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9話:死の悲報

 週末、サークル・観劇・バイトと予定が詰まっていて投稿することが出来ず、申し訳ありません。

 遅くなりました。

 ※タイトル戻しました。

 今日は珍しく、雪ではなく雨が降っていた。


 何事も上手くいっている。上手くいきすぎて怖いくらいだ。


 私は今、金色の縁で彩られた、正面と左右の三方向に鏡のある鏡台で、髪を()かしている。癖なのか髪を整えておかないと一日の気分が乗らない。

 鏡に映る私――シルヴィア・マーガレットを見、ため息をついた。


 順風満帆に物事が進むという事は普通なく、なにかしら苦難が待ち構えている。


 ましてや前世の私がプレイしていた『残酷物語』のロペスルートはここにたどり着くことさえ不可能であったのです。というよりもここに行く直前で、前世の記憶が途切れています。

 神の悪戯か知りませんが、これから先は今の私が切り開いていくという感じでしょう。


 無論ここから先は私も展開を知らないというわけであって、もしかしたら何事もなく幸福結末(ハッピーエンド)を迎える可能性だってあります。そうであれば物凄く嬉しいのだけど。


 胃が痛むほどの恐怖が襲った。


 ロペスとは結婚式の前日まで会えないということになっている。どうやら片付けないといけない雑務が多々あるらしい。

 彼の姿が見れなくて、彼の声が聞けなくて、時々、早く会いたいという焦燥感に悩まされたりする。恐怖と焦燥が混ざり、鬱とした感じを高めた。

 しかし、自分とロペスがついに夫婦になることに頭を切り替えると、不思議と暗い感情が吹き飛んだ。期待感で身体全体が熱くなってくる。

 にこりと、鏡に映る自分に笑いを向けた。


 今日も一日頑張ろう。


「た、大変ですシルヴィア様!」

「どうしたのそんなに慌てて。らしくないわよ?」

「レイボルト様がっ……! レイボルト・ハーン様がお亡くなりになられました……」


 ティナさんの知らせは、私を驚かせるには充分すぎるものだった。

 ロペスとの結婚を控え、心躍らせる気持ちに穴を穿つ、あまりにも唐突な――死の悲報(しらせ)

 暖炉で勢い激しく()ぜる薪の音が少しばかし大人しくなった。


「……嘘でしょ。ティナさん……悪い冗談はよして」


 一、二歩後退り、頭を横に振った。

 平静を取り戻したティナさんは淡々と告げる。


「冗談などではありません。それと私にさん付けはお止め下さい」

「別に付けたっていいじゃない」

「一国の王女であるシルヴィア様が、ただの侍女である私にさん付けはするものではありません。以前は私に敬語を使ったり、やはりどこかで頭を打ったの――」

「――そんなことはどうでもいいの! さん付けとか今は問題にしてないの! レイボルトが死んだなんて笑えないわ。嘘でも冗談でもきついわ……」

「申し訳ありませんが、事実です」

「じゃあティナさんはレイボルトの死体を見たっていうの!?」


 子供じみた反論だと思った。

 わなわなと震える私の肩に、手が置かれた。


「見てはおりません。ですが、死んだのです。レイボルト様は。その事実は重く受け止めなければなりません」

「……」




◇◇◇




「シルヴィア! ねぇこの花見てよ!」


 銀髪で、紫色の瞳の少年、レイボルトが私の手を引く。

 王国生まれで、あまり世界というものを知らなかったので、外の世界を見せてくれるレイボルトは太陽のような存在だった。


 前世の私は知らない、今の私の幼き日の記憶。




 九歳になった私はそろそろ結婚を考え出さなければならない。十八か九には結婚してほしいと親が仰っていた。親に決められた人生。私は生まれた時から鎖に縛れた囚人だった。


 十八歳になって私が王国から逃げ出したのは、前世の記憶を思い出したというのもあるが、この囚人生活から抜け出したいというのもあった。前世の私に今の私を委ねがちになっているのも、私にはない考えを沢山してくれそうだから。

 もっと自分を大切にしなさいって、ティナとかには怒られるかもしれないけど、こうすることしか出来ない馬鹿な私には、これが最善策だった。


 話を戻すが、この九歳の時に私は、レイボルトと出会った。


 初めて彼と対面して抱いた印象は、無口であった。

 とにかく喋らない。これでもか、っていうくらいには。

 すぐにこれはただの緊張だということが分かるが。

 しかし、少し大人びた雰囲気と、切れ長の紫色の瞳は、私に怖いという印象を与えた。


「レイボルト・ハーンで間違ってないかしら?」

「は、はい! ……問題、ありません、です……」


 話しかけてみると意外とあがりやすい。大人びた雰囲気は一瞬にして、私はぐいぐい自分のペースに持っていった。


「きしになりたいのよね? ねぇ、きしってどんなことするの? 教えてよ」

「え、えっとぉ……まず! 身体づくりをしないと。だから! 木で出来た小さな剣を振ることからするよ! いきなりふつうの剣は持たせてもらえないんだ」

「それから?」

「それから先はまだ教えてもらってない……」

「何で?」

「これがちゃんと出来ないで先を教えても意味ないって……」

「ふーーん意外と厳しいのね、きしって」

「うん……。あ、あの! シルヴィアはどんなことしてるの。いつも」

「作法とか言葉遣いとか王女らしい態度とか? むずかしくてなかなか覚えられないの」

「ぼぼぼ、ぼくもそういうことやったりするよ! あと政情とか! て、ていおう学も一応やってるんだ!」

「帝王学もやってるんだね。私はまだやってないかな。すごいんだねレイボルトって!」

「…………」


 レイボルトは顔を俯けると、一目散に逃げ出した。


「待ってよレイボルト!」




 恥ずかしさのあまり逃げ出しただと、捕まえたレイボルトに聞き出した。

 そんなレイボルトは一ヵ月もすると私に慣れてきたのか、言動も落ち着き、自分から色んな事をしてくれるようになった。

 「この花見てよ」と言うのも彼の成長の証だ。他の人がいる時はとても凛々しい顔をしているのに、私と二人きりの時は花が咲いたように明るい笑顔をしてくれる。

 また、自分の知らない世界を彼は沢山知っていて、私は彼に引き込まれていった。




 そんな時だ。




 十歳のあの日。




 ――大きな木の下でレイボルトから初めて求婚されたのは。




「好きなんだ! 結婚して下さい!」


 あまり『異性』として意識していなく、『親友』としてレイボルトのことを意識していたので、突然の求婚に目を丸くした。好きと言われるのは嬉しかったが、結婚するというのがよく分からなかったので、私は断った。

 すると、彼は悲しそうな顔をして、


「そう」


 短い言葉を残し、その場を後にした。

 もう一度言うが、この時期にはもう結婚のことを考えなければならなかった。しかし、私の中には結婚ってどういうものなのという疑問がずっとあり、それが解決するのは十五の時であった。


 十五歳になって、やっと私はこれまで二十回に渡って求婚してきたレイボルトの気持ちを理解することが出来た。


 今すぐにでも、答えをいいたい。

 お願いしますといいたい。


 はやる気持ちと共に、私の足取りも速くなる。王国内では走るなと注意されていたので、早歩きで。レイボルトは一階にいるらしい。

 しかし、一階に向かう途中、お父様――ハウス・マーガレット様に引き止められ、こう告げられた。


「シルヴィア。お前にはもっと相応しい人がいる。だからレイボルトとは結婚するな」


 父の命は絶対だった。


「はい」としか言えず、その日一日は自室のベッドにふさぎ込んでいた。誰に名前を呼ばれても答えようとしなかった。それからは……。




◇◇◇




 幼い頃の記憶が、鮮明な映像となって再生される。

 もっと(さと)ければ良かった。もっと優しくしておけば良かった。もっと彼の求婚を断る理由もちゃんとしておけば。勉強があるから今はそんなこと考えられないの、なんてひどすぎる振り方だ。


 馬鹿だ。私は馬鹿だ。大馬鹿だ。


 幼い頃は親からも求婚は受けてもいいと言われていた。なのに当時の大馬鹿な私は、恋とか愛とか全然分からなくて、ましてや結婚なんてという考えの持ち主だった。

 彼の求婚を受けようと思った十五の時には、親の意見が嘘のように変わっていた。

 それからはずっとただただ振り続けていた。




 絶え間なく出てくる後悔が悲嘆の激流となり、あふれ出る涙を抑えることが出来ない。


 降る雨が悔恨の叫びを、私の代わりに告げている気がした。

 シルヴィア視点です。

 作者は男性であるため、ちゃんと女性の心情が書けているか不安です。理想の女性像がひょっとしたら出ているのかもしれません。

 少女漫画を読むなりして勉強します。

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