十六夜
今回は短めです。次回は通常通り、三千文字くらいを考えています。
通い慣れた通学路なのに、いつもとは違う道に感じる。
きっと、この三日の濃ゆい異世界生活のせいだろう。
それに、俺の横をニコニコしながら歩いてる少女、リリ。
彼女の存在も大きいと思う。
「身体は痛みませんか?兜太様 」
「大丈夫だよ。筋肉痛ぐらいの痛みはあるけど問題ないから 」
「すいません、お父様が無理をさせるから 」
「本当に大丈夫だからさ、気にしないで 」
本当は身体が軋むぐらいには痛いんだけどね、心配させたく無いしね。
二人で教室の扉を潜ると、悪友の龍太が駆け寄ってくる。
「おはよう!リリトちゃん、今日も素敵だね!! 」
「おはようございます、池上さん。お世辞でも嬉しいですよ 」
全く、こいつは・・・・。
朝から騒がしい奴だな、いつもの事だけど。
「おーい、龍太、俺には挨拶がないのか?」
「うるせぇ、お前ばっかりリリトちゃんと仲良くしやがって!羨ましいぞ、兜太!」
「あー、はいはい。悪かったですねー 」
自分の席に着いた所で、龍太の追撃を受けた。
「本当さ、いやに仲良くしてるみたいだけど。まさかリリトちゃんと付き合ってるとか言うなよ? 」
「あー、実はね。そうなんだよ、つい最近だけどね 」
龍太とは付き合いが長いし、此奴にだけは言っておこうと決めていた。
「えっ!マジで?!リリトちゃん、本当に兜太と付き合ってるの? 」
「はい!まだ、父と母には認められてませんが・・・・兜太様には私と結婚して頂くつもりです! 」
「兜太が、兜太が大人になってしまった。まさか先を越されるなんて 」
自ら言った結婚と言う言葉に、顔を赤くするリリ、白く燃え尽きる龍太。
龍太が騒ぐせいで、クラス中の注目を集めてしまった。
もう遅い気もするけど、試しの木の実でも握りながら無関係を貫こうと思う。
龍太の質問に適当に答えながら、体操服に着替える。
今日は体力測定があるからだ、俺は特に運動神経がいい方でも無いので、毎回適当に流しているが龍太は違う。
リリトに少しでも良いところを見せようと、張り切っている様だ。
もう諦めてくれ龍太、心が痛い。
「兜太、今日の俺は一味違うぜ!愛の炎に燃えているからな!! 」
「そ、そうか。火傷しない様にきょうつけてくれ 」
順調に測定をこなし、最後の種目、遠投の順番待ちをしている。
女子は早く終わったらしく、男子の見学にきた様だ。
現在、ソフトボールを握っているのは龍太。
当然リリも見学に来ている訳で、龍太はめちゃくちゃ張り切っている。
「リリトちゃん!俺、頑張るからね!! 」
「はい、頑張って下さい!池上さん 」
「よっしゃ!燃えてきたー!! 」
砲丸投げの選手の様に叫び、ソフトボールを全力で投擲する龍太、正直、暑苦しいぞ。
記録は七十メートルと上位に食い込んだらしい。
「見ててくれた?リリトちゃん!頑張ったよ、俺! 」
「カッコ良かったですよ、池上さん 」
むっ?確かにいい記録だが、リリに褒められる龍太を見ると胸がムカムカする。
ジェラシーだ、俺は嫉妬している。
俺の手にソフトボールが渡される、見てろ、龍太。
俺は腕輪にそっと触れ、石を一個解放する。
卑怯だと?勝てば良いんだよ、勝てば!
全力で振りかぶり、投擲する。
ボールは校庭の柵を越えて、遥か遠くに消えていった、軽く二百メートルは飛んでいったと思う。
やり過ぎた、こんなの思ってたのと違う。
リリだけは声援を送ってくれるが、周りの生徒はポカンとしている。
なにか、なにか言い訳しないと不味い!
「ひ、日頃の訓練の賜物だな 」
空気は尚更、おかしな事になった。
リリの事に加えて、体力測定の事でも質問攻めに合う、陸上部と野球の勧誘が酷かった。
リリにも女子陸上部から勧誘が来ていた。
「君なら全国、いや!世界を狙える! 」
と、熱心に誘われていたが、リリ、君は一体何をしたんだ。
「疲れたね、リリ。なんかぐったりだよ 」
「そうですね、でも楽しいですよ!皆さんも良くしてくれますし。その、兜太様もいますし 」
あぁ、もう!可愛いな、この!!
照れ隠しに、リリの頭をグチャグチャにしてやった。
しばらく、リリの所に厄介になる為、帰りに自宅に寄ってから魔界へ帰る予定だ。
着替えとか持ってかないと不便でしょうがないからね。
誰も来る予定は無いが、空気の入れ替えぐらいはして行くつもりだ。
「ごめんね、リリ。付き合って貰って 」
「いえ、私も兜太様の育った家を見てみたかったんです 」
いやいや、普通の一軒家ですけどね。
リリの家と比べたら犬小屋みたいなものですから。
玄関の前に着き、鍵を取り出す。
三日しかたって無いのに凄く、久しぶりな気がする。
「ただいまぁーって、誰もいないんだけどね 」
お決まりのセリフを言いながらドアを開ける。
「お兄ちゃん、家にも帰らず女連れで帰ってくるなんて・・・・いい度胸だね 」
「椿!なんでお前が?! 」
お前は学校の寮にいるはずだ、何故お前がいる?
久しぶり帰ってきたら、いるはずの無い妹がいた。
まだまだ、トラブルは続くみたいだ、早くベットで横になりたい。
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