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セルジュ

ううーん、朝かぁ。

この学校の寮に来て、今日で一週間。慣れては来たけれど、やっぱり熟睡は出来ないし、ベッドが固くて身体が痛い。

僕は実家がある程度裕福なのもあって、ちょっときつかったりする。

裕福とはいえ、優秀な兄と姉に比べ、武技も出来ず魔法も上手く制御出来ない僕は出来損ない扱いだったので、贅沢な暮らしはしていなかったけど。

よく、この学校に受かったものだと思う。まあ、案の定最低の成績のクラスだったけど。

この学校に来たのも、殆ど家を追い出されたも同然だったりする。一応入学金や授業料は払ってくれ、少しの生活費は貰えたけど、もう帰ってこなくて良いと言われている。

それは悲しいけれど、学校卒業後、もしかしたらその前から自分でお金を稼いで、自分で自分の面倒を見なくちゃ生きて行けないので、悲しがっていてはダメだよね。

この学校できちんと学び、一人で生きていける力を身に着けないと。


今日は学校二日目、とはいえ昨日は入学式と少しの説明だけだったので、初日みたいなもの。

午前中は身体測定だった。僕の成績は

腕力 E  体力 E  敏捷 D  魔法力 B  魔力量 B

こんな感じだった。

肉体は貧弱だけどそこはある程度鍛えればいいし、魔力は強大なので、魔法師を目指すならそこそこ才能があると思うんだけど、昔から僕は自分の魔力を制御出来ない。魔法を敵に命中させられないどころか、自分や味方に命中させてしまったりする。

そんな僕が強い魔法を使ったら危なすぎるので、中級魔法以上は覚えるのを禁止されていた。初級魔法なら一応問題無く発動出来るんだけど、下級魔法だとよく制御に失敗してしまう。

ちゃんと制御出来るように早くならないと!


お昼休み、寮の先輩から食堂のご飯は凄く美味しくなくて、購買のパンや弁当は美味しいと聞いていた僕は購買に向かう。

でも購買は毎日熾烈な争いが繰り広げられているから、行くなら覚悟しろよとか一緒に言われたから、走って購買に着くと殆ど人も居なくてがらんとしていた。居るのは僕より足の速い同じクラスの男の子位だった。

先輩が大げさに言っていたのかな?と思って着いた所で足を止めた僕は馬鹿だった。偶然僕のクラスだけ少し早く授業が終わっただけで、直ぐに沢山の足音が聞こえだすと、僕は人波に飲み込まれた。

気付くと購買は売り切れていて、僕は美味しくない食堂のご飯を急いで食べなくてはいけなかった。

怪我をしていなかったのは良かったけど、明日以降僕は購買でご飯を買える自信は全く無い。

これから毎日美味しくないご飯を食べ続けなければいけないのかな……?


午後は先ず武技適正を調べる。僕は軽い杖を使うのが良いだろうと言われた。というか武技に適正が無いと言われた。悲しくなった。


そして魔法適正、初級魔法で数多くの『湧水』を作った僕は範囲魔法に適正があるらしい。その後、もし使えるなら下級魔法でも試してみろと言われた。

僕はなんとか制御しようとしながら『水砲』を唱えたけど、結果は『水砲』に僕は飲み込まれた。他のクラスメイトに迷惑を掛けなかった事だけが救いだ。

いや、授業が中断して先生が僕を保健室に運んでくれたみたいだから、迷惑掛けたのかな。

授業が終わる前に目を覚ました僕は、身体に問題無かったので、戻ってきて他の皆の魔法を見ながら見学した。


授業が終わり、帰ろうとした所で女の子二人と男の子一人に声を掛けられた。


「帰る前に少しお話しませんか?」

「えっ……うん、いいよ」


声を掛けてきた子は、凄く可愛い女の子で、見学していた時に凄い魔法を使っていた子だった。

見学して直ぐの時には、「ドライブ」とか「カミソリ」とか言いながら、『石弾』の魔法を色んな軌道で飛ばしていた。

それだけでも凄いと思っていたら、今度は「タイガー」と言いながら石を飛ばした。今度は軌道は直線だったけど、飛んでいる途中で石の形が変わり、虎が襲い掛かる時の上半身の様な形に変わって飛んでいった。

それにびっくりしていたら、今度は「イーグル」と言いながら飛ばした石が鷹が獲物を捕らえるような姿に変わった。

それらを飛ばしていた時のニコニコした顔を良く覚えている。


もう一人の女の子は凛々しい感じで、武技適正の時に目立っていた。素早く鋭い動きで刀を振る彼女はとても凄いと思った。

男の子も武技適正の時に大きな武器を振り回し目立っていた。自分自身も振り回されていたので、目立ち方は女の子とは違ったけど。


「先ずは自己紹介ですね。私はフィリア、悪魔族です」

「私はセツナ、平人族ヒューマンよ」

「ロロ、熊の獣人族」

「僕はセルジュ、森人族だよ」

「今回は私達四人でパーティーを組みませんか?というお誘いの為に声を掛けました」

「ええ?そんな……僕はダメだよ」


僕を誘ってくれたのは嬉しいけど、僕はきっとパーティーメンバーに迷惑を掛ける。落ち込みながら断った。


「僕はダメって、こちらから誘っているんですから」

「でも、僕は魔法を制御出来ずに味方に当てちゃうかも知れないし」

「それぐらい気にしなくて良いですよ。まだ入学したばかりですし、これから頑張れば良いと思います」

「……ありがとう、頑張ってみるよ。でも仮のメンバーにして欲しい。正式なパーティーに入るのは制御出来た後にして欲しい」

「わかりました。ロロはどうします?」

「うん、組む」

「良かったです。じゃあ取り敢えずこの四人でパーティー申請して置きますね。そうですね、折角早く決まったんですし、一緒に訓練でもしましょうか?」

「いいんじゃない」

「いい」

「……わかった、僕もやるよ」

「じゃあ、明日から放課後は四人で訓練ですね」

「今日からじゃないの?」

「今日はパーティー結成記念のお祝いです。街に出て一緒にご飯でも食べましょう」


全員が頷き、四人で歩き出す。

一人で生きていけるようにならなきゃいけないのに、初めから違う方に進んでしまった。

でも、とても嬉しい。

三人に迷惑を掛ける不安はあるけれど、それより早く魔法を制御して正式なパーティーメンバーになりたいと思う気持ちが勝っている。頑張ろう。


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