだろう…… 別にコミュ障だったとかそういうのではなく、ただ本にはまり込むと何日も家から出ずに、友人との約束をすっぽかしまくっただけだ。それでも数人は友人がいたし、彼女がいたこともあるので、そうさみしい学生生活を送っていたわけではない。とはいえ、就職してから彼女ができないことはそういう生活を続けていることに起因している気もするが……
さて話がそれてしまったが、ともかくごく一般的な会社員だった俺がなぜ、このような非現実的な状況に至ることになったのかというと、きっかけはおそらく半年前から始まったあの仕事だろう。
半年前、ごく小規模なうちの会社で芥川賞作家の小説を出せるということで、社内は大盛り上がりだった。もともとマイナーな絵本作家の本を主に出版しているうちの会社としては歴史的な快挙だった。当然営業部にも大量の仕事が増えた。
「立川主任、これから忙しくなりそうですね」
「ああ、そうだな」
「でも、なんでそんな有名作家がうちなんかで書いてくれることになったんですか」
「コネだってさ。なんでも社長の奥さんのいとこの旦那さんのはとこの息子さんが芥川賞をとった本を出版した会社の社長と仲がいいらしい」
「それ、コネって言うんですか?」
「……さあね」
出版のいきさつはともかく、初めての大きな仕事にしては発売直前まではほとんど問題なく話がすすんだ。
その間、営業部は長い付き合いの小規模書店から新興の大規模なブックセンターまで、とにかくより広いスペースに置いてもらえるよう、必死にあいさつ回りを続け、夜は会社でひたすら宣伝用POPをつくり、説明用の資料をまとめるなどの特別業務に加え、通常の管理業務もあった俺は死ぬほど忙しかった。というか本気で死ぬかと思ったのだが……
まあ、それでもなんとか最後の営業も無事に終わり、いよいよ発売前日となった日の夕方のことだった。
俺の身に悲劇が起こったのは……
「いやあ、やっと終わりましたねえ」
「ああ、やっとな。といってもまだやることはあるけどな。まだ前日だし。」
「もう、雰囲気壊さないでくださいよ、主任」
「悪い、悪い。」
最後に都内の大型書店での営業を終えた俺は同行していた部下と、会社に帰っているところだった。
「とりあえず、いったん会社戻って、今晩営業部で飲みに行くか」
「いえ、今日は久しぶりに娘の顔が見たいですし、直帰します」
「そうか。まあ、2,3日帰れてないしな。分かった、早く帰ってやれ」
「はい。ありがとうございます。じゃあ、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
そう言って、部下を送り出した瞬間後方から叫び声がした。
その声に振り返ると、歩道に乗り上げた大型トラックが自分に向かって突っ込んでくるところだった。
必死でよけようとするも、60キロほどで突っ込んでくるトラックをよけられるわけもなく、思い切り跳ね飛ばされた。
激痛と回転する世界のなかで最後に、俺がいなくなって明日の発売記念セレモニー大丈夫かなあ、となぜか冷静に考えたのを最後に、俺 立川修也の記憶は途切れた。
誤字・脱字は感想欄の方にお願いします。
後、普段は「異世界でも貴女と研究だけを愛する」という作品を上げてますので、そちらもよろしくお願いします。