再会
◇ 再会
ヒースロー空港のターミナルを出るとロンドンは雪景色だった。
「ううっ 寒い」
二十代の頃は平気だったのに最近は寒さが見に染みるようになってきた。
加奈子さんは迎えに来ているはずの従姉の姿を探す。
「居ないわねぇ…遅れるなら連絡があると思うんだけどねぇ」
まぁ場所はわかっているんだからいいかなと地下鉄に向かおうと歩き始めると柱に寄り掛かるように立っている男性に気付く。
「カナ」
「ジャック」
最後に別れてから二人の間には半世紀近い歳月が流れていた。
「ミナコに頼まれたんだ」
ジャックは照れたように笑う。
加奈子さんは泣き笑いのような表情を浮かべた。
「いつ戻って来たの?」
「半年程前かな、故郷が懐かしくなってね、歳かな(笑)」
市内に向かう車内で二人の会話はいつしか途絶えカーラジオから懐かしい曲が流れてくる
突然、ジャックは車を路側に停車すると、
「済まなかった。あの時カナの不安が分かっていながら仕事を優先してしまった。
カナが去って行った後もプライドが邪魔をして追って行くことも出来なかった。
馬鹿な若造だった」
「私も馬鹿だったんですよ。お互いに若かったからねぇ」
「もう一度あの時に戻ってやり直したい」
ジャックは加奈子さんを懇願するように見詰めた。
加奈子さんはただ黙って微笑んだ。
外は雪
だが二人は確かに初めて出会ったあの春の日に戻っていた。