001 コンティニューを選ばない
「それ、全部いらないです」
神を名乗るおじさんに提示された条件を蹴った。
「僕が欲しいのは、この世界に関する記憶の消去だから」
「特典だよ? いままでの子は皆、喜んで選んでたけど」
「消去! チートスキルなんかよりそれが欲しいんです!」
「そりゃ、そんな事なら造作もないけど」
「ではそれで、お願いします」
「簡単に死んでしまうかも、だよ?」
「神のみぞ知り得ぬ、ですか。いいですね、上等です」
「……聞きたいんだけど、何故それを願うのかな?」
「神さまがさっき言ったじゃないですか。そこは、僕が死ぬまでハマってたあのゲームの元ネタになった世界だって」
「そう、だね。とても似ているけど、違う。ここにはNPCはいないし、AIの書いたシナリオもない。ゲームの知識がいつまで使えるか、どこまでか、それは私にも」
「――あなたは、全能で全知を封印した、そうですね?」
「うん。あれはつまらない。未来がない生。私もその一人、だから棄てた」
「そんな神さまなら、僕の望みが解るはずだ」
「心も読めないよ?」
「そんなの、必要ない。僕の決心は伝わっている、そうでしょう?」
「はあ、とんだ逸材を引き当ててしまったようだ。UR? 違うねユニークだ。いいよ、解かった、君の願い通りにしよう」
「ありがとう。それじゃ、楽しんで来ます」
「君に幸いあれ。ああ、これは祝福とかじゃないよ? ただの言葉だ――」
「特に、意味は、ない――!」
そして、僕は知らない大地に転生した。ニューゲームへ、ようこそ、はじめまして。