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十一夜

「魔物狩りに行きたいんですよね?駄目です!絶対に許しません!! 」



先程、リリに言われた事が頭の中を過る。

きっとリリは俺の事を心配して言ってくれたんだろう。

今から少し鍛錬したぐらいでリリを守れるとか、そんな事は考えてないけど、せめて自分の事を守るぐらいの力がないと駄目だと思う。

だって、男だから。

俺が唯一、親父から教わった事は女を泣かせるな、だ。

リリに迷惑をかけないぐらいの強さは無きゃいけないと思うんだ。


「なにを難しいぃ、顔をしてるんですかぁ?兜太さんには似合わない顔ですよぉ? 」


失礼な事を言ってくれるな、本気ではないんだろう、顔がニマニマしている。

魔法を練習したいからレリーフを貸してくれと言ったら、何故か企みがバレてムーさんもついてきた。

きっと、ムーさんなりに心配してくれてるんだろう。

ムーさんに頼んであった物が見当たらないが、大丈夫だろうか?確認してみる。


「ムーさん、鞄ぶら下げてるだけですけど。レリーフってその中に入ってるんですか? 」

「ちゃんと持ってきてますよぉ、心配症ですねぇ 」


そう言って、鞄の中から鞄を出す、明らかに新しく出てきた方の鞄の方がデカイのはどういう事だろう?


「じゃじゃーん、魔法の鞄でーすぅ。外に出るときは必需品ですよぉ、兜太さん。私のお古ですけど、良かったら使って下さいねぇ 」

「おー!不思議鞄!!一気に異世界冒険ぽくなってきたな 、ありがとうございます!ムーさん 」

「後、前から思ってたんですけどぉ。リリト王女は呼び捨てなんですからぁ、ムーって呼んで下さいぃ。なんかムズムズするんですぅ 」


そういう物なのか?とりあえずはムーさん、ムーの意見を尊重する事にする。


「年上を呼び捨てにするのには少し抵抗があるんだけど、ムーがそう言うなら。」

「あのー、私、まだ十歳なんですけどぉ。私の種族は大人になるまでが早いんですぅ 」


マジで?!だって、十歳でその凶悪なメロンは駄目なんじゃないか?顔だって大人ぽいし、異世界恐るべし。

容姿と年齢のギャップに感心しながら、肝心の鞄を確認していく。

この鞄には空間を魔道具で固定してあるらしい、珍しい物ではなく、普通に売っているとの事だ。

魔力を鞄に付いてる魔石に補充しておけば、永久的に空間は維持されるらしい。

鞄に入る容量は約一畳、小さな物置、一個分ぐらいだな、鞄によって容量は違うとの事だ。


「さぁ、レリーフは中に入れてありますからぁ。どうぞ、ガバッと手を入れちゃって下さいねぇ 」


少し緊張しながら鞄に手を入れると生暖かい空気を肌に感じる、指先に小さな物が当たる感じがあったので摘み上げてみる。

すげー!鞄から引っ張り上げるにつれて大きくなっていく!!完全に取り出した時には見覚えがあるレリーフになっていた。

あれだな、青い狸の不思議ポケットその物だ。

中に入っていたレリーフは六枚、初級攻撃魔法が三枚、初級生活魔法が三枚だ。

属性は、火、水、風と基本の物らしい。

レリーフは基本的に初級の物しか作られていない、魔法初心者しか使わないからだ。


「ムー、ありがとう。さて、時間も限られてるし。早速、狩りって奴をしてみましょうかね! 」

「そうですねぇ、でも、兜太さん。知ってるんですか?何処に魔物がいるか?それに、夜の魔物は活発なんですよ、大丈夫なんですかぁ? 」

「悪いんだけど、案内して貰えるかな?ムー 」

「もう、しょうがないですねぇ。一時間ぐらい行った所に、小さな森がありますぅ。初めての狩は、そこに行く事が多いんですよぉ〜 」


そう言って、暗闇の中をムーに案内して貰う、ムーの尾っぽの先には照明代わりの火の魔法が灯っている。

森の入り口まで来ると、何か得体の知れない怖さがあるな、枝葉が擦れる音に混じって、魔物の鳴き声が聞こえてくる。

ごっくん、と喉がなる。

やっぱり、いざとなると怖いもんだな、ここまで来て帰る気は全く無いけど。


「さてぇ、まずは野ネズミでも狩ってみましょうかぁ?初心者にオススメですぅ。今、探しますねぇ 」


ムーは薄く口を開けて舌の先を出している、目を閉じ集中している様だ。

十秒程で、俺の手を握り案内を再開してくれる。


「今のも魔法なのか?魔物の居場所がわかったみたいだけど 」

「いえ、今のは匂いを舌で探っていたんですぅ、私の一族はみんな出来る事ですよぉ 」


蛇は舌で匂いを立体的に感じる事が出来ると何かで読んだ事がある。

蛇の下半身を持つ、ムーも同じ事が出来るのかもしれない。

そんな事を考えていると、ムーが口に指先を当てるジェスチャーをする。


「わかりますかぁ?兜太さん。ここから十メートル先に、ネズミがいますよぉ? 」


目を凝らして良く見てみるが、暗くて良く見えない。しばらくして目が慣れてくるとボンヤリ全体が見えてきた。

野ネズミ、デカくね?軽く、人間の子供くらいの大きさがある。


「大丈夫ですよぉ、噛まれても腕の一本ぐらいで済みますからぁ。さぁ、レリーフを出して下さい 」


腕が無くなるのは大丈夫じゃ無いと思うんだが・・・・ここまで来たんだ、やってやる!


「良いですかぁ?兜太さん。まずは腕輪の石を一個解除して下さい。一個だけでも兜太さんの魔力なら充分ですぅ。火だと森が燃えてしまう恐れがあるのでぇ、風のレリーフを使いましょうぅ。目線は獲物から逸らさないで下さいねぇ 」


ムーさんの指示通り、風の攻撃用レリーフを鞄から出す、腕輪を確認して石が一個だけ青色に変わっている事を確認する。

念のため、剣を抜いて地面に刺しておく。

襲われた時に、すぐ対処出来る様にだ。

レリーフを左手で持ち、右手を乗せる、獲物からも目を離してはいない。

レリーフから微風を掌に感じると同時に、目の前にバスケットボールぐらいの風の塊が現れる。

ダーマンさんが見せてくれた物より何倍も大きいそれは、少し浮かび上がった後に弾けた。

瞬間、激しい突風が周りを吹き荒れ、俺も目を開けてはいられなかった。

突風が収まり目を開けると、目の前にあった木は吹き飛び、野ネズミがいた場所には抉った様な跡が地面に残っていた。


「うおぉ!これ、俺がやったの?!攻撃魔法って全然威力が違うんだな!やっぱりすげーな!魔法って! 」

「一割の魔力でこの威力ですかぁ、予想はしてましたけどぉ、とんでもないですねぇ。兜太さん、攻撃用のレリーフを使う時は本当に注意して下さいねぇ 」

「そんなに凄かったの?今の。俺の魔力が多いのはわかってるんだけど、一割って事は1,000Pだよね?ムーとかリリにも出来るんじゃないの? 」


俺の魔力は10,000P、リリの魔力は3,000Pだった。

同じく、1,000Pの魔力を使いレリーフを使えば同じ事が出来ると思うんだけど。


「それは無理ですぅ。初級攻撃魔法は使用者の魔力を一割、中級攻撃魔法は二割と、使用者の総魔力を基準にして規模が決まるんですぅ。だから、初級魔法でこの威力の魔法を使う事は無理なんですぅ。例外はありますけどねぇ 」


リリが初級攻撃魔法を使うと、300P使用した魔法になるって事か。

魔力を抑制する腕輪を使用しても、俺の総魔力は変わらない。

ただし例外はあるそうだ、それがレリーフを使った魔法。

俺の様に大きな魔力を持つ奴が、練習用のレリーフに大量に魔力を使用すると暴走状態になり、レリーフが壊れたり、この前みたいに火事になったりする事もあるそうだ。


「まぁ、そんな事が出来ちゃう悪い子は兜太さんぐらいですけどねぇ。魔力をコントロール出来る様になるまでは、腕輪を絶対に外しちゃ駄目ですよぉ?約束ですぅ 」

「うん、そうだね、約束するよ。ありがとうムー 」


でも、修練場を燃やす前に教えて欲しかったな。

狩った野ネズミを確認しに行くと、魔法が当たった場所から少し先で息絶えていた。

吹き飛ばされたんだろう、合掌してから尻尾を切り取り鞄に入れる。

これをギルドに持って行くと換金してくれるらしい。

お金が貯まったら、リリに何かお返しをしようと思う。






その後もムーに獲物を探して貰い、狩りをした。

野ネズミが三匹に小鬼と呼ばれる、人型の魔物を二匹狩った。

魔物と魔族の違いを聞くと、意志の疎通が出来るか出来ないかで判断している様だった。

結構アバウトな判断基準で驚いた。

蛇が出た時には思わず剣で叩いてしまったけど、ムーは気にしている様子は無かった。

魔物狩りにも少し慣れてきた、不意に尿意が襲ってきたのでムーに


「お花摘みに行って参ります 」


と言うと


「はーい、いっトイレぇー」


と陽気に返してきた、異世界でもそのギャグは共通なのだろうか?

木陰に隠れて、用を足す。

暗い森の中で月明かりだけが頼りだけど、日本では出来ない体験になんだか興奮している。


「ふー、夜になるとまだ冷えるなぁ 」


そんな独り言を言って寂しさを紛らわせていると、前方から獣の鳴き声がする。

なにか嫌な予感がする、急いで戻ろうと思ったら声の主と目があった。

やっちまった、いくら暗いからって木と魔物を間違えるなんて。

木だと思っていた物は魔物の後ろ脚だった。

嘘だと思うだろ?本当なんだからしょうがないじゃないか!魔物はかなり、お怒りのご様子だ。

やばい、逃げろ!ムーの方へ全力で駆けていく。

ムーが匂いを舌で感じるとか言うから、遠くに来すぎた。

少し開けた所で、追っ手を確認するとダンプカーの様な猪だった。

やばい、やばい、やばい!なにが殺される様な魔物はいないだよ!

こんなの、前足で突かれただけで死ぬ自信があるわ!

だが、このままムーの所に戻っても死人が増えるだけな気がする。

殺るしかない!ここで狩ってやる!!

俺が覚悟を決めて後ろを振り向くと、猪も止まり、鼻息荒く俺を睨んでいる。

選んでる余裕は無い、鞄から適当にレリーフを取り出す。


「魔力だけはあるんだ、俺なら殺れる! 」


口に出して自分を勇気づける。

視界の端に腕輪を捕らえて、石が一個青色になっている事を確認する。

レリーフに魔力を通す、相手を見据える事は忘れていない。

レリーフから勢いよく、一メートル台の火の玉が飛んでいくと、迷う事なく猪に着弾する。


「どうだ?殺ったか?! 」


土煙を月明かりが照らす、やっぱりだ。

多少、煙が上がっているが猪は先程と変わりがない。


「殺ったか?は失敗フラグですぅ、兜太さん。」


そう言いながら俺の横にはムーが並んでいた。

そりゃ、こんだけ音を立てれば嫌でも気づくだろう。

でも、来て欲しくは無かった。

俺がリリの言うことを聞かずに勝手に来たのに。

それに付き合ってくれたムーには迷惑をかけたく無かった。



「兜太さん、私は魔道具の研究が専門ですけどぉ。これでも、魔導士の中の魔導師、五人に選ばれてるんですぅ。安心して下さい、私でも勝てますぅ 」


気の抜ける口調だけど、勝てる、その言葉はしっかり耳に届いた。

ムーが自分の口に指先をいれると、メイスが口から引っ張り出される。

本当に、口の中に仕舞ってあったんだな・・・・。


「さてぇ、兜太さん。魔法のお勉強の時間ですぅ、今から合成魔法を見せますから。良く見ておいて下さいねぇ 」


そう言ってムーがメイスを猪に向ける。

メイスの握り手の部分に魔石が組み込まれているのだろう。

赤く、輝いている。

危険を感知して、猪が地面を蹴り突進してくる。

ダンプカーサイズの猪だ、その迫力は死を覚悟をさせる。


「当たって下さい!雷風!! 」


猪とムーの間に雷を纏った、竜巻が現れる。

勢いを殺せず、猪は竜巻に飲まれた。

ただ、風が舞う音と電気が帯電する音のみが場を支配している。

しばらくして魔法が消えると、息絶えた猪が残っているだけだった。

小さい森だが滅多に見る事が無い、森の主と呼ばれる大猪。

それが、ムーが倒した魔物の正体だった。


「どうですかぁ?今のが、雷と風の合成上級魔法ですよぉ!私のオリジナルです!! 」


メロンをボインっと強調して、ムーが手を腰に当て胸を張っている。

どうだ?凄いだろう??ふふーんっといた感じだろうか?

なんか、十歳ぽいと初めて思った事は内緒だ。


「同時に二つ、魔法を使用する事によって威力が倍増するんですぅ!一族の秘伝ですぅ 」

「驚いたよ、凄い威力だった。どうやったら二つも魔法を使えるの? 」


使えるとは思えないが、気になったから聞いてみた、他意は無い。


「普通は同時に魔法を使う事は出来ません。私は二枚舌なので! 」


そう言って、先が割れた舌をペロっとムーは出した。

成る程ねっと、ムーに笑いかける事で返事を返した。






空も明るくなり始め、リリに見つかる前に城に戻る事にした。

城の城門でムーとは別れ、急いで部屋に戻る。

とりあえず、シャワーを浴びてスッキリしたい。

猪の所為で嫌な汗も掻いたしね。


静かに部屋のドアを開け、そーっと自室に戻る。

そこには仁王立ちのリリト様が青筋を浮かべて佇んでおられた。








誤字、脱字、その他。ご指摘お願いします。

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