火魔法が低出力すぎて北方の極寒地に追放されました ~おや? 薪も炭もいらないぞ? 無尽蔵の種火で氷の王国を作ります~
「お前の火魔法など、せいぜいタバコの火をつけるのが関の山だ。我が公爵家の恥さらしめ」
そう言い捨てられた僕、ロイは、一年中氷に閉ざされた北方の「氷獄島」へと追放された。
僕の火魔法は確かに弱い。最大出力でもキャンドルの炎程度だ。
けれど、父上は一つだけ見落としていた。
僕の魔法は『消費魔力:0』。つまり、24時間365日、消えることなく灯し続けられる「永久の種火」なのだ。
◇
氷獄島に着いて最初にしたことは、絶叫だった。
「寒すぎる! お湯が沸かせない!」
村人たちは凍えた体で、貴重な薪を少しずつ燃やして震えていた。
僕は村の中央にある、古びた石造りの水道設備に魔法をかけた。
「火よ、消えることなく、ただひたすらに、パイプの底を温め続けろ」
僕の頭の中にある計画の、これが最初の一歩だ。
プロジェクト・インタラクト。
今――Iが起動した。
◇
せっせと火を灯し続けて数時間後。村の蛇口からお湯が出た。
「……おい、ロイ様。これじゃあ村中がサウナじゃねえか」
村人たちは全裸で歓喜した。薪も炭も使わず、24時間いつでも入れる「全自動・床暖房付き公共浴場」の完成だ。
◇
次に困ったのは食料だ。凍土では何も育たない。
僕は村の畑の地下に、耐熱レンガで組んだ巨大な「床暖房」を埋め込んだ。
低出力の火を、数千、数万のポイントに配置する。魔力消費がゼロだから、どれだけ並べても平気だ。
「ロイ様、外は猛吹雪ですが……ビニールハウスの中だけマンゴーが実ってます」
「よし、次はカカオを作ろう。寒い日はココアが飲みたいしね」
北方の極寒地が、いつの間にか「一年中常夏の農業プラント」に変わっていた。
◇
数年後。氷獄島は「不夜城」と呼ばれていた。
街灯はすべて僕の「種火」を水晶に閉じ込めた無尽蔵の照明。
暖房費ゼロ、照明費ゼロ、調理費ゼロ。
この「究極のコストカット」が生んだ利益は、世界中の商人たちを惹きつけた。
「ロイ様、帝都の商会が『氷獄島のマンゴーチョコ』の独占販売権を求めて、国家予算並みの金貨を積んでいます」
「あ、それ隣国の王様に売っちゃった。親愛の印に、って」
◇
ある日、僕を追放した父上が現れた。
薪の価格高騰で家計が火の車らしく、氷獄島の資源を没収しに来たのだ。
「無能な三男坊よ。この地の富はすべて公爵家が管理してやる。ありがたく思え」
僕は微笑んで、指先で小さな、本当に小さな火を灯した。
「父上。この街の地下には、僕の種火が数億個、完璧なバランスで循環しています。僕が指をパチンと鳴らせば、この街の『暖房』はすべて止まる。……マイナス40度の世界へ、ようこそ」
父上の顔が、僕の火よりも赤くなったあと、一瞬で青ざめた。
「あ、それから。父上の屋敷に納品している『永久コンロ』のサブスクリプション、今月で解約しておきますね。解約金は……公爵領の割譲でいいですよ」
僕はにっこり微笑んだ。




