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セツナ

私の父も母も昔傭兵をしており、傭兵稼業で色々な国を転々とし、私が生まれてこの国に落ち着いたらしく、父も母も東にある国出身だ。なので私はその東の国の血と容姿を持っている、けどその東の国には一度も行った事は無い。

今両親はその東の国が発祥の武技を教える、道場をやっている。

私も小さい頃から両親からその武技を仕込まれ、これから戦闘技術専門の学校に通う。

道場は兄が継ぐ予定なので、私はこの武技を学校で更に磨いて冒険者か傭兵になろうと思う。そして両親の故郷に行ってみるのもいいかなと思っている。

ただ、そういう自分の将来よりも、叶えたい夢がある。

それは、私を乗せて空を飛んでくれる使い魔を持つ事だ。

小さい頃から空に憧れ、自分が風属性だったのもあり魔法を練習したけど才能が無いのがわかり、それから空を飛べる使い魔を持つ事を夢見た。

一度見た事がある。物凄く大きな鳥の使い魔の背に乗って自由に空を飛ぶ冒険者の姿を。

いつか、きっと手に入れたいと思う。


ちょっと早く学校に着いた。まだ入学式が始まるまで十日もある。

・・・この寮か、大丈夫だろうか?崩れたりしないよね。

まだ、ルームメイトは来ていないようだ。まあ、当然かな。

さて、今にも壊れそうなベッドと薄っぺらい布団に早く慣れなきゃね。私の家もそこまで裕福な家じゃなかったけど、ここまで酷くは無いよ。


それから五日後、やっとこの寮での生活にも慣れてきた時にルームメイトがやってきた。

そこからは驚きの連続で、まず彼女の可愛さに驚き、彼女の魔法と技術に驚き、彼女の使い魔の能力に驚き、怖い寮母さんと交渉して部屋の改造を認めさせた事に驚いた。

それから二日程で一気に生活水準が上がってしまった。ぼろい部屋に慣れた意味が全く無かった。もうあの頃には戻れない。


今日は、フィリアと王都探索に行く事になった。フィリアは観光が目的で、私は装備を見たい。

観光しながら、装備を売っている所を探す。ただ、私の武器である刀も防具である着物もしくは武者鎧も

、この国では作っている人が少なく、あまり良い物も出回っていない。

今持っているものもまだ使えるので、買い換えなくてもいいが、整備してくれる人は見つけなくてはいけない。一応私も基本的な事は知っているが、本格的な整備は勿論出来ない。故郷では父や母と顔馴染みの鍛冶師がいたけど、王都に知り合いは居ないので探さないといけない。先輩にも刀を使う人は少ないだろうけど居るだろうし、訊いてからでも良いだろうけど。


「セツナ、あそこに行ってみましょう」

「あれ店なの?なんで?」

「音がします。見に行きましょう」


フィリアが指差したのは、どう見てもただの家にしか見えない、一応扉は開いているものの何の看板等も出ていなかった。

フィリアに付いて店?の前まで行くと、確かに鉄を打つ音が聞こえる。

フィリアはそのまま躊躇無く中に入っていく。


「こんにちはー」

「はーい、いらっしゃい」


中には、私達と同い年位の子が店番をしていた。店の中を見回すと、確かに両親の故郷の武具が並んでいる。特に刀が多い、私の求める鍛冶師の店のようだ。フィリアはよくわかったな。


「今日はどういうご用件ですか?」

「彼女は刀使いですので、見せてもらってもいいですか?」

「はい、どうぞ」


フィリアが話している間にも、私は周りの刀を見るのに忙しかった。こう言っては失礼かも知れないが、この店の刀は私の故郷の鍛冶師が作る物よりどう見ても良い物で、名工の作だった。

夢中で刀を見て回り、やっと今の私に合うであろう刀を見つけ、値段次第では買っていこうと思った所で、フィリアが居ない事に気付く。

どれ位時間が経ったかはわからないけど、もしかして帰っちゃった?

店番の子に聞いてみる事にする。


「えっと、ごめん・・・」

「ああ、お連れさんなら工房の中ですよ」

「えっ?工房の中?」

「はい、お父さんと話していますよ」


何故そうなったのかわからなかったが、取り敢えず私も案内されて中に入る。

中では、真剣な顔でフィリアとおそらく山人の鍛冶師が話し合っていた。


「あれ、何してんの?」

「すみません、私にはわかりません。でもお父さん、滅多に仕事中にお客さんと話したりしないんですけど、お連れさん気に入られてるみたいですね」

「あー、フィリアだからなぁ」


布団で寮母さんに気に入られたみたいに、この鍛冶師にも気に入られたんだろう。特に鍛冶師は寮母さんより物作りにうるさそうだから、気が合いそうだ。

結局、フィリアは鍛冶師に何かを頼んだだけでその日は終わったようだ。

私は目当ての刀を格安で売ってくれたので、かなりご機嫌で、何を頼んだのかは訊き忘れた。

新しい刀を手に入れた私は、フィリアに頼んで武技戦闘の相手をして貰った。

新しい刀に浮かれていた事は否定出来ないけど、私の刀技はフィリアに殆ど通用しなかった。

武技だけだったら自信あったんだけど、布を変幻自在に使うフィリアに手も足も出なかった。


フィリアと一緒に行動していると、何故彼女がDクラスになったのかがわからない。物作りの方に偏っている為あの学校には合っていないかも知れないが、普通に知識も魔法も武技も凄い。使い魔も持っている。

試験の時はそれ程周りに注意していなかったので、試験でのフィリアがどんなだったかは知らないが、緊張で失敗でもしたのだろうか?……全く緊張するようには見えないが。

何故Dクラスかはわからないが、フィリアはおそらく直ぐに上位のクラスに上がるだろう。

そして部屋を出る時は部屋を元に戻すと聞いている。


やばい、必死に勉強、訓練して付いていかなければ。付いていけなくとも少しでも上位のクラスに行かなければ、そうすればなんとか生活は出来るだろう。

あれっ?私、ここに来てから数日間どうやって生活していたっけ?


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