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コルシカの修復家  作者: さかな
12章 世界の終わりと夜の虹

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第151話 ある者にとっての唯一、ある者にとっての凡俗(1)

【前回までのあらすじ】

壁画に絵を描いた罰として強制連行されたテオ一行は、学園でニキ先生の指導を受けることに。

「モリィ! 来てくれたんだ。いや〜助かるなぁ」

「ボルゲーゼ先生。その謎の愛称、やめてくださいって言いましたよね?」


 艶めく黒髪を後ろできっちりまとめ上げ、皺ひとつないタイトなスーツスカートを着こなした女性教員――クリスティーヌ・モリゾ副学園長は、楕円形の銀ぶち眼鏡の奥から高圧的な視線を送った。

 ニキの後についてパオリ学園にやってきていたルカとアダムは、場違いな痴話喧嘩をただただ苦い顔で見守ることしかできなかった。二人がこの場にいるのは、もちろん騒ぎを起こしたテオのことが心配だったからである。

 電話を受けたニキから「頂上広場でテオが暴れている」と聞かされたときは、さすがのルカもぎょっとしたものだ。いざ駆けつけてみれば、事態はすでに収束した後らしかった。目覚めないニノンを置いてはいけないからと、ニコラスだけは家に残ったが、その選択は限りなく正しいものだったように思う。


「ボルゲーゼ先生がすぐには到着しないことを想定して、わたくしが学園まで生徒たちを引率してきたんです」

「ははは、ぼくへの信頼ゼロじゃないですか」

「残念ながらありませんね」

「ははは」


 大口をあけて笑うニキを見て、モリゾ副学園長はゾッとした顔を見せる。彼女の後ろには、騒ぎを引き起こしたであろう生徒たちがぞろぞろと列を成してついてきていた。青いメッシュを一筋入れた金髪の生徒、ボブカットの黒髪の生徒、赤フチ眼鏡を掛けたポニーテールの生徒――露天温泉でフードワゴンのアルバイトをしていた女性だ――、気怠そうに欠伸など噛み締めているウェーブがかった茶髪の生徒。そして一番後ろで分かりやすく項垂れている、この件の首謀者たる少年、テオドール・マネである。

 二人の教師を間に挟んでいてもなお、ひどいスプレー臭が漂ってくる。よくよく見なくても、彼女たちの服や顔には色とりどりの汚れが飛び散っていた。


「あれー、アダムじゃん。なにしてんのこんなとこで」


 金髪の女生徒がひょこりと頭を傾けて、陽気に片手を上げた。


「ああ? そりゃこっちの台詞だぜ」


 アダムが呆れて肩をすくめたとき、一番後ろで身を縮こませていたテオがおもむろに顔を上げた。天使のような蜂蜜色の癖毛には、七色のスプレー汚れがこびり付いている。

 テオはルカの姿を認めるなり、露骨に顔をしかめた。


「なんっっでルカ君がここにいるんですか」


 人差し指を向けられ、注ぎうる限りの嫌悪感をぶち込んだ声で吐き捨てられれば、さすがのルカも眉をひそめるしかなかった。煙たがられる理由に心当たりがないからだ。


「テオが暴れてるって聞いたから」

「あばっ……」


 テオは頬を紅潮させ、すばやく咳払いをした。


「語弊です。僕たちのこれは暴動じゃなくて、れっきとした活動ですから」


 と、一気に捲し立て、ぷいっと顔を背ける。ルカは「そうか」などと適当に頷き、頭の中で彼が頂上広場の崖から勢いよく飛び降りるシーンを思い浮かべる。それから、改めて目の前の少年に焦点を合わせた。


「とにかく、身体がバラバラになってなくてよかった」

「アダムくーん、通訳お願いしまーす」

「なんでも俺に振るんじゃねえ!」


 片手を上げて叫ぶテオに、アダムが眉根を寄せて言い返す。


「はいはいはい、そろそろ静かにしようか君たち」


 会話の収束を待っていたニキが、しびれを切らして集団の間に割って入った。


「さてと。経緯を詳しく聞かせてもらおうかね」

「ニキせんせ、お手柔らかにね?」

「ダーメです」


 ニキはウインクを飛ばす女生徒を軽くあしらいながら、〈生徒指導室〉とプレートの掛かった教室に問題児たちをまとめて押し込み、後ろ手にぴしゃりとドアを閉めた。廊下に残された三人はしばらくその扉をじっと見つめていたが、ほどなくして中から教師らしい声が聞こえてきた。モリゾ副学園長がほっと安堵のため息をつく。彼女はルカたちに向き直り、先ほどの険悪な雰囲気からは想像もつかない柔和な笑みを浮かべた。


「ボルゲーゼ先生を連れてきてくれて(・・・・・・・・)ありがとう。助かりました」

「えーっと……いやあ……」


 あまりの信用のなさに、ルカもアダムも思わずニキの学園での立場を危ぶんでしまった。話題を変えるように、アダムは「あのォ」と授業で質問するときのように小さく手を挙げる。


「テオたちはこの後どうなっちゃうんスか?」

「反省文は書かせると思います。あとは……そうね」


 彼女は顎に手を添えて視線を上空に巡らせる。


「軽い停学処分かしら」

「停学!?」


 目をやや見開いたルカの隣で、アダムが叫ぶ。モリゾ副学長はびくりと肩を揺らし、顎を引くように頷いた。


「とはいっても、数日程度だと思いますよ。そのあたりの采配はボルゲーゼ先生に任せています」

「そうスか……」


 二人が曖昧に頷いているうちに、モリゾ服学園長はハイヒールの音を響かせながら去っていった。

 再び廊下に夜の静けさが舞い戻る。ぽつんとその場に取り残された男二人は、黙って目の前の扉を見つめた。薄い木製の扉を隔てて、その向こうから騒がしい雰囲気が漏れ伝わってくる。


「なんだよ、元気じゃねえかあいつら。俺たち別に来なくてもよかったんじゃね?」


 もっともな意見を吐いて、アダムは廊下に面した窓ガラスにもたれ掛かる。


「テオは……」

「んあ?」

「なにを描こうとしたんだろう」


 ぽつりと呟くと、隣でアダムが「さぁなー」と伸びをした。

 頂上広場に駆けつけたときは、辺りが暗すぎて壁になにが描かれているのかはっきりとは見えなかった。教師からの信頼も厚いテオが、あえて騒ぎを起こすなんて、きっとよほど強い思いがあったに違いない。


「それより俺、さっきの話のほうが気になるんだけど?」


 ああ、とルカは曖昧に頷いた。結局、ニコラスの隠し事は聞けずじまいだ。ただ二人を巻き込むだけになった後味の悪さから、視線を自身の足先に落とす。


「一丁前に悩みやがってよ。お兄ちゃんに相談するのが恥ずかしい年頃か?」

「誰がお兄ちゃんだ」


 反射的に隣を向けば、ニヤニヤ笑うアダムと目が合った。ルカは年相応にムッとして視線を逸らす。


「……(イヤ)なんだ。大切な人たちが傷付くのは」


 アダムはニヤニヤした笑みをぴたりと止め、なにかを堪えるように俯いた。


「お前ほんと、すぐ真顔でそういうことを……」

「え?」


 なんでもない、と雑にあしらわれ、ルカはさらに訝しむ。アダムは窓に背を持たせ掛け直すと、腕を組んで小さく唸った。


「さっきの話が本当だとしてさ。やな言い方すれば、ニノンの姉ちゃんは道具みたいに使われてるって事だろ」

「……うん」

「もしそれで姉ちゃんにすごい負担が掛かってて、ボロボロになるまで働かされてるのだとしたらさ。俺は、AEPがいい仕組みとは思えねえよ」

「世界中のエネルギーを、AEP発電装置(オンファロス)たったひとつでまかなってるんだ。負担が少ないはずがないよ」

「俺もそう思う」


 会話が途切れ、沈黙が降りる。

 脳裏には自然とオンファロスの地下で目にした光景が浮かぶ。車椅子に乗せられたニノンの姉は、かたく瞼を閉じ、人形のように眠り続けていた。


「絵を描けば絵の具はなくなるし、筆だってボロボロになりゃ買い替えるもんだ」

「うん」

「道具にはスペアが必要なんだよ」

「うん」

「オンファロスだって機械なんだ。奴らはきっと、スペアを探す。そうなりゃ、姉ちゃんの代わりになるのは……」

「…………」


 再び、どちらからともなく会話が途切れる。

 ルカは扉を睨むように見つめた。そう厚くはない木製の板の向こうから、生徒たちを真面目に叱る教師の声が微かに漏れ聞こえてくる。君たちの行いは建造物等損壊罪にあたる、建物を建てた人の気持ちを考えたことがあるか、云々。

 当たり前だが、ニキも今回の騒動を単なる学生のお遊びとは捉えていないらしかった。建築家としての側面が、彼の言葉を余計に厳しくさせているのかもしれない。


「もしもだぜ」


 再び発せられたアダムの言葉に、ルカは意識を隣の友人へと引き戻した。


「ルーヴルの秘密を他にも知ってる奴がいたとして、それでニノンが狙われるようなことがあったら」

「うん」

「なにがあっても、絶対守ってやれよな」


 ルカは思わず視線を隣にやった。今しがた返ってきたそれが、一方的に託すような、あるいは突き放したような言い方に聞こえたからだった。アダムはどこでもない一点を見つめていて、教室からはいつのまにか騒がしい声が聞こえなくなっていた。友人の瞳がいったいなにを捉えているのか、ルカにはわからない。


「わかってる。――そのときはアダムも一緒だろ」

「!」


 アダムの顔が、誰かに手で(はた)かれでもしたようにこちらを向いた。目をわずかに見開いて、まるで不意打ちを食らったみたいな顔をして。しかし、次の瞬間にはもう不自然な表情はなりをひそめていた。アダムはふっと鼻で笑い、口元を得意げに歪めた。


「ま、仕方ねえな。俺もばっちり巻き込まれちゃった(・・・・・・・・・)しなあ?」

「それは、……悪いとは思ってるよ」


 俯いた耳に「ちげーって、バカ」と呆れた笑い声が届き、頭を小突かれる。扉の向こうで、ニキが一際大きな声を出した。



 説教が終わるころには、時刻は二十時をゆうに過ぎていた。

 コルテの街灯はどこも薄暗く、学生たちだけで家に帰すのは少々心許ない。そんなわけで、教師のニキが生徒たちを各自のアパルトマンまで送り届けることになった。「それじゃあお先に」とひとり踵を返しかけたルカだったが、アダムに首根っこを掴まれて、強制的に同行させられた。

 終始壊れたロボットのように喋り続ける女生徒たちは、暗闇などものともせずにずんずん歩く。こんなに騒がしければオバケも変質者も寄り付かないのではないか、などと失礼なことを考えながら、ルカは夜空を見上げながら集団の後ろをついていく。


「――テオ、メシまだだろ? 食って帰ろうぜ」


 まだまだ喋り足りなさそうな女生徒たちを全員送り届けたところで、アダムがやにわに提案した。

 彼は訝るテオの背中をばしんと叩いて合意をむしり取ると、繁華街へと足を向けつつ、携帯端末で手際よくニコラスへの連絡を済ませた。ニキも叱り疲れて腹が空いているらしく、指折り数えながら目ぼしい店の名前をいくつも挙げはじめた。


 ほどなくして一向がやってきたのは、夜間も営業している行きつけの食堂だった。

 地元の住人や学生で賑わう店内を進み、案内された木製の丸テーブルを四人で囲む。斜向かいのテーブルは、以前善哉カナコがタチの悪い酔っ払いの様に突っ伏して号泣していた席だ。微妙な記憶を思い出しつつ、ルカは隣に座った少年の様子を横目でうかがった。なにか考え込んでいるのか、疲れてなにも考えていないのか、テオは口を閉ざしたまま大人しく椅子に座っている。


「随分しおらしくなったもんだなあ、テオちゃん」


 アダムのニヤニヤとした笑みをちらと蔑視したテオは、すぐに視線を背けて、テーブルの中央に置かれた巨大なボウルを手前に引き寄せた。


「反省してるんですよ、これでも。笑いたきゃどうぞご自由に」


 島の食堂では、最初に人数分のスープが一つの器で運ばれてくることが通常で、これを各々が小皿に取り分けて食べるのだ。


「そうトゲトゲすんなって。今日はパーッと食おうぜ! ニキ先生の奢りだから遠慮すんな」

「ぶっ――聞いてないけど!?」


 吹き出したスープを拭うニキに、アダムは悪びれることなく「あざっす、先生!」と両手を合わせた。

 小皿にトマトと豆のスープを取り分けながら、ルカはアダムと二人で露天温泉に出かけたときのことを思い出す。落ち込んでいる相手をご飯に誘うのは、彼の常套手段だ。アダムなりに、テオのことを心配しているのだろう――運ばれてきたマロンビールのジョッキを派手に傾け合う二人の男の姿を眺めつつ、ルカはそう結論づけることにした。


「ルカ君に見せた資料に載ってた絵、覚えてますか?」


 隣でちびちびとスープを飲んでいたテオが、不意に会話を持ち掛けてきた。


「ミーシャが大切にしてた……ダーフェンの〈昼下がりの少女〉?」

「はい。本当は僕、あの絵を壁に再現しようと思ってたんです」


 結局邪魔が入って違う絵になったんですけど、とテオは自虐的に笑う。


「ミーシャのために?」

「……必死だなって、心の中で笑ってるんでしょう」


 テオはスープの中のレンズ豆を端に選り分けながら、冷めた声で言う。


「僕だって他人がそんなことしてたら馬鹿だなって笑いますよ。でも僕なりに考えた方法だったんです。壁画は資源として規定されている中に含まれていない。彼女が大切にしていた絵のように、エネルギーに換わることもない。壁に描くことでダーフェンの絵画は永遠になるんです。もう大切なものを失わなくて済むんですよ、だから……っ」


 勢いよくスプーンを動かしたせいで、ボウルからスープが溢れる。はっと口を噤むテオの代わりに、ルカはテーブルに点々と飛び散った赤い雫を紙ナフキンで拭き取った。


「別に、そんなこと思ってない」

「でも哀れだとは思ってるでしょう」

「思ってないよ」


 そもそも彼女は、自分のためにテオに何かしてほしいと願っているのだろうか。ルカは根本的な疑問を喉元で押し留めつつ、運ばれてきたフレッシュ(ミャ)チーズのパン(ーチュ)を受け取った。


「俺も最近、絵画をこの世界に遺していくにはどうすればいいんだろうって考えてる。ミーシャに対する行動って意味での良し悪しは置いておいて、テオのやってることには興味があるよ」


 予期せぬ答えだったのか、テオは眉をひそめてこちらを凝視した。ルカは籠盛りのパンをひとつ自分の皿に乗せると、テオに籠を手渡して続ける。


「たぶん、絵画修復家であることに、ずっと違和感があったんだと思う。それに気付かせてくれたのはテオだよ」

「は、はあ!? 僕の行動がルカ君のためになってたまるかってんですよ!」

「俺、いつか絵画保存(・・)修復家になりたいんだ」

「無視しなっ――保存?」


 握りしめた拳を振り上げかけて、テオは間の抜けた声を出した。


「ダーフェンの〈昼下がりの少女〉が存在し続けたかもしれない未来を諦めない。今は手探りでも、絶対に辿り着いてみせる。そういうのを“必死”って呼ぶなら……テオは必死を笑うか?」


 両目で真っすぐ、射抜くように相手の目を見る。

 テオは一瞬目を見開き、それから悔しげに眉をつりあげて、頬をかっと赤くした。


「笑うわけないじゃないですか! そんな奴はただの下衆ですよ!」

「ええ……?」


 手のひらをくるりと返したテオは、「だったら僕の話も聞いてもらいますが」と勢いづいて、椅子ごと距離を詰めてきた。いやな予感がしてルカは身を引いたが、それ以上に距離を詰められて、逃げ道を失ってしまった。


「僕は自分で描いた絵をなかなか好きになれなくて。愛着が沸かないっていうか、これじゃないなって思っちゃって。でも実は、一枚だけ気に入ってる絵があるんですよね」

「ああ……えっと、どんな?」


 おずおず尋ねると、テオは水を酒のように煽り、たんとグラスを置いた。


「エッフェル塔の地下にある、シネアクアって水族館を描いた絵です。そこを訪れた親子が水槽越しに魚群を眺めてる絵なんですけど。水族館の中って、お客さんの肌がね、青いんですよ。きれいで、ああ僕の目は世界をこんな風に映すのか……って思ったんですよ」


 口元に笑みを浮かべながら、テオは本当に楽しそうに語った。その萌黄色の瞳に、ルカは確かに青い肌を見た気がした。


「でも、その絵はミーシャのお眼鏡に叶わなくて。だったら価値なんてないかなって、思ってたんですけどね……。やっぱり、好きなんです。僕は、僕が好きだって思う絵をこれからも描いていきたいんです。ルカ君、僕の夢を笑いますか?」


 テオが信頼のこもった視線を寄こす。

 ルカは微笑んで、首を横に振った。


「その絵、見てみたい」

「ぜひ。今度、僕の家にいらしてください。ダーフェンになれなかった男の絵を用意して待ってますよ」

「ああ、家。家か……」


 それはちょっと面倒くさいな、とルカが渋りかけたところで、はす向かいに座るほろ酔いおじさんことニキ・ボルゲーゼが「ダーフェンン~?」と語尾をよろめかせて絡んできた。


「懐かしい名前だなー。ぼくも一枚持ってるのよ」

「え、先生が……ですか?」


 驚くテオに、ニキはへらへら笑いながら頷く。


「そうそう。青いワンピースを着た女の子がこう、ブス~ッとした顔でこっち睨んでてね、怒ってるわけ」

「……!?」


 ルカとテオは同時に顔を見合わせた。酔っ払いが饒舌に語った絵画の特徴が、あまりにも〈昼下がりの少女〉と酷似していたからだ。


「せ、先生!」

「んん? どうしたんだい、テオドール君」

「つかぬことをお伺いしますが、その絵画のタイトルは〈昼下がりの少女〉ではありませんか……!?」


 ニキは頬を赤く染めたまま、しばらく気持ちよさそうにうんうんと唸っていたが、やがて両手を叩いて大きく頷いた。


「そんなタイトルだったかもしれないし、違ったかもしれないな!」

「先生、それ答えになってねーから!」


 隣に座るアダムに突っ込まれつつも、ニキは呑気に指で顎を搔いている。


「もしかして、テオドール君()持ってるの?」

「はい?」

「青いワンピースの女の子の絵は、同じものが何枚も制作されてるんだよ~。ぼくが持ってるのはそのうちの一枚」


 ルカとテオは再度顔を見合わせ、改めて赤ら顔の男に目を向けた。


「……はい?」

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな近くになんか大事な情報が…… 彼女のことがなければ、テオくんとルカくんは結構いい友達になれると思うんだけどなぁ。
[一言] 「彼は訝るテオの背中をばしんと叩いて合意をむしり取ると、」 合意をむしり取る、ってなんか良い言い回しだなぁ。 アダム、君、心配からご飯に誘ったらしいけど、ただで飲みたいだけでしょう。 ニキ先…
[良い点] モネの睡蓮みたいにたくさん作ったのかな……。 えっ、でもそれ……あるならさぁ!あるならさぁ!! 見たがる子が一人、絶対いるじゃん!!
感想一覧
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