三夜
私の文章を読んでくれてる人がいて感動してます。
ありがとうございます!!
どうも、鬼城兜太です。
窓の外はまだ薄暗いですが、鳥がチュンチュン鳴いています。
これが朝チュンなんですかね?なんか泣けてきます。
昨日の夜、この国の王女様、リリト=ミドラーシュさんから、お父様の事を聞きました。
とてもリリの事を可愛がっていて、国民からは狂気の王、殺戮の神に愛された者、なんて呼ばれて愛されているそうです。
良いお父様ですね、怖くて一睡も出来ませんでした。
スマホで時間を確認すると5時半、そろそろ完全に陽が昇ってくる頃だろう。
執事のメープさんが起こしてくれるまで、少しは寝よう。
ベットでモゾモゾしているとドアがノックされた。
「兜太様、起きていらっしゃいますか?朝食の用意が出来ています 」
リリが起こしに来てくれたようだ。
まだ、6時にもなっていない。
王族って早起きなんだなぁ。
「起きてるよ、あの、良ければどうぞ」
ドアの前で待たせるのも悪い、部屋の中へ入って貰う。
「おはようございます、兜太様。こちらに洗濯した制服がありますから着替えて下さい 」
「ありがとう、穴まで直してくれたんだね。助かるよ 」
「いえ、こちらが破いた物ですから当然です!マールにしっかり直させました 」
え、マールさんて黒影さんだよね?全然想像できないんだけど。
考えている事が顔に出ていたらしい、リリが付け加える。
「マールは器用なんですよ!子供の頃はお人形さん、なんかも作ってくれました!! 」
「マジで?!」
人は見かけによらないって言うけど本当だなぁ、感心してしまうよ。
とりあえず、着替えなければ。
マールさんのインパクトのせいで、リリの前だというのに服を脱ぎ始めてしまった。
やばい!悲鳴とかあげられたら、マールさんに串刺しにされる!!
「これが兜太様の・・・・。凄い、逞しくて・・・・」
頬を紅く染め、少し息も荒い。
視線は俺の身体を食い入る様に固定されている。
誤解しないでね、パンツは履いてるよ?
無意識なのか、リリの手が伸びてくる。
「えーっと、リリ? 」
「はっ!私としたことが、も、申し訳ありません!! 」
真っ赤な顔で地面すれすれにお辞儀をするリリ。
今さ、すげー勿体無い事したよね、男子高校生としては切腹するぐらいのミスだと思う。
美少女のスベスベな指で胸板を触られる。
良い、凄く・・・・良い!!
「朝食は、昨日の食堂に準備してあります!外にメープがいますから、準備が終わったら声を掛けて下さい!! 」
あ、逃げられた。
準備と言っても着替えて、顔を洗うぐらいだ。
リリが逃げる様に出て行ってから、二十分後には食堂に着いていた。
「おはようございます、兜太様 」
リリが声を掛けてくる。
先程のことは無かった事でいくらしい。
「今日は、お母さん、じゃないや、女王様は来ないの? 」
「母は、いつも自室で召し上がりますね、それより兜太様。時間があまりありません、お早めに食事を済まして頂けますか? 」
メニューは、サラダとサンドイッチ、燻製を煮込んだスープの様だ。
これならさして、時間はかからないと思う。
「全然大丈夫だけど、もう街を案内してくれるの? 」
俺は街を案内する為に、急かされている、とは本当は思っていない。
リリは凄く見覚えのある服を着ている、朝からずっと。
濃い赤を基調とした、可愛いと評判の、我が高校の制服だ。
ツッコミを入れたら確定してしまそうな、そんな気がしていて言えなかった。
「なにを言っています、今週も後1日だというのに遅刻する訳にはいきません!」
「うん、そっだね 」
「兜太様、やはり高校ぐらいはちゃんと卒業しないと。さぁ、急いで下さい!!」
「うん、そっだね 」
やっぱりか、昨日は中学校の制服着てたくせに。
これは、絶対転校してくる気だな。
確かにリリは可愛い、皆に自慢出来る!!いや、自慢したい!!だが、さすがに魔界の王女様が学校に溶け込めるとは考えにくい。
それに、手続きはどうする?ここは、手続きを理由に諦めて貰うのが一番良いだろう。
「リリは知らないと思うけど、学校に通うには色々、手続きがあるんだ。だから、制服は凄く似合ってるんだけど・・ちょっと無理じゃないかなぁーと。それに女王様の許可も、ね? 」
「ご心配無く!!マールを先行させています。私が着く頃には全て、整っているかと思います 。母の許可は一週間前からとっております 」
凄いドヤ顔のリリ。
畜生!朝から見ないと思ったら、地球に行ってたのか!!
それに、一週間前って事は最初から転校してくる予定だったな!
意外と策士、恐ろしい子!!
地球とのゲートを潜り、リリと初めて出逢った工事現場へ。
実は、工事が進んでいなかったのはゲートを繋げる為だったとか。
普段は人払の結界を魔道具で維持しているようだ。
二人で並んで通学路を歩く。
さっきまで、魔界の城にいたのが嘘のようだ。
二十分程で学校に到着する。
「では、私は転校生としてクラスに参りますので。ここで失礼しますね 」
「あ、うん。後で 」
クラスに着き、自分の席に座る。
一番後ろの窓際、特等席だ。
「鬼城!知ってるか?! 」
こいつは、龍太。
池上 龍太、幼稚園から一緒の悪友だ。
席は俺の一個前、女好きで女子からも、かなりモテる。
週に一回は告白されてんじゃないかな?羨ましい。
でも、特定の女の子とは付き合わない。
なんか違うんだよなぁー、とは本人談だ。
「転校生だ!兜太、スゲー可愛い子が来るぞ!!職員室で見たんだ! 」
「あー、知ってる。かなぁ? 」
やっぱりリリの事か。
曖昧な返事になってしまったが、うん、俺の嫁!とも言いにくいしなぁ。
そういえば、マールさんが先行して手続きしてるって言ってたけど、どうやって?
まさか洗脳とかしてないだろうな、冷たい物が背中を流れる。
チャイムが鳴り、少しすると先生が教室に入ってくる。
「おは、おは、皆さん、オハヨウゴザイマース 」
やりやがった!先生、白目剥いてるじゃねーか!!
普段は物静かな先生がテンション高い。
マールの奴、碌なことしねぇな!
クラスの中から、先生を心配する声があがっている。
「先生は、すこぶる元気ですよー!!今日はね、皆さん。転校生が来てくれました!!拍手!! 」
完全に、重度のお薬患者なテンションに生徒が困惑している。
そんな中、リリが恥ずかしそうに入ってくる。
「あの、海外から転校してきました。リリ=ミドラーシュです。よ、宜しくお願いします 」
生徒、特に男子生徒から歓声が上がる。
先生の事は吹き飛んだらしい。
哀れ、先生。
その後は大変だった、リリは俺の隣の席に着いた。
昨日まで違う生徒が座っていたはずだが、これもマールの仕業だろう。
リリは昼休みまで質問攻めだった、特に男子から。
俺も、男子に話しかけられているリリが気になり、聞き耳を立てていたのは内緒だ。
嫉妬とかしてないし。
「兜太、俺、決めたよ。リリトちゃんと仲良くなる! 」
「え?どうした、突然??龍太??あ、おい!」
そんな事を言って、龍太はリリの席へ向かう。
龍太にリリを取られると思うと少し興奮する。
いや、そんな高度な性癖は無い、はずだ。
「リリトちゃん、昼休み、一緒に昼飯食べない??」
すげー、さわやかスマイルな龍太。
それに対するリリは
「ありがとうございます。でも、お昼ご飯は兜太様と。お弁当も作って来ましたし 」
「えっ?兜太、兜太様?」
それでは、と龍太に言い残し、俺の手を引いて出て行くリリ。
これは後の事が怖いぞ。
龍太だけじゃない、他の男子も聞いていたしね。
でも、ちょっと優越感がある。
「リリ、弁当持ってきてくれたの? 」
「はい、あまり料理はしないので自信は無いのですが・・・・ 」
「そんな事ないよ!ありがとう。中庭にベンチがあるからそこで食べようか? 」
中庭にはカップル達が何組かいる。
まさか俺が、このカップル達の輪にはいる日がくるとは。
涙腺が緩んできた。
「兜太様、これ、お弁当です。あの、どうぞ 」
「ありがとう、頂きます! 」
弁当の蓋を開けてみる、見た目も多少、形が崩れているが美味しそうだ。
唐揚げから口に運ぶ。
「兜太様、いかがですか? 」
「美味しい!美味しいよリリ!!」
あっ、という間に食べ終えてしまった。
指に絆創膏をしてる所をみると、頑張ってくれた事がわかる。
それに、女の子が作ってくれた弁当なんて、母親と、妹以外食べた事ないし。
この、心を満たす満足感はなんだろう。
「喜んで貰えて良かったです!隠し味とか、早くから準備した甲斐がありました!! 」
「いやー、美味しかったよ、本当!隠し味ってなに入れたの?スパイス系かなぁ?? 」
「えーっと、唐揚げには牛脂を巻いてから揚げたり。あとは、スパイスも少し変えましたね。
後は・・・・私の血液を少々 」
飲んでたお茶を吹き出してしまった。
血液っていった?指の絆創膏ってその時の傷??
さすがリリトさん、一筋縄じゃいかないな!!
その後は、龍太の詰問から逃げたり、体操着に着替えようと思ったらロッカーにマールが入っていたりと色々あった。
リリとの事は、今度、龍太には説明しようと思うけど、信じてくれるかなぁ?
先生は、病院に行ったみたい。
さて、この後は魔界へ戻って社会科見学だ!
もうひと頑張りしましょうか。
誤字、脱字、その他。ご指摘よろしくお願いします。




