スペード 主章Ⅲ
馬鹿笑いしているランデッロにレンズを向ける。
「ランデッロ、どういうつもりです?」
「年に一度の祭りだ。盛り上げてやろうと思ったのさ」
「余計なことを」
空気の読めない男だ。スペードは溜息を吐いた。
「貴方は既に我々にとっても邪魔だ。消えてもらいましょう」
「ふん、俺はもう、お前には従わない、カトラスA。お前と言い、クォーレと言い! 上から目線で命令ばっかりしやがって! その上芸術を理解しねぇ! 弾け飛べ!」
起爆瓶を投げつけられるが、結界で防ぐ。
「僕は、魔術師ですよ?」
スペードは冷ややかな眼でランデッロを見た。
「僕も、お忘れなく」
「げ、セシリオ・アゲロ……何でてめぇが……」
「僕の可愛い奥さんの邪魔をするものは何人たりとも生かしてはおきませんよ」
「てめぇが女に現を抜かしてるっつーのは本当だったんだな」
ランデッロは卑しく嗤った。
「黙りなさい。さて、どうやって殺してやりましょうか。ねぇ、スペード?」
「そうですね、いっそ両腕と脚を切り落としてそのまま生かしておくというのはどうです? この男は僕らとは違って切り落とした部位が再生することは無い」
「名案です。どこから切り落としましょうか?」
二人が話を進めていくと、ランデッロの顔は青くなる。
「右腕からいきましょう。手伝いますよ。セシリオ。僕もこの男が気に入らなかったところです」
「武器は?」
「そうですね。これで十分でしょう」
そう、スペードは足元に転がっていた小石を拾った。
「そんな石ころで何が出来るんだよ」
「おや? 僕は魔術師だと言ったはずですよ」
スペードは石を両手で包み、なにやら呪文を唱える。
すると石は剣と砂に変わった。
「おや、あまり質は良くないようですね」
「落ちている石ならそんなものでしょう。貸してください。僕は早く切り刻みたくてうずうずしているんです」
「自分の武器があるでしょう。セシリオ」
「こんな小さなナイフでじわじわやれと? まぁ、それも好きですが……たまには思いっきりぐさりとやりたいときもあるんですよ」
セシリオは玩具を前にした子供のように目を輝かせ言う。
「仕方ありませんね。下半身は残して置いてください。指を一本ずつ切り落としてから脚を落としますから」
「ええ。解っています。ああ、逃げそうですね」
ランデッロが背中を向けたと同時に、セシリオはナイフを投げた。
ナイフはランデッロの服を壁に縫いつけた。
「これで逃げられません。さて、ぐさりといきましょう」
セシリオは楽しそうに笑い剣を構える。
真っ青なランデッロとは対照的に、スペードは楽しそうにその状況を眺めていた。
ムゲットに、男の悲鳴が響くまで、そう長くは掛からなかった。