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0輪
四月。雪が解けてきて、草木が顔を出し、桜の花弁もまだ開かない、始まりの季節。
少女は、晴れ渡る空が見える屋上で、独り、歌っていた。
少女の名は、橋留 和音 という。
中肉中背で、長い黒髪を横に編んだ、良く言えばおしとやかそうな、悪く言えば芋っぽそうな、割とありふれた女の子である。
そんな彼女......和音は、今日から山形県にある【三ヶ瀬高等学校】に通う、高校一年生だ。
和音が今奏でている旋律は、彼女の好きな歌でもあり......夢でもある。
和音が抱いている夢とは、彼女の名前が追々教えてくれるであろう。
「......よしっ。」
彼女がそう意気込んだ直後、時を告げる鐘の音が、彼女の鼓膜を震わせたのであった。
「ふぇ......もう時間!ぼーっとしすぎた!教室行かなくては!」
彼女は、ふと我に返って、屋上から教室に戻ろうと、駆け出した。
これから語るのは、少女たちの、一つの繋がりの物語である。