しあわせになろう
もしも君が嫌じゃなかったら、この町を出て一軒家に引っ越そう。馴染みの都市がいくつかある。
あの子たちを学校に行かせてあげたいって?
向こうには選ぶほどあるさ!
二人は賢いからきっと他の子にすぐ追いつくよ。
うん、そうだね。学があればたしかに選べる道も増える。アシンドラにはきっと、向いているものがほかにある。ルクサナだってそうだ。でも今の環境じゃ、それに気付かせてあげることができない。
ああ……そうだね。あの子はしっかりしているけれど、まだ子どもだ。子どもはもっと大人に頼っていいはずなんだ。頼り方を知らないのは彼のせいじゃない。だから僕は、疎まれてでもずっと側にいたい。そしていつか、彼に頼ってもらえるような大人になりたいよ――何笑ってるんだい?
人って自分のことになると見えにくくなるんだなって?
そうなのかなぁ。
いつだって自信なんかないよ。
え? 当たり前じゃないか、不安だらけだよ。子どもたちのことだけじゃなくて、その、君の心に僕の存在は一ミリでも影を残せているのかなって――いや、ちがうよ、君の気持ちを疑っているわけじゃない。ただ会って間もない男にこんな風に迫られても怪しいと自分でも思うから……。
だけど本気なんだ。一目見た瞬間から、僕は君のことを――なんだか恥ずかしくなってきたな。
認めてもらえるだろうか、僕たちのこと。
……そうか。君がそう言うなら。
この町を案内してくれって、アシンドラを誘ってみるよ。
そこで今度こそ話そう――これからのことを。




