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花園神社にて

作者: 高橋まりあ

 雨の新宿、午後10時過ぎ。ほろ酔いで歩きだす。気になると好きの狭間にある感情を抱いている相手と。貴方は「濡れますけど大丈夫ですか。」と苦笑いをしながらも付き合ってくれた。

「ほら、めっちゃ良い感じじゃないですか!ね。」

終始にこにことハイテンションな私に連れて行かれるビルに囲まれたそこだけ異質の神社に貴方は驚く。

「こんなところあるんですね、知らんかったです。」

「ふふふ、ちゃんと来たことはそんなないんですけどこういうの好きなんですよ。」

神社の横へ伸びる参道はわずか20メートル程、まだ色づく前の銀杏の木に縁どられている。二人の傘の分広がる距離が少し悲しい。

「京都の伏見稲荷も好きで、やっぱりこういうところって夜が素敵って思うんですよね。」

「伏見いいですよね。行ったことあるんですか?」

「行きました!友達に絶対夜に行きたいって言い張って。」

何でもない会話を続けている。核心にはどうやって触れたらいいのだろう。


 すぐに本殿が現れて、ちゃんとした神社がこの新宿と言う街の中に確かに存在していることに貴方は再び楽しそうに驚く。

「お参りしていきます?」

「あ、はい。しましょう!」

二人でお参りするときはどういう順番かなどと悩みながらもじゃらじゃら鐘を鳴らし、小銭をいれて、二礼二拍手一礼を。


 心の中で「この人と縁があるのなら繋いでください。」と一生懸命お願いをした。5円玉じゃ足りないでしょうか、お狐さま。


 神社の横を抜けてゴールデン街の方へ、大通りの歩道を二人で話す。何でもない話を駅まで。手を繋ぐことも、気持ちを言葉にすることも出来ないまま。貴方はいつも変わらない。崩れない敬語、ゆっくり落としてくれる歩く速度。いつもと云えるほど側にいたことはないけれど。


 これから側にいれるでしょうか。


 誰か見知らぬ女の子に取られたくない、この場所を、より近い場所を。そう思う私はもうすでに貴方に「恋」をしているのでしょう。そして、きっともう貴方は気が付いているでしょう、私の気持ちに。振り向いてくれるまで、振り向かせるまで貴方のこと「好き」でいさせてください。こんなに頑張って「恋」しているのに貴方にはダメなところばかり見せている情けない私だけれど、貴方の人生を私の人生を寄り添って生きたいと願います。


 確かに縁をかけた5円玉で願うには余りに強欲な願い。それでも私は、掴みたい。貴方の心を。


 好きです、貴方のことが。



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