表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/55

52話

光星がゆっくりと美琴に近付いてきた。長い手を伸ばし、美琴に触れようとする。しかし美琴は恐怖から動けず、何も出来ない。


「そっか⋯。」


美琴が呟いた。


「みんな、ずっとこんな所にいたんだね?私がもっと早くみんなの事を思い出していれば。」


光星が美琴に伸ばしかけた手を止めた。


「ごめんなさい。私、怖くて、何も⋯何も思い出せなくて⋯10年も経ってしまった。みんな10年もこんな所で⋯本当にごめんなさい。」


光星の異変に高島は気付いた。


「光星。何してる。」


光星はまじまじと美琴の事を見つめているようだった。


「あの時、私はみんなと一緒になるはずだったんだね?それなのに私だけ⋯ごめんなさい⋯ごめんなさい。許して下さい⋯。」


「光星!」


高島が叫ぶと、光星が高島の事を見た。


「パパの言う事を聞けないのか?せっかく用意したのに。」


「パパ。」


「そうだ。もう少しすれば、お前はここから出られるようになるんだ。だからその子を食え。もう食べてしまえ。」


「パパ。」


光星はまたゆっくりと美琴に近付き始めた。


「⋯ごめんなさい。」


美琴が呟いた次の瞬間だった。


「美琴⋯ちゃん?」


光星が美琴の名前を呼んだ。そして真っすぐ立つと、体を痙攣させ始めた。


「光星⋯?」


高島が驚いていると、光星が彼に飛び付いた。高島は3メートル程吹き飛ばされた。そして光星は彼に近付き体によじ登ると、体をむしゃむしゃと食い始めた。血しぶきが部屋に飛び散る。


「この⋯馬鹿息子が⋯。」


高島が血反吐を吐きながら捨てゼリフを吐く。


「これだから、子供は、嫌いなんだ。」


そう言うと高島はこと切れた。


美琴は立ち上がり、光星が高島を食らいつくす様を見届けた。全ての元凶が見るも無残に肉塊へと化し、そして消えていく。あまりにも残酷な光景なのに、美琴はその光景を最後まで見続けた。




高島は文字通り、いなくなった。


美琴と光星は互いをじっと見つめ合った。


「私には、みんなをどうしてあげることも出来ない。ごめんなさい。」


美琴がそう言うと、光星は窓を開け、庭に出た。そして大きく跳躍し、何処かへと消え去った。





美怜は家で1人、ただ彼女の事を待っていた。


玄関のドアが開く音が聞こえる。


リビングに誰かが入ってきた。


「ただいま、お姉ちゃん。」


美怜は美琴に駆け寄り、優しく抱き締めた。美琴も同じ様に美怜の事を優しく抱き締めた。


「みんなの事を見つけた。でも、どうしてあげることも出来なかった。」


「そっか。」


「ごめんなさい⋯ごめんなさい⋯。」


美琴が美怜の肩で泣いた。美怜はただ静かに、優しく美琴の頭を撫で続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ