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十夜

「レリーフ無しで魔法を使ってみましょう! 」


リリからの提案で初級魔法を習う事になった訳だが、教えを請う人を間違えた様だ。


「兜太様、良いですか?レリーフ無しで魔法を発現するには魔力に色をつける感じでやると上手くいきます! 」

「色をつけるって言うと? 」

「はい、例えば風の魔法を使うにはですね。こう、ビューっと風色の魔力を集めて、グワー!っとする感じです! 」


はい、おわかり頂けたでしょうか?簡単に言うと、リリは魔法を頭で覚えていない、感覚で覚えていた、そういう事だ。

それでも諦めないリリト先生は手取り足取り、優しく教えてくれる。

文字通り、手取り足取り、だ。

リリが正面から抱きつく様に俺の背中に手を回し、腰の辺りに優しく自分の魔力を流してくれる。

自分の魔力を指針に魔素の集め方を俺に叩き込むつもりらしいが、それどころじゃ無い!

当たるんだよ、柔らかい物が・・・・正直に告白しよう。

魔法の事なんて今の俺には頭の片隅にも無い!女の子の良い匂いが鼻をくすぐり、柔らかい感触に包まれる。

俺が完全にトリップする寸前、城から野太い声の持ち主が怒鳴りこんできた。


「小僧!王女様に何をしている?! 」


声の主はダーマンさん、四本腕の赤鬼の様な見た目で城の警備隊長だ。

昨日の説教のお陰で俺はダーマンさんが苦手だ、二本の腕で吊るし上げられ、残りの二本で斧を向けられるといた地球では味わえない状態に俺は陥っている。

た、助けてリリト先生、息が、息が。


「ダーマン、誤解です。おやめなさい!兜太様が死んでしまいます!! 」


あぶねぇ、完全にキマってた。

危なく違う場所にトリップするところだった。

リリがダーマンさんに事情を説明し、その場は収まった。


「成る程。小僧、魔法を使いたいと言うか。昨日の今日でいい度胸だ 」

「ダーマンさん、今回はムーさんに協力して貰って。もう暴発は大丈夫ですから!」


魔力を抑制出来る腕輪を作った事、放火未遂の原因になったレリーフに再チャレンジしてなんとか使えた事を伝えて安全性をアピールしてみた。

リリも一緒に頼んでくれる。

ダーマンさんもリリには弱いのか渋々、練習する許可をくれた。


「小僧、いくら魔力があっても魔法は発現しない。自らの魔力を呼び水にし、空気中の魔素を集めて形づくる。イメージが大切だが、こちらの生まれでないお前には難しいだろう。魔素を自分の好きな現象に変化させるには慣れと経験が必要だ。魔道具はイメージの部分を補ってくれる物、魔法とは別物と思った方がいい 」


そう言って、ダーマンさんが自分の掌に霞を集めた、これが魔素というものだろう。


「これが魔素を集めただけの状態だ。ここに風を起こすイメージで魔力を混ぜる 、これが初級の風魔法だ 」


掌の魔素が渦を巻くように変化していき、ドライヤー程の風を持ち始める。

ダーマンさんの手から離れた風魔法は最後に、一際大きく風を起こして消えた。


「いいか小僧、魔法を使える様になるには実戦が一番手っ取り早い。街の外の魔物をレリーフを使って狩ってこい。殺される様な魔物はいないが、怪我ぐらいはするだろう。怪我をしたくなければ必死にやる事だな、必死になれば自ずと魔力のコントロール、イメージも出来る様になろう 」


それにな、っとダーマンさん


「王女様から頂いた魔剣も使わなければ、錆びてしまうぞ。婿としてこの城にきたのなら王女様を守れる力が無きゃいかん。鍛錬しろ小僧 」


ガハハっと笑いながらダーマンさんは去って行った。

以外と面倒見が良いな、ダーマンさんが少し格好良く見えた。


「兜太様、ダーマンが言った事は気にしないで下さい。確かに兵士達は訓練で魔物を狩りに行ったりしますし、私も鍛錬に何度か狩りには行っています。ですが、兜太様に何かあっては困ります。どうか危ない事は辞めて下さい。それに、私、強いんです!守られなくても大丈夫です、って可愛く無いですよね?こんな事言ってると 」


そう言って微笑んでるリリは本当にそう思っているんだろう。

自分より俺の心配をする様な子だからな、だけど、男としてそれで良いのか?

街でドーナル達に絡まれた時もリリに助けて貰った。

そうだな・・・・ちょっとだけ頑張ってみるか!

微笑んでるリリに伝えた。


「明日、行きたい所があるんだけどさ! 」

「駄目です!! 」


えっ?まだ何も言って無いじゃん。


「魔物狩りに行きたいんですよね?確かに大型の魔物は狩られているとは思いますが、危ない事には変わりありません!駄目です!許しません!!魔法だって時間をかければ覚えられるんです。焦る必要はありませんから、ゆっくり練習しましょう 」


珍しく強い口調の後に、優しい言葉をかける事を忘れないとは、飴と鞭ってやつですね。

さすがに甘やかし過ぎな気もするが、逆らうと怖いから黙っておこう。

外もすっかり暗くなり、夕飯を食べに城に二人で戻った。







少し汗を掻いた為、食事の前にシャワーを浴びる。

執事のメープさんに頼み、ムーさんへの言伝と着替えを用意して貰った。

シャワーからあがり着替えて食堂へ向かう。

今日はリリのお母さん、女王様も一緒に食事をとる様だ。

軽い挨拶も終わり食事の席にメイドさんに案内して貰う。

今日のメインディシュは魚の塩釜焼だろうか?素朴な味だが素材を活かした絶品だと思った。

魚の名前はサーマンっと言うらしい、某ゲームの人面魚が浮かび少し、食欲が無くなった。

サーマンを半分程食べ終わった頃、女王さまから話かけられた。


「兜太さん、ミドラーシュ国はどうかしら?マールから話は聞いているけど、貴方の意見も聞いてみたいわ 」


いきなり聞かれると上手い返答が思いつかないものだね、少し考え込み女王様に答えた。


「いい国だと思いました。俺が住んでいた日本とは全然違いますけど、色々な種族の人が一緒に暮らしていて、みんな笑顔で暮らしていて。少し、怖い思いもしましたけどね、いい人達だと思います。上手く言えないですけど、今は楽しいですよ、俺は」

「そうか、楽しい、か。貴方は魔族の事を人、と言うけれどそれは何故なのかしら? 」

「あ、すいません。不味かったですか?見た目は違うけど、話してみると人間と全然、変わり無かったもんですから・・・・ 」

「変わりないか、そうね。見た目で争うなんて馬鹿馬鹿しいわ、フフフ」


何か喜んで貰ってるみたいだ、理由はわからないがとりあえず笑っておこう。

夕食も終わり、食堂から退室する女王様をリリと見送る。

そうだわっと、女王様が振り向きざまに忘れたかった事を思い出させてくれた。


「明日の夕食には妾の旦那も参加出来ると思うから。楽しみにしていてね、兜太さん 」


そう言い残し、王女様は部屋から優雅に退室した。

わ、忘れてた!いや、忘れようとしていたんだ!

リリのお父さんが帰ってくる事を、娘を溺愛し、国民に狂気の王と呼ばれる人と会わなければいけない事を。

いきなり娘が結婚するなんて言ったら、発狂するんじゃないか?

あー、お腹痛い、会いたくないなぁ。

部屋へはお腹を押さえ、リリに付き添われて帰る事になった。






リリも自室へ戻り、一息ついていると、ドアがノックされる音がする。

メープさんに頼んでいたものが揃ったんだろう。

着替えの服を頼む際に、ムーさんへの言伝を頼んでいた。

内容は簡単だ、練習をしたいからレリーフを貸して下さい、だ。

ドアを開けると、予想通りメープさんがいた。

メープさんの背後からニュっと顔を出すムーさんもいる。


「なんだかぁ、面白い事が起こる気がしたのでぇ。来ちゃったぁ 」


どうやらムーさんにはバレバレらしい、エスパーみたいな人だな。

仕方がないので、メープさんに夜の街も見たいから散歩に行ってきますっと伝える。

勿論、ニヤニヤしているムーさんも一緒だ。


「それでぇ、どこに行くんですかぁ?兜太さん、大人のお店は駄目ですよぉ ? 」

「わかってる癖に良く言いますね!」


二人で街を歩き、そびえ立つ城壁の前へ到着する。

門の前では眠そうな門番が欠伸をしていた。

ギルドで貰った登録証、冒険者の欄を見せるとあっさりと外へ出してくれた。


さて、夜の秘密特訓といきましょうか!












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