僕の事情
「そろそろセツ帰ってくるかなぁー」
僕はセツが学園長との面談が終わるまで学園の中庭で時間を潰している。相変わらず周りには人がおらず、遠巻きでひそひそとこちらを伺っている生徒のみだ。
本来ならばセツと別れ、それぞれが選択した授業を受けるはずなのだけれど――
「えっ 全て僕と同じの単位を取る!?」
「……ええ、ずっと一緒にいたいもの」
「でもそれじゃあ自分が受けたいものは受けられないんだよ?」
「……私は、記憶がないからなにを受けたって変わらない、わ?」
なんてことのないようにそう言い切るセツ。普通はもう少し記憶があった時のことで悩むと思うんだけどな……
でも、セツはこれからかなり危険な立場になる。ならば学年という制度のない探索者過程で僕と一緒にいたほうがセツを守ることができるかもしれないな。
「わかった。僕が選んでいるのは探索者過程の全てだ」
「……探索者過程?」
「うん、校長先生にも説明されると思うけど、聖魔学園で受けられる授業は大きく三つに分けられるんだ。
農家や商人、職人とかを育てるための生産者過程、貴族や、軍の参謀なんかを育てる指揮者過程、そして迷宮を踏破したり、危険な場所での採取をして生活する人たちを育てる探索者過程だよ」
「……レイは探索者になりたい、の?」
「なりたいというより、なるしかないんだ」
「……どういう、こと?」
僕は苦笑いしながら事情を話す。
「この国には五大貴族がいるんだ。火のスカレッド家、水のアクイア家、風のウィント家、土のアウス家、そして――光のユイスハイト家」
「……レイの」
「そう、僕の家名だ」
僕は男にしては長く鼻近くまである髪をいじる。その黒い髪に少し白髪の混ざった――まるで、闇が光を飲み込んでいるかのような髪を。
「五大貴族の人間はその得意とされる属性の色の髪を持つ。火なら赤。光なら――金のようにね」
「……レイは?」
「僕はユイスハイト家の長男だけど生まれた時から髪はこの色。そして得意属性も闇。……忌み子だったんだよ」
べつに僕が忌み子だったからといって虐待されていたわけではない。そんなことしたらユイスハイト家の評判が下がるからね。僕は普通に成長したし、お手伝いさんのおかげで生活もとても快適だった。
ただ――――両親からはいないものとされてたけどね。
幸い僕の弟と妹は普通、いや神童と呼ばれるくらいにすごいらしいから家は安泰のようだ。僕は直接会ったことないけど。
そういえば確かあの子らも今年か来年で十五歳かな?
まあそれは今関係ないことだろう。
「そんなわけで家は弟が継ぐだろうし、かといって貴族として忌み子の僕がやっていけるわけがない。だから生産者か探索者になるはずだったんだけど――」
ちらりと肩の上を見やる。
「カラスが使い魔になっちゃったからね。誰も僕が作ったものなんか買ってくれやしないわけさ。だから僕は単独探索者になるしかなかったんだ。」
苦笑いで締める。
それに対してセツはというと。
「……なら、尚更私も探索者過程を受けなきゃいけないわ。あなたを助ける、ために」
今まで見たこともないほど真剣な表情でそう言い切った。
「あなたを助ける……かそんなこと言われたのは婆様が生きてた時以来かな? 」
セツと必修科目の選択について話した時のことを思い返し一人ごちる。すると校長先生との面談は終わったようでセツがこちらへ向かってくる。
「……待たせてごめん、ね?」
「ううん、大丈夫だよ。
それじゃあお待ちかねの使い魔披露と行こうか!」
自分の使い魔がカラスだっただけにセツの使い魔がなにか凄く気になって興奮してしまう。
セツはどんな使い魔と契約したんだろうね!?
主人公がセツに依存しまくりで他のキャラが出せるか心配です(笑)