タマちゃんはパフォーマンス精神旺盛です!
学校長が大笑いした後、用件に入るかと思いきや何故か世間話が始まりました。
で、数十分話した所で退室する事になりました。
ユベール君と少し仲良くなれたのは良かったですけど、何で呼ばれたんでしょうね私?
まあ、考えてもわからないですし、気にしない事にしますか。
ちょっと出遅れましたけど部活動説明会に参りましょう。
セツナ達は今何処を見ていますかね?
うーん、わからないから近い所から回る事にしましょう。
ここから近いのは……魔法実習室ですね。
今日は魔法系の部活は全てそこで部活動を見せている筈です。
「火魔法部に入ればこんな事が出来る様になるよ!」
大きな火柱が幾つも上がり、炎の壁を作り出します。
その炎の壁に向かって一陣の風となったタマちゃん。飛び込む直前ちゃっかり風魔法で一部空洞を作り出すと、タマちゃんは炎の壁を潜り抜けます。
おおー!という声と共に拍手が降り注ぎ、タマちゃんのドヤ顔が繰り広げられます。
「空を飛びたいなら風魔法部においで!」
空中を自由自在に飛び回るとまでは行かないようですが、魔法で空中に居る先輩達が呼び掛けます。
大きく飛び跳ねたタマちゃんが、その先輩達の高さまで飛び上がると、マントを利用しムササビの様に先輩達の間をジグザグに飛び回ります。
再び、驚きと賞賛の声と拍手、タマちゃんのドヤ顔の流れです。
「怪我した人は、回復魔法部謹製の治療水をどうぞ!」
コップに入った水を並べ、露店の様な物を開いています。
怪我はしていませんが少し疲れたタマちゃんは、治療水を一杯貰ってイスに腰掛けます。
暫し戦士の休息です。
区画毎に別れ、部活動をアピールする先輩達。
色んな魔法に驚きつつ楽しそうに新入生が見学しています。
それを私も楽しく見学させて貰います。タマちゃんの楽しい介入も含めて。
先輩達が繰り出す魔法を見つつも、セツナ達を探してみますが此処には居ないようですね。
さて、この後はどうしましょうか……
「ようこそフィリア、見ていってくれ」
「あっ、お兄ちゃん」
ちょっと考え事をしていたら、目の前にお兄ちゃんがいました。
と言う事は、此処は合成魔法部の区画の様です。
「どんな魔法見せてくれるんですか?」
「そうだなぁ、こんなのはどうだい?」
お兄ちゃんが唱えたのは、氷を生み出す『氷結』と、風の塊を作る『風塊』。
『風塊』はただ圧縮されるだけじゃなく、そこに気流を作り出し、そこに生み出された氷の粒により、電気が起こります。
おおっ、凄いです。
最初はパチパチッと光るのが綺麗程度でしたが、どんどん激しくなってスタンガンより危なそうな電気が出来上がります。
風属性の上級魔法で一筋の雷を生み出す『雷迅』という魔法があるんですが(ちなみにルシアさんの得意魔法らしいです)、それを初級魔法二つで作り出したんですね。
威力は『雷迅』より低そうですけど、魔力消費量は物凄く少ないですし、色々活用出来そうです。
「今はこれを魔法陣にしようと思っているんだ、名付けるなら『雷霧』とか?」
魔法陣にするというのは、新たな魔法を生み出すという事です。
魔法陣として完成すれば、誰もがその魔法陣と契約する事で詠唱一つで使える様になります。
まあ、その新たな魔法陣を生み出すというのは物凄く大変で難解で面倒なものなんですけど。それが二つの属性を組み合わせた物なら更に大変でしょう。
実際、学生が新たな魔法を作り出したら物凄い快挙でしょう。今の時点でも凄い事ですし。
「それが出来れば、最終的には水の上級魔法『凍界』と風の上級魔法『旋嵐』を組み合わせて、風の超級魔法『雷劫』を超える魔法を作りたいと思ってる」
風の超級魔法『雷劫』、超級魔法は上級魔法の上の位の魔法です。
『雷劫』は雷が幾つも降り注ぐ魔法で、サンダーストーム!って感じの魔法です。
それを超えるですか……使ったら魔法実習室どころか学校が滅びそうですね。
「頑張って下さい。……でも、学校では使わないで下さいね」
「はははっ、心配しなくても大丈夫だよ。ちゃんと場所は選ぶからね」
そうですか、安心しました。
「そうだ、何かフィリアもやってみる?魔法二つを同時に使って制御するのは難しいけど、器用なフィリアなら出来るんじゃないかな?」
うーん、とは言われてもですね。
私が今覚えているのは『着火』『湧水』『送風』『土壁』『石弾』『硬化』『軟化』だけですし。
『着火』と『石弾』を合わせて『火弾』とか?『着火』と『湧水』を合わせて『温水』とか『蒸気』とか?『湧水』と『土壁』を合わせて『泥沼』とか?
……あんまり面白そうじゃありませんね。
『硬化』と『軟化』を合わせて『無変』とかどうでしょう?
……いや、私何考えてるんでしょう?無意味過ぎますね。
そうです!いっそ、三つ合成とか良いんじゃないでしょうか?
えーと、えーと、中を空洞にした『石弾』に『湧水』、そこに『着火』により『石弾』の中の水を水蒸気に。
そうやって出来た『石弾』を何かにぶつければ……
「やってみますね!それっ!」
私が作り出した『石弾』は魔法実習室の壁にぶつかると同時に勢い良く破裂し、『石弾』の欠片を周囲に飛び散らせます。
その勢いは凄く壁や床に向かった破片が突き刺さっています。
上手く行きました。『手榴弾』と名付けましょう。手で投げてませんけど。
「出来ました!お兄ちゃん!」
「……はははっ、いきなり三種合成とはね。うんうん凄いよフィリア、流石は僕の妹だ!」
お兄ちゃんは最初ちょっと呆然としてましたが、直ぐに嬉しそうに笑い出し、私を抱き抱えながら褒めてくれます。
久しぶりにお兄ちゃんに抱き抱えられて、私も嬉しいです。
合成魔法部の他の先輩方が暫く呆然としたままでしたが、お兄ちゃんに褒められて嬉しい私にはあまり気になりませんでした。




