ロロ
僕、ロロ。
熊の獣人なのに背がちっちゃいのが不満。
お父さんもお母さんも大きいのに……なんで?
それで他の子からいじわるされた事もあるけど、お父さんとお母さん譲りの怪力で跳ね返したから大丈夫。
熊の獣人は力と身体が強くて、武技はそこそこ(ちょっと不器用だから)、魔法は苦手。
大きな身体と強い力を活かして、大剣や大斧、両手槍や大盾で豪快に戦う。
でも僕は身体がちっちゃいから……
そんな僕は戦闘技術を学ぶ為に学校に入る事になった。
熊の獣人は親や他の大人に付いて狩り等の実戦の場で学んでいくのが普通。
でも、お父さんお母さんがこれからはきちんと技術や魔法も身に着けなければ駄目だって言ってた。
僕の身体のせいかもだけど……
いっぱい居る子供にびっくり。
村には同じ歳の子供は居なかったし、子供自体が数人しか居なかった。
どれくらいいるんだろう?百人?千人?
でも皆僕より大きい。むー……
試験は合格。
でも僕みたいに魔法が使えないのは少ししか居なかった。僕の村だと少しの人しか使えないのに。
だから、クラスはDで、寮はびっくりなボロさ。
僕は小さいけど、身体は強いからあんまり気にならないけど。
むー、振り回されちゃう。
僕の身体より大きい大剣を振る。
持ち上げる事は出来るんだけど振ろうとすると振り回されちゃう。
試験の時はお父さんお母さんに言われてたから普通の剣を使ったけど、やっぱり僕はお父さんやお母さんと同じ大剣を使いたい。
でも、振り回されちゃう。むー……
その後、女の子二人に同じパーティーへ誘われた。
可愛い子と綺麗な子。
でもどっちも僕より大きい。特に綺麗な子は僕より男らしい。むー……
そして最後のパーティーメンバーは綺麗な男の子。
僕より大きいけど、男らしさでは勝った。
パーティー結成のお祝いでは可愛い子に抱き抱えられる。
僕が小さいからだから、あんまり好きじゃない。けど、凄く良い匂いがする。
それに撫でて貰うのが凄く気持ち良い。ずっとこのままで居たいと思っちゃう。
でも猫に弾き飛ばされた。
勝ち誇る猫にイラつく。むー……
猫と睨みあっていると可愛い子に二人合わせて抱き抱えられる。
暫くはそのまま猫と睨みあっていたけど、なんかどうでもよくなる。
むー……
今日は魔法の授業。
初めての魔法、僕は火属性らしい。
火の初級魔法、『着火』を覚えることになった。
えっと、集中して、魔法陣に魔力流して、魔法を想像する?
集中、集中……何に集中すれば良いの?精神集中?何それ?
魔力ってどう流すんだろう?
魔法の想像?『着火』……幾つか魔法を見たけど、どれのこと?
むー……
フィリアが来てくれた。
「ロロ、先ずは魔力を流す事からですね。手を繋ぎましょう」
フィリアと手を繋ぐとフィリアの右手から暖かいのが僕の左手に流れ込んでくる。
「魔力は感じ取れましたか?」
「ん」
流れ込んだものは直ぐに消えたけど、似たようなものが僕の中にある事はわかる。
「じゃあ、それを動かしてこの魔法陣に流してみましょう」
うん、出来た。
魔力が流れた部分が光ってる。
「ちょっと、魔法力が弱いですね。本番ではもうちょっと力を込めましょうね。
じゃあ次はイメージですね。うーん『着火』は実際に見た方が早いでしょうか。見てて下さい」
フィリアが一本指を立てると、その先に火が灯る。
「こんな感じですね。ロロは火打石で火を点けた事はありますか?」
「ん、ある」
「じゃあ、魔力を燃料……薪だと思って火打石で火を点けるのを想像しながら、魔法陣に魔力を流しましょう」
「ん、わかった」
言われた様にやってみる。
さっきより力を込めて魔力を流すと、直ぐに魔法陣全部に光りが行き渡り魔法陣が光り輝いた。
光が治まると魔法陣は消えていた。
これは無事習得したと言う事らしい。
「うん、無事覚えましたね。一度使ってみましょう。やり方はさっきと殆ど同じで、魔法陣に魔力を流すのではなく火を点したい場所に魔力を流せば良いです。そして『着火』と唱えて下さい」
「ん……『着火』」
むっ!?火が点いた。
初めての魔法、凄い。
「そういえば、ロロは魔法を覚えて無かったんですよね。それなら魔法適正も調べてませんね。ちょっとやってみましょうか」
それからフィリアが言うとおりに『着火』を変化させてみる。
火を大きくしたり、火の形を変えたり、温度を上げたり、数を増やしたり、飛ばしてみたり。
直ぐに魔力が切れたし、殆ど変化も無かったから、自分ではどれに向いてるとか良くわからなかったけど、フィリアはわかったみたい。
僕は魔法の大きさを変えるのが一番向いてるらしい。形の大きさではなく、一発の威力を上げるのに一番向いているそう。
魔法って面白いな。
種族的に苦手なのが残念。
でも一つは覚えられたし、出来るだけ頑張ろう。