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7話:渦巻く陰謀2

 一年以上更新置いてすみませんでした。

 折角生み出した作品を未完のまま終わらせたくないです。

 ちゃんと終わらせます。

 タイトル変わりました。

 残酷結末と書いて残酷エンドと読みます。

 マーガレット王国から北へ五十キロ。


 【ナビス】の根城があるとされる街、レンスはそこにあった。レンスは行商が盛んであるらしく、幌馬車の移動が激しい。

 薄汚い色の頭巾を被ったレイボルトは、街の入り口である門の前で、異様な空気を感じ取っていた。空を見上げると、街の周りに大勢の鳥がとぐろを巻いて飛んでいる。

 ここが【ナビス】であるのは間違いない。

 長年騎士をやってきたからか、レイボルトのそういう勘は鋭かった。

 そして、ハウス・マーガレットが彼一人で赴かせたのも――、


「俺が邪魔だったっていうわけか……」


 理由は分からない。しかしその不満をあそこでぶちまけていたらどうなっていたか。




 答えは死。




 どの道死ぬしかなかったのだ。自分は。それが遅くなったというだけで。 

 



「笑えねぇ」




 俺に死ぬ理由がどこにある。教えてくれ。




「笑えねぇよ!」


 今にも雪が降りださんとしそうな曇り空に向かってレイボルトは叫んだ。

 叫ぶと、少しばかりか気分がすっとした。

 目の前にある「死」も「生」に変えればいいんだ、と思うようになった。なにもまだ死んだわけじゃない。ちゃんと命ぜられた通りに任務を果たせばいい。


「だよなシルヴィア」

 

 右腕に着けているブレスレットへ囁くように言った。

 これはレイボルトがまだ七歳だった頃にシルヴィア・マーガレットからもらったものである。もう十年以上も着けているので所々解れそうになったりしている。石もこすれて色落ちしてしまったのか、あまり輝きがない。傍の人から見れば、こんなもの価値がないといった印象を抱くことだろう。

 しかしレイボルトにとって、これ以上価値のあるものはなかった。




 見ていると元気になってくる。

 身体の底から力が湧いてくる。

 何度戦いで敗れても、

 何度振られても……。




 あの時シルヴィアが、


「レイボルトはわたしを守るきしなんだから! 私が死ぬまでずっと守りつづけてね!」


 と言ってこれを渡してくれた。

 この言葉を思い出す度に諦めるわけにはいかないと、立ち上がることが出来た。

 今回もそうだ。

 諦めるわけにはいかない。

 シルヴィアへの三十一回目の求婚を果たすためにも。 




◇◇◇




 街へ入った。誰かに後をつけられている気もしたが、流石に人通りが多いこの場所で騒ぎを起こすつもりは相手もないと、レイボルトは読んでいた。  

 近くの武器屋へと入る。

 武器屋内は意外にも明るかった。というのも武器屋らしからぬ派手な装飾が施されたランプが幾つも点っているからであろう。客は十二、三いるといったところか。

 丁度人数の確認が済んだ時、先程レイボルトをつけていたと見られる人物が入ってきた。

 レイボルトはなるべく相手を見ないように武器へと目を遣った。


 間違いない。こいつは俺をつけてきている。


 街の武器屋というのだからもっと価値の低い物が多いのだと思っていたが、意外にも貴重な素材が使われている武器が多い。中でもレイボルトの目を引き付けたのは翡翠色に光る両手剣である。手を翳してみると、輝きは強さを増した。


「不思議な感じだ。魔力を帯びた素材でも使っているんだろうか……」


 そう思わず口に出てしまうほどである。一瞬であったが、店の雰囲気が張り詰めたものになった。なるべく表情を見せないように店内を窺うと、皆彼の方を向いていた。




 それも――




 無表情で。


 レイボルトの身に緊張が走る。明らかに悪目立ちをしてしまった。無表情であった内の一人、彼の後をつけていた人物が口元の筋肉を緩め、微笑を湛えた。逃げ場はないぞと言わんばかりに。


 レイボルトは両腰に手をそえた。外套で隠れてはいるが、彼は腰に双剣を携えている。普段使っている剣は大きくて目立ちやすいからと、置いてきてしまった。

 正直双剣は使い慣れていなく、不安がある。だが不安だなんて思ってられない。

 俺は騎士なんだ。

 キャビネット王国を、いやシルヴィアを守る騎士なんだ。

 一玉の汗がレイボルトの頬に線を描いた。


「なぜ俺をつけている。そしてそいつら全員お前のグルか?」

「魔石に反応したな。王族しか反応しないこの石に。やはり君で正解だったな」

「質問に答えろッ!」

「クク、いい実験台になりそうだな」


 目を剥き出しに、醜い笑みをレイボルトに見せる。

 やばい。瞬間的にそう思った。

 レイボルトは双剣を抜いて何かを弾く。床を見れば二刀のナイフが突き刺さっていた。その行動に反応して、店内にいた人達が一斉にレイボルトを取り囲む。

 彼の顔に苦々しい表情が浮かぶ。


「刺客か」


 刺客の内、彼に微笑を向けていた人が手を叩いた。


「反応は良し。筋力も良し。さて、魔力はどうかなぁ!」


 パチン、と指が鳴らされる。

 途端、レイボルトの頬に風が吹き付けた。

 目を開けば、そこに武器屋の姿はない。

 あるのは開けた平地と、その周りを囲う火炎。

 曇っていたはずなのに明るい黄昏の空。

 もしかして、


「幻術系の魔法か」

「当たり! 今ここにいるのはボクとこいつらと君だけ」

「――――ッ!」

「あ、ちなみに助けを呼んでもこないからね。ボクの幻術はそこらへんのちゃっちいものとは違うから」


 空間に歪が生まれ、そこから紫色の大きな鎌が出てくる。それを掴んで、こう言った。


「ボクはセインツ・ブンドック。君の命刈り取らせてもらうよ」

 もう一話レイボルト視点が続くと思います。よろしければ感想お聞かせ下さい。

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