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50話

「「「血哭影胎、虚無孕魔。血哭影胎、虚無孕魔。血哭影胎、虚無孕魔⋯。」」」


子供達が増渕に向かって呪言を唱え続ける。増渕は最初こそ泣き叫んでいたものの、次第に何も声に出さなくなった。


部屋のドアの前では、紺野がずっと佇んでいた。罪悪感が無いと言えば嘘だった。しかしもう後戻りは出来ない。


紺野は自分の立場を受け入れた。高島家の運命を。






「紺野先生も、ここにいたんですね。」


「うん。いたよ。」


高島はまたクッキーを頬張りながら答えた。


「君達は何日も呪言を唱えてくれた。呪言って分かるかな?呪いを掛けるって事。」


「私達が、そんな事を?」


「正確には君達の意識を通して、僕がやったって感じかな。」


美琴にも罪悪感が生まれ始めていた。


「その、女性の方は?」


高島は窓の方見た。


「そこの広い庭。何か思い出さない?」


高島に言われ、美琴は庭の方をじっと見つめた。その顔を興味津々に高島が覗き込む。


美琴はボロボロと大粒の涙を流し始めた。


「あらあらあら。」


高島がわざとらしく口を手で覆った。


「思い出した?ねえ、思い出した?」


「私は⋯私達は⋯手伝ったんですね⋯あなたを。」


「そう、そう、そう、そう!」


「何かは、分からない。でも⋯あの庭に、私達はいた⋯。一体⋯あなたは⋯あなたは何をしたんですか!?」


高島が目を輝かせた。


「⋯創造だよ。」






増渕は庭の真ん中に敷かれた白い布に寝かされていた。意識は朦朧としており、力なくそこに倒れていた。


そんな彼女を中心に、子供達が円作るように立っていた。


「良い景色だ。」


高島が呟いた。


「私はここまでよ。」


紺野が話し掛ける。


「本当に見ていかないの?」


「言われた事はやった。後は好きにして。」


「分かったよ。」


「俊輔は⋯。」


「ん?」


「俊輔はどうして教師になろうと思ったの?」


「昔から子供が好きなんだ。」


笑顔の高島を見ると、何か言いたげな表情を浮かべながら、紺野は家を後にした。




高島が庭に出た。倒れている増渕にゆっくりと近づいていく。


「皆さん、よく聞いて下さい。これより【高島魂犠魔生】という儀式を始めます。事前に皆さんには頑張って、このお姉さん対してに準備をしてもらいました。本当にありがとう。」


高島は増渕の足元で立ち止まった。


「では始めまーす。準備はいいかな?」


そう言うと高島は両手を広げた。それに続いて児童達も同じ様に両手を広げた。


「いいかい、みんな、一緒だよ。」


児童達が頷いた。


「黒焔顕現。」


「「「黒焔顕現」」」。


児童達が高島に続いて復唱する。


「邪神胎動。」


「「「邪神胎動。」」」


「皆、犠牲と成り。」


「「「皆、犠牲と成り。」」」


「邪の形、生ずべし。」


「「「邪の形、生ずべし。」」」


児童達が顔を上に上げ、口をパカッと開いた。増渕が両足をゆっくりと開いていく。高島は膝を着き、彼女の腰部に近付いた。


高島と増渕は全裸だった。


「奈々さん、久し振りだね。」


そう呟くと、高島は増渕と繋がった。


児童達の口から、白と黒が混ざったような煙が立ち昇り始めた。その煙がゆっくりと高島と増渕の頭上に集まり、一本の線のように収束し始めた。その線が降りていき、増渕の口元に飲み込まれていく。


「高島の魂、子を持って契と為す。 高島の魂、子を持って契と為す。高島の魂、子を持って契と為す。 」


呪言を繰り返し唱えながら、高島は増渕の腰が掴み、激しく自らの腰を振る。


「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ。」


増渕の瞳は漆黒に染まり、声を漏らしながら、口から児童達の“何か”を飲み込んでいく。


高島は両手で彼女の乳房を触りながら、腰を激しく振り続ける。


「交わりて喜べ交わりて喜べ交わりて喜べ⋯。」


何人かの児童達が、僅かに宙に浮かび始めた。


「素晴らしい⋯!」


高島が歓喜の声を上げる。彼は増渕の下腹部に優しく両手を置いた。


「邪の形、降臨せん。父と母はここに在り。」


増渕の下腹部が震えるのを見て、高島は目を見開いた。


「邪の形、降臨せん!父と母はここに在り!」


児童達全員が宙に浮く。手足をピンと伸ばしながら、口だけでなく、目や鼻からも、煙が立ち昇り、収束していく。全てが増渕の口に流れこみ、彼女の目からの血の涙が流れ始めた。


「さあ、奈々さん。受け止めて。」


「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ。」


増渕が激しく痙攣する。


「高島の魂、血に淫して交わり!参れ!参れ!参れ!」


次の瞬間、高島が増渕の中で果てた。児童達がバタバタとその場に崩れ落ち、倒れ込んだ。


高島は増渕から離れ、立ち上がった。


「参れ、我が子よ。参れ、参れ、参れ、参れ。」


増渕の下腹部が急速に膨れ上がり始め、まるで臨月のようなお腹になった。


「来い、来い、来い、来い、来い。我が子よ。」


「がああぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁあぁっっっ!」


増渕が叫び声を上げたかと思うと、彼女の陰部から赤黒い小さな両手が伸びてきた。その小さな両手は、彼女の陰部を引き裂き、泳ぐように手をバタバタと動かしている。


「来い、来い、来い、来い、来い、父はここだ。」


「あがぁぁぁぁあぁああぁっぁっつぁぁぁっつ!」


増渕の腹部まで体が裂けた。ぬるっと赤黒い体が彼女の陰部から腹部にかけて出来た裂け目から現れ、地面に生まれ落ちた。


血と臓物に塗れたその生き物は、全身が赤黒く、体毛は全く生えていなかった。手足の指は異様に長く、顔はこの世の物とは思えない程恐ろしい顔付きをしていた。


産声が上がった。声は赤ん坊の産声と何も変わらなかった。


「素晴らしい⋯!」


高島は膝を着き、生まれた者を見た。


“それ”は産まれたばかりだというのに、ゆっくりと立ち上がった。身長は赤子よりもはるかに大きく、1歳児程度の大きさはあった。


高島と“それ”は見つめ合った。


「初めまして、我が子よ。」


“それ”は高島をまじまじと見ると、後ろを振り返った。瀕死の増渕が体を小刻みに震わせていた。


「まぁまぁ。」


「そう、ママだ。お食べ。ぜーんぶお食べ。」


高島がそう言うと、“それ”は自らの口を目の位置くらいまで大きく開き、増渕の破壊された陰部付近にかぶりついた。肉や骨が裂け、砕ける音が鳴り響く。


「俊⋯⋯ちゃん⋯⋯。」


「奈々さん。僕達の子供だよ。やったね。」


「子⋯ど⋯も⋯。」


「あ、あの男との子供も儀式に使っちゃったからね。」


「この⋯。」


「ん?」


「変態⋯。」


その瞬間、“それ”が増渕の顔に飛び乗り、顔面を食べ始めた。彼女の下半身はもうとっくに無くなっていた。


結界により封鎖されていた高島家からは、何の音も聞こえてこなかった。

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