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七夜

話が進まないです。進めたいけど、あれも書きたい、これも書きたい。

難しいですね、文書って。

正座、それは日本では説教をされてる時にとる、スタンダードなフォームである。

修練場を燃やした事で、警備隊長のダーマンさんにガチで怒られている。


「兜太とかいったな、小僧。お前は国の象徴である、この城を燃やしかけたんだ。これは極刑に値する罪だぞ!! 」

「はい、大変申し訳ございません 」


大変申し訳なく思うのだが、長い、長すぎる。

もう一時間ほど修練場に正座させられている。

リリとムーはダーマンさんが到着した時にはいなかった。

俺の事を生贄に捧げ、あの二人は逃げたらしい。

なんという潔さだろう、許さん。

俺が解放されたのはさらに一時間、時計の針が十二時を指す頃だった。

部屋に戻った俺は、ドーナンの件もありクタクタだった。

ベットに入るなり睡魔が意識を狩っていった。






昨日に続いてドアがノックされ、リリから声がかかる。


「起きてください、兜太様。朝ですよ! 」


リリの声で目が覚めた俺は、昨日のお説教の事を思い出いだした。

ちょっと困らせてやろうと思い立ち、ソファーの影に身を隠す。

俺が急にいなくなれば多少は動揺するかもしれないしね。


「兜太様、はいりますよー。あれ?いないんですか?? 」


良し、隠れているのはバレていない様だ。

さぁー、心配するがいい!心配してくれるよね?なんか俺が心配になってきた。

俺の心配をよそに、リリは部屋の中をぐるりと見渡してニヤリとしている。

はぁー、ふー、と呼吸を整えたリリは意を決した様に頷く。

刹那、ベットに向かって華麗に飛び込むリリ。


「はぁー、兜太様の匂いがします。兜太様に包まれている様です 」


トローンとした目で枕に顔を埋めているリリは、贔屓目に見てもただの変態だった。

荒い息をあげてモゾモゾしているリリの頬は紅く染まっている。

少しすると、もう一度顔をあげて周りを確認するリリ。

確認が終わると、左右の手を自分の胸と下半身に導いていく。

不味い、これ以上はいけない!なにか見てはいけない気がする!!

本当は見たいけど、スマホで録画したいけど・・・・。


「おほん!おほん!げほん!いやー、昨日は疲れちゃって。こんな所で寝ちゃったのかー。

あれ?リリ、起こしに来てくれたの?起きたばっかりだったから全然、全く、本当に気がつかなかったよ。いやー本当、マジで 」

「と、兜太様?!いつからそこに?!いえ、そんな事より見ましたか? 」

「なにかな?俺は今、起きたばかりだからなにも、なんにも知らないよ? 」


涙目のジト目で俺を睨むという、無駄に技術力の高い技を披露してくれる。

良いものを見せて貰ったし、昨日の事はチャラだな。

リリトさんも冷静になってきたのか、殺気だってきてるし。


「いやー、お腹減ったなぁ。リリ、すぐに準備するから食堂に行こう! 」

「はぁー、兜太様はもう。わかりました、お待ちしてますね 」


お互い、無かった事にしよう、それが良い。

リリが後ろを向いてくれたのを確認して、急ぎで着替えを済ませた。






朝食後、リリとムーさんと街に繰り出している。

今日は地球では土曜日、学校は休みだ。

さて、なぜムーさんも同行しているか?昨日の火事未遂の件である。

あの後、ムーさんは件の原因を調べてくれていたらしい。

すると、三十五年前に書かれた日誌に、似たような事例が記録してあったとの事。

女王様、リリのお母さんだね、その妹さんが幼かった頃に似た事があった様だ。

俺とは違って、城の三分の一を水浸しにしたらしいが。

その時代に城で働いていた魔導士は考えた。

そうだ、魔力を抑える魔道具を作れば良いじゃない!っと。

そこで、魔導師であり、魔道具にも詳しいムーさんが同行している訳である。


「ムーさんって、魔導師なのに魔道具にも詳しいんですね 」

「魔導師っていうのはぁー、魔法全般の研究がお仕事なのよぉ。私は魔法使うよりぃ、魔道具の開発の方が得意なのぉ 」

「兜太様、ムーは魔道具開発の名家、ロムロム家の出身です。彼女はミドラーシュ王国の魔道具文化を十年は進めたと言われています。魔導士達の頂点、この国に五人しかいない魔導師なんですよ 」


意外だ、喋り方ものんびりしているし、そんなキャリアウーマンには見えなかった。

本人も、リリの紹介を受けて


「そうなのよぉ。私、結構凄いのよぉ!えっへん!!」


とか、言ってるし、おぉー、胸を張ると揺れる揺れる。

この前は地面を這う様に走っていたが、今日は同じ高さに目線がある。

本人も、見栄えが悪いじゃない?っと言っていた。

急ぐ時だけ、蛇の様に這うらしい。


「それで、どこに売ってるんですか?その魔道具 」

「作るのよぉ、魔力を抑制する魔道具なんて需要ないものぉ、売ってないわぁ 」

「あー、成る程。それで街に買い出しなんですね、ムーさん 」


最初は、魔道具屋に寄っていく。

店は二階建てで、一回はショーケースの中に魔道具が並べられている。

ムーさんを先頭に二階へ進むと、木の棚に綺麗な石や、羽根、金属のインゴットなどが所狭しと置いてある。


「この店は、一階には魔道具の完成品。二階には魔道具用の部品が置いてあるわぁ。

私みたいに、魔道具を弄るのが好きな人もいると思うんだけどぉ。取り扱ってるお店って少ないのよねぇ 」


ムーさんは部品を見て嬉しそうにしている。

本当に好きなんだろうな、魔道具が。

俺は部品より完成品に興味があるので、一階にお邪魔している。

それにしても、物凄い量の魔道具だ。

家庭用だろう、冷蔵庫やコンロの様な物、魔力で動くウォシュレットまである。

なんか、地球にある大型電気店の様な店だな。


「兜太様、次の店に行きましょう 」


リリに呼ばれ、次の店を目指す事にする。

面白そうな物が沢山あったし、また来てみたいな。


「次は武器屋さんですよ、兜太様 。気に入ったのがあったら言って下さい。また、攫われでもしたら大変ですし、防犯にもなりますから 」


街にいる男は確かに武器を所持している人が多いな。

リリと、ムーは持っていない様だ、リリに聞いてみると。


「女性が私服で武器を携帯しているのは、見栄えが悪いじゃないですか?でも、持ってますよ。見てみます? 」


と言って、ワンピースの太ももの辺りを押さえている。

きっと、括り付けてあるんだろう。

見たいです!って言ったら本当に見せてくれるのかな?

ムーさんは、メイスを持っているらしい。


「見たいならぁ、見せますよぉ 」


胸の谷間の方にムーさんの手が動く。

凄い、!まさか谷間の中から武器が出てくるのを、この目で見る日が来るとは。

ムーさんの手は、谷間を通り過ぎ、口の方へ向かって行く。

あれ?思ってたのと違う、これじゃない。

ムーさんは指先を口に入れて、フガフガ言っている。


「あ、ムーさん。もう大丈夫です 」


店に入ると、色々な武器が綺麗に並べてある。

さっきの店と比べると、かなり小さい店だろう。


「いらっしゃい、兄ちゃん。今日は何をお探しで?」


店の亭主だろうか?小柄な親父が挨拶してくる。

ドワーフという奴だろうか?体はガッシリしていて、立派な髭を三つ編みにしている。


「あー、えーと。」

「私は大丈夫なのでぇ。兜太さんは武器を見てて良いですよぉ 」


お言葉に甘える事にして、亭主に武器が欲しいと伝えた。

武器なんて持った事もないので、殆どおまかせだ。

まず、持ってきてくれたのはメイス、初心者が扱いやすいそうだ。

材質は鉄、棍棒の先に一回り大きな鉄球が付いている。

ムーさんが持ってる物と同じ種類だね。


「この、メイスは頑丈だぜ。シンプルだから壊れにくいし、どこで攻撃を受けても大丈夫だからな。初心者にはオススメしてんだよ 」


ふむ、軽くは無いけど、振り回せない事は無いな。

でも、折角異世界に来たのなら、剣を持ってみたい!憧れるよね、鉄塊の様な大剣!

剣も見せて欲しいと頼み、亭主が取りに行ってくれる。


「そういえば、さっきのメイスに50,000Dって書いてあったけど。これって日本円だといくらなの? 」

「円と同じ価値ですよ。50,000Dは、50,000円ですね。読み方はドラルです 」


成る程、メイス一個で50,000Dドラル、高いのか、安いのか全然わからん。

武器だと考えると、安い気もするし、鉄の塊だと思うと高い気がする。

考えているうちに、亭主が何本か剣を持って来てくれた。

まずは、希望していた大剣だ。


「兄ちゃんには重いかも知れねーぞ 」


そう言って、ポンっと渡してくれた大剣は、手に持った瞬間地面にめり込んだ。

重っ!!なにこれ、一秒も持ってられない。


「大丈夫ですか?!兜太様!」


リリが急いで退かしてくれる。

危なく、足の上に落ちる所だった。

リリが大剣を持ち上げ、亭主に返してくれた。

俺って、細身の女の子より、腕力無かったのかぁ。

なんか、凄く落ちこむな。


「なんかごめんね、リリ。こんなに腕力無いと思わなくて 」

「あっ!いえ、私だって無理ですよ!肉体強化の魔法を使わないと持ち上がりませんから! 」


そうか、肉体強化か!さすが異世界、便利なのがあるじゃないか。

でも、初級魔法さえ使えない俺にはハードルが高い。

とりあえずは、素のままでも使える物を選ばないと。


「それならこれがオススメだな、材質はロック鳥の骨だ。軽いが中々、頑丈だぜ。魔力を通すと風の刃が出るからな、切れ味はお墨付きだ! 」


やばい、カッコ良い!!風の刃とか燃えるじゃないですか?!

長さと重さは丁度、竹刀ぐらいだ。

これぐらいなら、使える、と思う。

だが、魔道具は使えば暴走するし。

ロック鳥の剣と睨めっこしてると、ムーさんが


「気に入ったんなら、それが良いんじゃないかなぁ?魔力は私がなんとかしますよぉ 」

「兜太様、気に入られたのでしたらどうぞ。最初ですから、型からでも良いと思いますよ?」


おー、ムーさん!心強い!リリの許可も貰えた。

値段を見ると、2,000,000D・・・・二百?!

高い、高い、高い!!


「大丈夫ですよ、兜太さま。私のお小遣いで払える範囲ですから 」


そう言ってさっさと、会計へ渡してしまうリリ。

王女様ってすげー、セレブってこういう人をいうんだな!


「マール、お支払いをお願いします 」


リリがそう言うと、どこからともなくマールが影に身を包み現れた。

ビックリした!いたのね、マールさん。

そりゃそうだよね、王女様だもの。


「亭主、お会計を頼む。うむ、領収書を貰えるか 」


何か、カードの様な物を亭主に渡している。

影を纏い、領収書をしっかり懐にいれるマールは少し可愛いと思った。







店を出ると、ムーは魔力抑制の魔道具を作りに先に帰っていた。

マールも警護に戻るっと言う。

去り際にマールが俺の耳元で


「その剣は、リリト様が何年もかけて貯めた金で買った物だ。税金を個人に与える訳にはいかないからな。光栄に思えよ 」


舌打ちを残してマールは影に消えていった。

そうだったのか、本当にリリは俺の事を大切にしてくれる。

男として、必ず恩返しはしないといけないな。

俺はぎゅっと剣の柄を握って


「ありがとう、リリ。この剣、一生大切にするからな! 」

「はい、兜太さま 」


リリは、今日一番の笑顔を俺に返してくれた。


























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