発見
文章量ってどのくらいがいいんですかね?
これが短いようなら次の話とくっつけたりもしようと思うのですが
「よっと」
目の前のゴブリンの首を愛用のダガーで掻き切ると濁った緑色の液体が辺りに飛び散った。もちろん僕は既に後ろに飛び退いているので液体は付着していない。
「そろそろ帰ろうかなぁ……疲れたし」
帰るにしても辺りに散乱しているゴブリン達の死骸をそのままにしておくわけにもいかないので一箇所に集め、それを指差しながら火の言を綴る。
『火よ、燃やせ』
死骸の山の中心に赤い光が現れたかと思うとポンッというなにかが弾ける音とともに死骸が燃え始める。
「それじゃあ帰ろうか、ルーン」
僕はずっと肩に乗っていた相棒にそう告げると腕輪に触れて防御障壁を展開し、ゆっくりとしたペースで迷宮から抜け出した。
迷宮の出入り口は学園の入り口のすぐ近くにある。
僕は迷宮から出たあとそのまま学園の玄関でポイントを換算してもらおうと玄関に向かった。
玄関には何人かの学園の職員がカウンターの後ろに座っていて、生徒手帳を見せることで倒したカイブツの数、種類を確認、それに応じたポイントが生徒手帳に加算されるという仕組みになっている。
学園を卒業したら利用するようになるギルドとギルドカードと同じようなかんじにしてあるらしい。もっともギルドはポイントではなくて現金換算らしいけれど。
僕がカウンターの前に立つと受付のお姉さんが笑顔であいさつをしてくれ――
「い、いらっしゃいませ……」
……なかった。超引きつってた。滅茶苦茶苦しそうな笑顔がんばって作ってるよこの人!
まあでも、この対応にはさすがに慣れちゃったかな。と心の中で苦笑いする。だってみんなこうだもの。
そんなことはどうでもいいのでちゃっちゃと終わらせようと生徒手帳を手渡す。
「レ、レイヴ・ユイスハイト様ですね。本日はゴブリンが32体、ハウンドドッグが8体なので88ポイントになります。ランクE+まであと1275ポイントとなりますのでが、がんばってくださいね」
と、全くがんばってほしくなさそうな笑顔かどうかすらわからない表情を浮かべながら生徒手帳を返してくる。
今度は僕もはっきりと苦笑いをしながらそれを受け取った。
「さて、寮に帰ってもいいけどまだ少し暇があるね。どうようかルーン?」
僕は相変わらず肩に乗っているルーンに聞いてみた。
けれどルーンは聞いているのかいないのかよくわからない顔で曖昧に頷くだけだ。
「ははは……まあルーンには関係ないもんね。じゃあとりあえず商店通りのほうでもぶらぶらしてみようか」
商店通りは武器屋や、果物屋、遊具屋などいろいろな店が並んでいてそれなりに活気のある通りだ。
まあ僕の周りだけ人がいなくてエアポケットができているけれど……
耳をすませば聞こえるのは僕を嘲る陰口。目を周りに向ければ見えてくるのは僕への侮蔑、嫌悪、哀憫の念。
まあ辛くないと言ったら嘘になるけれどもう慣れたしね。それに僕が僕じゃなかったら間違いなくみんなと同じ行動してるし。
僕の名前と、なによりルーンを見て、ね。
「ん、人だかり……?」
変わらず僕を中心にエアポケットを作りながら通りを歩いいていると妙に人が集まっている。なにか見世物でもやってるのかな?
気になった僕が近づくとサッと見事に人混みが二つに分かれて道ができた。ふむ……嫌われ者っていうのも案外便利なのかもしれないな。
そんなことを思いながら騒ぎの中心へ近づいていくとなにやらぼろぼろの布の塊が見えた。
「ボロ雑巾……? いやもしかしてこれって……人か?」
うん、間違いなさそうだ。ちょっと動いてるし。
なるほど、この行き倒れをみんなは見ていたのか。この街で行き倒れなんて珍しいからね。それで誰がその行き倒れを助けるか揉めて……はいないだろうけど牽制しあってたってとこかな。
確かに助けて損はあっても得はないだろうし誰も助けようとしたりはしないよね。
百パーセント善意で助ける人なんてものは馬鹿としか思えないくらい。
みんな見てるのに助けない。可哀想だと思っても手は出さない。異質な空気だ。
――だからかな?
苦しんでも誰にも救ってもらえないこの人を、僕と重ねてしまって。
この人が盗賊かなにかかもしれないのに。
危険な感染病を持っているのかもしれないのに。
……助けても僕のことは絶対に嫌いになるのに。
助けたいと思った。
僕は大馬鹿なのかもしれないな。と苦笑いをして布切れの塊を担ぐ。予想外の軽さに驚き、今にも死ぬんじゃないかと心配しながら商店通りを僕は後にした。
その後、商店通りに残ったのはレイヴの行動の一部始終を見ていた面々の唖然とした姿だった。
意味のわからない語句や行動なんかは後々説明が入ると思います。