タマちゃんは魔法も得意なんですよ!
昨日のお祝いはとても楽しかったです。特にロロは可愛いですね。あの小ささと丸っこさに毛並みはタマちゃんみたいです。膝の上に乗せて撫でていたら、タマちゃんが嫉妬してロロに体当たりして私の膝の上を奪い取ったりしたのも面白かったですね。最後は私が二人一緒に抱きかかえましたが。
今日は学校三日目、どんな授業でしょうか?
「……魔法習得の道筋はそんな所です。では、次の時間で実際に試して見ましょう。次の時間は魔法実習室に集合して下さい」
この学校での最初の授業らしい授業は、魔法の習得に関する授業でした。
この世界の魔法は、魔法陣に魔力を流す事によって習得します。
例えば『石弾』の魔法を覚えたいとするなら、その『石弾』の魔法陣にその魔法がどういうものかを想像しながら魔力を流す事で習得出来ます。
その時に『石弾』を使えるだけの魔法力、魔力量を持っているかを判定され、魔法の想像がきちんと出来ていれば無事習得出来ます。
ただ、魔法力、魔力量の判定の所では、属性というものが大事になってきます。
属性には人それぞれ得意と苦手があって、同じレベルの魔法でも必要な魔法力と魔力量が変わってきます。
例えば私の得意属性は土属性ですが、『土壁』を習得するのに必要な魔力量が10だとしたら、『着火』『水滴』の習得には20が、『送風』の習得には50が必要になってきたりします。この数字は適当ですのでなんとなくそんなものだと思って下さい。
今日の授業ではまだ習得していない魔法を一つ覚える事になっていますが、私は何を覚えましょうかね?
私の魔法力、魔力量があれば、想像さえ上手く出来れば土属性なら中級と一部上級、火属性と水属性なら中級、風属性なら下級と一部中級まで覚える事が出来ると思います。
まあ習得は出来ても、使いこなせるかは別問題ですが。
うーん、やっぱり『送風』でしょうかね。
風属性だけ覚えてないのもあれですし。
そんなに強い魔法にも興味ありませんし。
と言う事で、先生から『送風』の魔法陣を貰って魔力を流します。
『送風』はそのまま風を起こす魔法ですからイメージも簡単です。
はい、無事習得出来ました。
夏には活躍してくれるでしょう、扇風機として。
いや、ここは頑張ってエアコンを目指しましょうか?
さて、私はこれで終わった訳ですが、何をしましょうか?
セツナの契約でも見てましょうかね。
セツナは今迄『送風』だけしか習得していませんでした。
今回は、風の下級魔法『風塊』の習得に挑む模様です。
『風塊』の魔法陣を前に目を閉じて精神集中するセツナ。本来はこの様に魔法習得には集中して真剣に挑まなくてはいけません。軽ーく、ポンポンと覚える様なものじゃないんですよ、魔法は。
そして、セツナが目を開けると同時に魔力を魔法陣に流し始めます。
ふむふむ、魔力の流れは悪くないですね。セツナの魔法力は『風塊』の習得に足りているようです。
次は魔力量が足りているかですが……おっ、魔法陣全てに魔力が行き渡りました。魔力量も足りていたようです。
魔力が魔法陣全てに行き渡ったと同時に魔法陣が光り輝きます。
その光りが治まった時、そこには変わりなくある魔法陣と、がっくりと肩を落とすセツナが居ました。
セツナが落ち込んでいる理由は、魔力量が減った事による疲れもあるでしょうが、魔法習得に失敗したからです。
魔法力、魔力量は問題無かったので、魔法の想像が上手く出来ていなかった様ですね。
この想像力は結構大事で、子供が魔法を覚えられないのは魔法力、魔力量が低いのもありますが想像が上手く出来ないからというのが大きいです。
子供の方が想像力は豊かに思えますけど、魔法習得における必要な想像力は、壮大な子供の想像力ではなく、精密で明確な大人の想像力なんです。
そして、魔力量、魔法力は足りていて、イメージが大きく違っていると魔法、魔力の暴走や暴発を引き起こす可能性があるんですよね。だから、子供の魔法習得は危険です。
セツナの場合はしっかり想像出来ていなかった為、魔法習得は出来なかったですけど、そこまで大きく違ってもいなかったので暴走、暴発等は起きなかったようです。まあ、初級、下級の魔法習得では滅多に起きませんけど。
「セツナ」
「フィリア~、失敗しちゃったよ~」
いつもの凛としたセツナも素敵ですけど、落ち込んだセツナも可愛いですね。
「大丈夫ですよ、魔法力と魔力量は足りていましたから後は想像だけです」
「フィリア~」
「多分失敗するだろうなぁと思っていましたので、気にしない事です」
「……フィリア!」
落ち込んだり、喜んだり、怒ったり忙しいですね、セツナは。
「酷いよフィリア!失敗すると思ってたなんて!」
「だって、『風塊』の魔法をどうイメージしますか?って聞いたら、「固い風の球みたいなやつ?」とかふわっふわした答えが返って来ましたし」
「それは……じゃあ、どうイメージすれば良いの?」
「そうですねぇ、まあ、私ならですけど……タマちゃんお願いします」
私のお願いを聞いて、タマちゃんが私の周りを走り始めます。
「タマちゃんを風としますね?先ずはタマちゃんを掴まえます」
私は走るタマちゃんを掴まえ、両手で抱きかかえます。
「次に、手の中のタマちゃんをギュッと押し込めます」
「うわっ!?」
私はタマちゃんの中心に向かって力を込めます。
セツナは何をそんなに驚いてるんでしょうか?
ただ、タマちゃんの体積が半分以下になっただけなのに。
タマちゃんの柔らかいモフモフの身体、『収納空間』の能力も組み合わさってか、タマちゃんは身体の大きさを変えられます。今は直径10cm位になっています。
凝縮されているからか、触り心地も硬くなっています。
わたあめを握り締めた感じでしょうか?
「これが、私がイメージする『風塊』ですね」
おーい、聞いてますか?セツナ。
ちょっと時間が掛かりましたが驚愕から立ち直ったセツナは、気を取り直して再度『風塊』の習得に挑みます。
精神集中、魔法陣へと魔力が流れ、光り輝く魔法陣まではさっきと同じ流れです。
そして光りが治まった時、『風塊』の魔法陣が消えて無くなっていました。
「やりましたねっ、セツナ!」
「うん、やった!」
大喜びのセツナ、俺のお蔭だなと言ったドヤ顔のタマちゃん、私もそんな二人を見て笑顔が込み上げます。
『風塊』は言葉そのまま、風の塊を作る魔法です。風を圧縮して殆ど質量を持たない風に質量を持たせると言った所でしょうか。
ただ、自分の手で投げたりしないと攻撃とかには使えないんですけど、熟練者になると足場に使えたりするので便利な魔法です。風と言ってはいますが空気がある所なら何処ででも使えますしね。
さて、セツナも魔法を無事覚えられた事ですし、次はパーティーメンバーを確認しますか。