『虚無の王』
虚無の王に似合わない無知と謙虚
君が全てをさらったところで
この世から何も奪えないというのに
人はその略奪を投資と呼び
反応には困るものの新しい道を歩き出す
なぜ君はその魅力を謳歌しないのか
そしてなぜ君は君ではない者を演じるのか
仮面もつけず 芸能も身につけず
ただその虚無が故に永劫の空転を重ねる
ともすると君は失態を恐れているのか
それこそ虚無の王に相応しい無知と謙虚
君が恥ずかしい思いをしたところで
この世からは何も目減りしないというのに
人はその逡巡を創造と呼び
置き場所には困るものの
新しい時空間を見つけてくれる
なぜ君はその天性を選択しないのか
そしてなぜ君は君ではない者に取り憑くのか
識別もつかず 値札もつかず
ただその虚無が故に無限の発明を重ねる
虚無の王に似合わない無知と謙虚
君が全てをさらったところで
この世から何も奪えないというのに
むしろこの世は つまりその者は
虚無の王にしか触れ得ぬ孤独や
喜びだと言うのに