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2話

【明日7月24日で、光星小学校 児童集団失踪事件から10年が経ちます。】


テレビに映るニュース番組を、美怜と舞子は見つめていた。この有名な事件は、未だに世間の話題に上がる事が多々あった。今年は事件から丸10年の節目ということもあり、様々なワイドショーはこの事件を番組で取り扱っていた。


【当時、4年2組に在籍していた生徒28名が突如として失踪したこの事件。未だに行方不明となった児童達は、一人を除き発見されておりません。世間を震撼させたこの失踪事件は、未だに警察による捜査・捜索が続けられております。果たして児童達は今、何処にいるのか。今夜は改めてこの事件を振り返りたいと思います。】


「お母さん、テレビ消そうか?」


美怜が舞子に尋ねた。


「大丈夫。」


光星小学校の校庭に並んだ複数台のパトカー。大人数の警察官。事件発生当時の小学校の様子が画面に映し出されている。



【時刻は午後14時前の事でした。5時間目の授業が終了した後、4年2組の生徒達が忽然と姿を消したのです。それも、クラスの全生徒が一斉に居なくなるという、前代未聞の事態でした。教室に戻った担任教諭が異変に気付き、この失踪事件は発覚。直ちに多くの警察官が現場に到着し、すぐに周辺の捜索が開始されましたが、生徒達は行方知らずでした。】


当時の周辺住民によるインタビュー映像が流れる。


『いやあ、そんな事があるんですかね。子供で、しかも大人数でしょう?普通、誰かが見てると思うんだけどねぇ。』


『全く誰も見かけませんでしたね、はい。この辺りは下校時刻になると、子供達が一杯通るので。1クラス分の人数ともなると多少騒がしくなるでしょうし。歩いていたら気付きますよ。』


『クラス全員で、何かイタズラをしてるとかじゃないんですかね?でも、だとしたら凄いか。』


『ちょっと不気味で怖いです。すぐ見つかるといいですけど。一体どうやってそんな一斉に行方不明になるのか⋯分からないですよね。』


【すぐに発見されるかと思われた児童28名。しかし、一向に発見される気配は無く、警察は大規模な捜索へと乗り出して行きました。不自然な事に失踪したと思われる時間帯、校内の監視カメラは録画が停止しており、映像は記録されていませんでした。しかもそれだけではなく、近辺の防犯カメラにも児童達の姿は映っておらず、目撃者も居なかったのです。まさに神隠しのようだと、より事件は話題を集めていきました。】


『お願いします。どなたでも構いません。是非情報提供をお願い致します!』


報道陣に囲まれ、1人の女性が取材に答えている。


『誰にも目撃されていないなんて、とても信じられません⋯!きっと、きっと何処かにいるはずです⋯!』


『まだ原因は分かっていませんが?』


『家出をするような子では決してありません。他の子もきっとそうだと思います。これは事件だと思います!間違いありません!』


『しかし防犯カメラの映像にも何も記録されておらず、まるで足掛かりが掴めていないと聞いていますが。』


『これは誘拐事件です⋯!お願いです!息子を返して下さい⋯!お願いします!名前は岩崎亮太と言います!誰でも構いません⋯!どうか情報提供をお願い致します⋯!どうか⋯息子を⋯返して⋯!』


取材に答えていたのは、10年前の岩崎葉子だった。目は純血しており、涙を止め処なく流していた。


美怜は複雑な気持ちになった。小さい頃から良くしてくれていた、近所のおばさん。今ではもう、何を話したらいいか分からなくなっていた。


【集団失踪事件が発生してから10日後の事でした。失踪していた1人の女児生徒が発見されます。名前は安田美琴さん、当時10歳。美琴さんは午前6時半頃、光星小学校の校庭の真ん中で立っている所を職員によって発見され、無事保護されました。目立った外傷は無かったものの、衰弱仕切っており、記憶障害が⋯。】


テレビの電源が消えた。美怜が無意識にリモコンを握っていた。


「やっぱり見るの止めよ。見なくていいよ、こんなの。」


美怜が無理をして笑顔を作る。


「他の子は⋯どうなっちゃったのかしら。本当に⋯。」


「お母さん⋯。」


「私達は幸運よ。どんな形であれ美琴が帰ってきてくれた。それだけで充分。」


「うん、そうだね。」




「ただいまー。」


玄関のドアが開き、声が聞こえる。父親の信之が帰って来た。


「おお美怜。久し振り。元気か。」


「うん。元気。お父さんは?」


「ちょっと太っちゃったよ。」


「そう?分かんないけど。」


「男は腹につくんだ、腹に。」


「おかえりなさい。」


「うん、ただいま。」


「晩御飯、すぐ用意するから。」


「ありがとう。」 


舞子はキッチンに向かい、夕飯の支度を始めた。


「ねえ、お父さん。」


「ん?」


「お父さんは聞いたの?美琴が話したの。」


「⋯いや、聞いてない。でも母さんが聞いたんだ。間違いない。」


「⋯そうだよね。」


信之は笑いながら、ネクタイを緩めた。


「久し振りに家族全員揃って晩飯だ。美怜、美琴を呼んで来てくれ。」

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