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タマちゃんは目にした途端逃げ出しました!

お兄ちゃんと別れ、次にやって来ましたのは部室棟です。

こちらでは、武技、魔法以外の部活動が今日活動している筈です。


先ずは裁縫部を覗いてみたいですね。


「失礼しまーす」

「はいはーい!ようこそ裁縫部に!まあっ、凄く可愛いわね!角もキュートだし、悪魔族?悪魔族って美人でスタイルが良いのよねー、制作意欲が沸いてきたわぁ。その肌に合う色は何かしら?角を隠さず逆に強調して見える帽子とか良いわね?」

「……えっと」

「ちょっとこれ着てみてくれない?あっ、それも合わせてみて。うーん、やっぱりこっちが良いかしら?はいはいっ、そこのカーテンの裏でね……」

「あ、あのっ、えっ……」



「……良いねぇ!うん、すっごく似合ってる!」

「はあ、ありがとうございます?」

「じゃあ次はこっちのドレスね!あっ、でも、ワンピースで清楚な感じも良いかな?」

「えっ、えっと」

「うん、どっちも着れば良いよね!じゃあ、はい!これ!……」

「あーれー……」



「……うーん?帽子はこっちの方が良いかな?でもこっちも捨てがたいわね」

「ああ、そうですねぇ、でもこっちも悪くないと思いません?」

「あっ、うん、良い!そっちも良いね!じゃあ、それにこんな感じで合わせると良いんじゃない?」

「はい、いいですね。他にもこれとか……」



「……すっごく可愛い!似合い過ぎ!やばいね、これ!」

「ですよね!すっごく可愛いです!あっ、ここはこんな感じのリボンとか……」

「それも良いね!あっ、これも良いかも?こっちに赤でアクセント付けて……」

「うわぁ!凄いです!すっごく可愛いですよ!タマちゃん!」



ふう、一息吐いて裁縫部を出ます。

最初驚いて戸惑いましたが、凄く楽しい時間を過ごせました。

あっ、ちなみにお相手の方は裁縫部部長、というか裁縫部唯一の部員のシャルロット=ラーサガさんです。

貴族なのに自分の手で服を作り、それを人に着せる事が何よりも楽しい趣味なんだそうです。


すっごく楽しかったんですよ、楽しかったんですけど、裁縫部には入らなくても良いかなと思います。

タマちゃんの着せ替えは好きですし、それをシャルロット先輩と盛り上がるのも楽しかったですけど、自分が着せ替えされるのは、ちょっと疲れますね。

ただ、最後「また遊びに来てね」とシャルロット先輩が言っていたので、今度また遊びに来ようと思います。セツナ達を連れて。



続いてやってきましたのは鍛冶部です。

鉄を打つ音が廊下まで響いています。


「失礼しまーす……」

「……」


中には、三人の山人族の方が、一心不乱に鉄を打っています。

その光景は確かに鍛冶部らしい景色なんですが、えっと、今日は説明会ですよね?


「すみませーん……」

「……」


声を掛けても完全無視というか、気付いてないみたいですね。

凄い集中力ではあるんですが……


「あのぉ……」

「……」


えーっと……うん、どうしましょうか。

大きな声を上げたり、身体に触れたりしてこの集中を途切らせるのも怖いですしね。


「……ん?新入生か」


その時、丁度キリが付いた一人の先輩が私に気付きました。


「此処に見学に来るのは珍しいな」


それって気付いてないだけじゃないですか?


「よし、じゃあ打ってみるか」

「え?」


何故か道具と材料を渡され、炉の前に立たされました。


「よし、先ずは火入れだ」

「はい?」

「ほら、早くしろ」

「はい……」


「そうだ、もっと熱するんだ!」


「違う!もっと強く振り下ろせ!」


「遅い!もう一度!」


「……ふん、そこそこの出来だな」

「……ありがとうございます」

「よし、もう一本だ!」

「ええぇ……」


……気付いて貰えない所で出るべきだったかも知れません。

見学に来て短剣を十本も作らさせられるとは。

はあ、疲れました。



続いてやって来ましたのは料理部です。

うんうん、凄く良い匂いが漂ってきていますね。


「失礼しまーす」

「ようこそ、料理部に!私は部長のリーネフォルって言うの。楽しんで行ってね」


前二つがちょっと個性的でしたのでちょっと緊張していましたが、此処は普通の所みたいです。

良い匂いもしますし、部長も良い人そうですし、良かったです。


「それじゃあ、先ずは試食をどうぞ」

「え?」


そうやって渡された物は……えっと、何でしょう?

匂いは凄く良いんです、良いんですけど、見た目が……

何と言えば良いんでしょうか?

色は黒と紫で、肉か野菜か何なのかわからないものが盛り付けられたこの料理。

ひっ、今一瞬動きませんでした?

これで匂いが良いのが不思議でなりません。


「すみません、これ何ですか?」

「ぇgr;pskぐ4#dだよ?」

「は?」

「だからぁ、ぇgr;pskぐ4#dだよ?」


全く聞き取れません。どうやって発音してるんでしょう?


「ちょっと見た目は良くないけど、味には自信があるんだ!さあ、食べてみて?」


部長さんのニコニコ顔と視覚への暴力と言わんばかりの料理に交互に目をやります。

私は戦場に赴くのに匹敵するであろう覚悟を決めると、目を瞑って料理を口に運びました。


……美味しいです。

甘辛い味、柔らかくもしっかりとある歯応え、そして一噛み毎にさっきからしている良い匂いが濃厚になって口の中に広がります。

匂いも良くて味も凄く美味しい、なのに何故この見た目?


「……ごちそうさまです」

「お味はどうだった?」

「美味しかったです……」

「良かったぁ、自信はあったんだけど、そう言ってくれると嬉しいよ。じゃあ、折角だし一緒に料理してみない?」


どんな作り方をしてるのか凄く興味があります。

私は部長さんのお誘いに直ぐに頷きました。


「ぇgr;pskぐ4#dにはね、水袋鳥を使ってるの」


水袋鳥ですか、水辺に棲む鳥肉として一番ポピュラーな鳥ですね。


「これ腿肉なんだけどね、先ずは切れ目入れてー、塩、胡椒に……」


普通の料理風景ですね、私も料理は好きなので、部長さんに遅れる事なく同じ様にやっていきます。


「で、この熱する魔道具に入れて先ずは十分。そしてその間にタレを作るよ」


オーブンっぽい魔道具ですか、これ私の家にもありましたけど良い魔道具ですよねぇ。温度調整が出来るともっと良いんですけど。


「タレは砂糖、塩……」


へえ、朱魔の実の果汁を使うんですね。珍しいですけど、偶にお菓子に使う時もありますし、他の材料も変な物はありませんね。


「うん、これでタレは完成。よし、十分経ったね、じゃあ、このタレをつけて再度魔道具に入れるよ。今度は二十分」


甘辛くて美味しいタレです。匂いも良いですし、見た目はちょっと赤黒っぽいですけど、まあタレは大体こんなものでしょう。


「……よし、二十分経ったね。これで盛り付けたら完成だよ!」


あれ?どこも変な所無かったんですけど。

ちょっと不思議に思いながらオーブン魔道具から取り出します。


……あれ?えーと、部長さんと私が入れた鳥は何処に行きました?

この魔道具、実はオーブンじゃなくて何処か異界と繋がっていたりしますか?


……はい、ちょっと現実逃避しました。

オーブン魔道具の中には、焼いた水袋鳥の腿肉ではなくぇgr;pskぐ4#dがありました。

あっ、もしかしたら上手く発音出来たかもしれません。

……いや、そんな事はどうでも良いですね。

えっと、何ででしょう?オーブン魔道具の中で何が起こったんでしょう?


せめて部長さんが作った物だけぇgr;pskぐ4#dになってたらまだ良かったんですけど、私が作った物もちゃんとぇgr;pskぐ4#dになっています。


「うん、美味しそうだね!じゃあ、一緒に食べよう!」


全然美味しそうではありませんが、匂いは良いですし多分美味しいんだと思います。


……気にするのは止めとく事にしました。

美味しかったですし、あれはああいう物だと思った方が良さそうです。


結局料理部も個性的な部でしたね。

魔法関係は普通でしたけど、物作り関係は何処もこうなんでしょうか?



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