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13度目に何を望む。  作者: 雪闇影
8章

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第204話 沈黙と選択の間に滲むモノ


 ざわつきの中心では、膝をついてティノが左腕を押さえ、アルフレッドがティノの前に立っていた。

 風属性に組み分けられている生徒たちの中には、口元を両手で押さえている者、キョロキョロと辺りを見渡す者、目を見開き言葉を発せずにいる者たちがいる。

 アルフレッドの前には、カリウス・ディヴィノフが立っており、首筋を左手で擦っている。


「なぁ、あれ……」


 黙っていたシリルが呟くと、ベルンは頭をかきながらため息をついた。


「ああ、ティノを狙った攻撃に見えた」


 淡々としたベルンの言葉に、チッとシリルの舌打ちが続いた。


「おれ、ティノのところに行ってくる」


 シリルが一歩踏み出した次の瞬間、ザッと地面を踏み込む音がし、パシッという音と共にベルンが彼の手を掴んだ。


「シリル、待て!!」


 シリルは一度目を見開いてベルンの方を見るが、すぐに掴まれた右腕の方を見た。

 真っすぐ視線を動かさず見ているベルンとは違い、シリルは眉を(ひそ)め、ティノの方を一瞥すると再びベルンの方を向いた。


「なんでだよ。――どう見ても怪我してるだろ? それなら、行くのが普通だろ」


「普通なら……な、……だけど、教師たちも見てるのに、止めないなら何かある」


 ベルンは軽く周りに視線を向けると、それに続いて息を吸い込んだシリルも周りに視線を向けた。

 教師たちの手は止まっており、少し離れた所にいる貴族の令嬢や令息も、同じ方を向いている。

 ヒソヒソと話す声や、微かに魔法を使う音はするが、魔法を使用している者ですら、合間にカリウスとアルフレッドの方をチラチラと見ている。


「……見たいのか。誰が誰についてるのか……」


「だろうな……迂闊なことはしない方が良い」


 シリルはベルンが手を離すと、軽く息を吐き出した後、息を一瞬止めて歯を食いしばった。

 どんなに学院が学ぶところだと言っていようとも、貴族のための学院ならこうなるのも仕方ない。

 けれど、そのことを理解していても、この状況を呑み込めることとは、また別の話だ。

 飲み込んだ唾は重く、軽く空気を肺にいれ、深く吐き出して彼は口を開く。


「君はどうするの?」


「俺は、リズのところに行く。元々、彼女に用があったからな」


 聞こえたベルンの声はあまりにも素っ気なく、シリルはグッと拳を握った。

 それでも、できるだけ落ち着いた声で、「あっちは放置?」と尋ねたが、頭をかくベルンを見て、手のひらに爪が食い込む。

 数秒の沈黙の後、ため息が耳に届き、喉の奥が熱くなる。

 ベルンが手を出さないと分かっていて聞いたのに、それでも耳を塞ぎたくなった。


「俺には関係ないからな。もしこの中で誰かが行くなら、カトリーナ嬢……君とエミリが行くべきだ」


 カトリーナは唐突に名前を呼ばれ、驚いて心臓が大きく跳ねた。

 周りを見渡して口を開くが、「……」何も言えず、自然に口は閉じていく。


「まぁ、君が決めたわけじゃなくても、もう君の家が誰を選んだか明確なんだから、少しでも不信感を与えない行動をするべきだ……俺は忠告したからな」


 ベルンの冷たい声に、カトリーナは反論すらできなかった。

 喉を通る息は熱く、何が正解なのかも、本当はどうすべきなのかも分からなくなる。

 きっと前までなら、みんなで2人の元に駆け寄っていたかもしれないと思うと、貴族の在り方を考えてしまう。

 しかし……、同時に貴族が何を見ているのか、どう判断するのか理解している。

 些細な一言で悪女と言われ、些細な行動で噂が真実のように語られる。

 レティシアを側で見てきたからこそ、ベルンの言葉を否定できない。


「分かったわよ! エミリ、行くよ!」


「ベルン……君は、本当は誰」

「シリル。1人で首を突っ込むなら、お前は親と縁を切る覚悟を持て。俺は親父だろうと、母親だろうと、斬り捨てる覚悟のうえで選んだ」


 シリルの言葉を遮ってベルンは言い切ると、シリルの方を少しだけ見て頭をかいた。

 そして、俯いたシリルの「そうだね……、ごめん……」と言った声を聞くと、左手をズボンのポケットにしまい、首筋を何度も触ってしまう。

 平民なら、家の意向と本人の意思が違っても、いつか和解できる日が来る。

 しかし、貴族はそうじゃないからこそ、家の意向に従うと決めたんなら曲げてはならない。

 結局、どうするのか自分で決めるしかない……。

 何度も敵対する可能性を言われ、別の道を選ぶということの意味を考え、自分なりに悩んだ結果が今だ。

 だから……、後に引けないからこそ、刃を交える日が来るまで、ギリギリの範囲で助言するしかない。


「分かるけどな、お前の気持ちも……。ティノのもお前も選んでない側だ。もし手当てのためにカトリーナ嬢たちが彼を連れてきたなら、カトリーナ嬢たちからあいつを引き剥がせ。それで、手当てを終えたら、ティノとお前は一緒にいろ」


 シリルは「……分かった」と呟くと、ティノがいる方を見つめた。

 カトリーナとエミリの背中は迷いがないように見え、少しずつ広がる距離に視線を落としたくなる。

 しかし、ふとベルンがいた方を向くと、彼の遠ざかる背中が大きく見えた。


「ベルン……君の行動は、選んだ者としては間違ってるよ。おれの目には、君は……誰よりも中立に見える。……それじゃ、オプスブル家を裏切ってるように見えかねないよ……」


 シリルはベルの背中に向かって囁くと、地面に視線を向け、「クソッ」と呟いて唇を噛んだ。

 ベルンは騎士団からも声が掛かる男だ。

 力だけではなく、洞察力や正義感があるのも、これまでの彼を見ていれば分かる。

 だからこそ、曖昧な自分たちに助言しているのも分かる。

 結果的に、それが彼の立場を脅かす結果になっていることに、シリルは胸が痛くなった。



 アルフレッドはカリウスを睨むと、冷静に「どういうつもりだ?」と低い声で尋ねた。

 しかし、カリウスの口元に笑みが浮かんだのを見て、ギリッと奥歯を鳴らしてしまう。


「悪い悪い。別に悪意があってやったわけじゃないんだ」


「悪意がなかった? あの距離と、角度からの攻撃が偶然だと言いたいのか?」


 アルフレッドは落ち着いて指摘すると、チラッとティノの腕を見て、舌打ちしそうになった。

 先程の攻撃は、とても偶然だと言い切れない。

 咄嗟に、ティノの腕を引き、直撃を免れたものの、彼の左袖は赤く染まっている。

 もし仮に偶然だと言い切るなら、カリウスは破滅的に魔法のセンスがない。

 そうなれば、メイナードが助言したところで、他の貴族の安全や外交問題を考え、学院長が留学を許可しなかったはずだ。

 つまり、攻撃するつもりで攻撃しなければ、ティノに攻撃は当たらなかった。


「ほら、俺って帝国民じゃないから、魔法が得意じゃないだろ? それぐらい皇子なら大目に見てよ。そもそも、魔法が不得意だという面も含め、許可されて留学したんだけど? あれ? アルフレッド殿下は皇帝陛下の決定に、真っ向から背くの?」


 カリウスの口元は笑みが浮かんでいるが、彼の目元に笑みがない。

 それに対し、アルフレッドの表情は硬く、感情が読めない。


「皇帝陛下の御決定に背くつもりはない。だが、陛下が許されたのは留学であって、授業中に同級生を攻撃することではない。今聞いてるのは、その行為の正当性だ」


 淡々した態度でアルフレッド言い切ると、カリウスの方から大きなため息が続いた。


「だからさ、君たちのように自在には扱えないからこそ、俺は杖を使ってるわけでしょ? 偶然当たっただけで、目くじら立てんなよ。謝っただろ? それとも、ルーンハイネ教国教祖の息子である俺が、悪意があって攻撃したと言いたいのか?」


 ティノは一瞬カリウスを睨むと、痛む左腕を離し、アルフレッドの手を掴んだ。

 そして、振り向いたアルフレッドの顔を見ると、唾を飲み込んで静かに告げる。


「アルフレッド殿下、オレは大丈夫です。それ以上は……」


 ティノは言い終えると、首を軽く左右に振り、再びカリウスに視線を戻した。

 先ほど見たアルフレッドの顔に怒りは感じられず、淡々としていたようにも見えた。

 しかし、手から伝わる鼓動は少しばかり早く、内心では怒りを抑えているのだと分かる。

 元々、アルフレッドは所かまわず、感情的に動くような皇子ではない。

 リリーナに声を上げたのも、彼女に政治的な理由があっても、学院で生徒に対する教師の理不尽を許しては、学院内での秩序が乱れるためだろう。

 皇子としては当然の行動だろうが、今の状況でそれに気付く者は少ない。

 それならば、これ以上は自分のために、彼の立場を揺るがしてはダメだとティノは思った。



 少し離れた所からアルフレッドとティノを見ていたベルンは、隣にいるリズが「積みだね」と言うと、冷静に「ああ、完全にアルフレッドを陥れる意図が含まれてる」と答えた。

 しかし、彼女のため息が聞こえ、視界の隅で動くのが見え、数歩進んだリズの背中に向かってため息をついた。


「……やめとけよな。お前じゃ問題が学園に留まらない」


「ちぇっ……なんだよ。でも、本当に貴族ってクソだよね」


 舌打ち交じりにリズが言うと、ベルンは目を瞑りながら深く息を吸い込んだ。

 そして、唾を飲み込むと、ゆっくり目を開けて軽く息を吐き出す。


「否定しないが……お前が選び取った未来も、その貴族様が関わってるのを忘れるな」


 リズは俯いて拳をわずかに握ると、鼻の奥が少しだけ熱く感じた。

 一瞬、瞼の裏に浮かんだレティシアの顔は、無表情で冷たい眼差しをしていた。

 あの時、これが貴族である本来の彼女だと感じ、学院で見てきた彼女が偽りにさえ思えた。

 しかし、日が経つにつれ……、対抗戦の時、レティシアがルカに見せていた笑顔……。

 あの時の笑顔が偽りだと思えず、学院の中でも貴族として最低限の振る舞いをしていたんだと、今なら分かる。

 それが少しだけ寂しく、同時に貴族と平民の違いを突き付けられる。


「分かってる。関わって一番身に染みたから……。一番貴族らしくなくて、一番貴族の仕組みを理解してる人だった」


「ああ、元から一番貴族を貴族として肯定してるのは、オプスブル家とフリューネ家だ。だからこそ、自分たちの行動がもたらす結果を考え、これまでは口を閉ざしてきた」


「何考えてんのか、うちには分かんないけどね」


 ベルンは空を見上げると、(だろうな……)と内心で呟いた。

 平民が明日の心配する時、貴族は来年、翌年の心配している。

 平民が今日の喜びを噛み締めてる時、貴族は次に意識を向けている。

 けれど、同じ貴族でも、見ている景色も、予測している範囲も違う。

 複数の道を考え、どちらも選べる状況にする貴族もいる。

 しかし、それでも綻びは生まれる。

 だけど、レティシアはその綻びさえ予測している。

 同じ貴族でも、彼女がどこまで見据えているのか分からない。

 だが、それを言ったところで、リズには理解できないと割り切ると、ベルンは隣にいるリズに視線を向ける。


「それより、お前の友達が、ちっとも大丈夫じゃなかったぞ?」


「カトリーナのこと? あの子なら、大丈夫よ。必ずね」


 囁くようにリズが答えると、ベルンが大きなため息をついた。


「はぁ……まぁ、そう思うなら、逃げ回ってねぇで話せよな」


「分かんねぇんだよ。明日、もしかしたらカトリーナと戦うかもって思うと、あの子に向き合うのが怖い……うちが選んだ道なのに、それがどうしても怖いんだ……」


 リズは気持ちを吐露すると、何度も続きを話さなければ……と思いつつも、言葉が続かなかった。

 誰かの笑顔を守りたいと願う気持ちは、貴族の派閥の前では誰かを傷付ける。

 それを理解していなかったからこそ、簡単に選べたし、選択は間違っていないと思っていた。

 しかし、少しずつ理解し始めると、友に向き合おうとするたびに手足が震えた。

 結果的に、学院ではベルン以外とは距離を置き、他の人とは最低限しか関わらないようにしてきた。

 誰かの心を傷付けたくて選んだ訳じゃないのに、もしかしたら……誰かの明日を奪わなければならない。

 そんな矛盾した今が、ただ怖いと感じる。


「でも、このままじゃ、本当にカトリーナと敵対することになったら、お前は自分で決めた道を……主を裏切るぞ」


「そうだな……あの人は、本当に何を選ぶんだろう……」


 ベルンはカトリーナのことを聞き、「さぁな」と投げやりに答えると、右手に視線を落とした。

 そして、手のひらを閉じると、息を吐き出しながらアルフレッドの方に視線を向け、カトリーナとエミリの背中を見つめる。

 リズは選んでレティシアの元にいるが、フリューネ騎士団にも、オプスブル家にも属していない。

 その理由をレティシアに尋ねた時、ただ「あなたが知る必要あるの?」と言われただけだ。

 彼女が何を考えているのか、それはベルンも知らない。

 彼女が最後に何を選ぶのか、それすら分からない。

 分かっているのは、彼女が色々と選べる道を残していることだけだ。

 だが、そこに疑問もなければ、不信感もない。

 なぜなら、彼女意志を聞いたからだ。


「帰って来てからしか分からねぇんじゃね? そもそも、疑問を抱くのは自由だが、口にするのは、本来なら裏切りだぜ? 俺に二度と同じことを言うな。次は悪いけど、聞かなかったことに出来ない」


「はぁ……分かったよ。それより、あれどうすんだよ」


「大丈夫。ほら、カトリーナ嬢が動いてる」


 リズはベルンがクイッと前に顎を出すの見ると、彼が示した方に視線を向けた。

 そこには、怪我しているティノに寄り添う友の姿があり、胸が苦しいと思うのと同じくらいに胸が熱くなった。



 カトリーナはエミリと一緒にティノの手当てを軽く澄ませると、彼の赤く染まった袖と、滴る雫の跡を見て腹の底が熱をもった気がした。

 想像以上にティノの左腕の傷口は深く、なぜアルフレッドがティノの前に立っているのか理解できた。

 だからこそ、軽い謝罪だけでは済まされないのだと分かり、彼女は深く息を吐き出すと、真っ直ぐカリウスの方を見て声を上げる。


「お言葉ですが、謝罪しているとは言えないのでは? これは、悪意がある、ないに関わらず、帝国民をルーンハイネ教国教祖の息子であるカリウス・ディヴィノフ様の攻撃が当たった結果です。きちんとした謝罪がなければ、これは皇帝陛下の意図を逆手に取った、宣戦布告だと受け止められますよ?」


「へぇ、面白いね? なら、アルフレッド殿下が謝罪したら、俺も謝罪するよ」


 カリウスの軽い口調や言葉に、カトリーナは一瞬拳を握ったが、唾を飲み込むと軽く息をする。

 そして、気持ちを落ち着かせると、冷静に考えたことを口にする。


「カリウス・ディヴィノフ様、勘違いしているようですが、謝罪はティノ・ドゥ・カルカイム様に対してであります。そこで、なぜアルフレッド殿下に謝罪を求めるのでしょうか?」


「まず、俺は謝ったのに、それでもどういうつもりか聞いてきたからだ。俺は悪気があってした訳なじゃい。なら、アルフレッド殿下が先に頭を下げるべきでは?」


 エミリはカリウスとカトリーナの顔を交互に見ると、咄嗟に下を向いた。

 カトリーナにも口を挟まない方が良いとも言われたし、口を挟むべきじゃないことは分かっている。

 このまま黙っていれば、巻き込まれることもなく、何も自分に被害はない。

 だけど、このまま黙っていれば……、今度はカトリーナが悪者にされる。

 それだけは避けなければと思うと、彼女は震える足に力を入れて立ち上がった。

 しかし、吃らずに上手く言える自信もなく、震える手で握った拳は、指先が冷たい。

 心臓は破裂しそうなくらいに鼓動を打ち、耳の奥では頑張れと叫ぶ。

 彼女は大きく息を吸い込むと、カリウスの方を見て自分を鼓舞して声を出す。


「じ、じ、事実ではないでしょうか。た、立場は関係ありません。カリウス様に悪意がなくても、攻撃がティノ様に当たったのです。そ、その責任を取るのは……き、貴族じゃない、自分にも分かります。そ、その、その点、カリウス様の謝罪は、謝罪と言えません」


「なるほどな……なら、ティノ、攻撃が当たって申し訳なかった。早くちゃんと手当てをした方が良い」


 ティノは内心で、(本音はちーげーだろ)と悪態を吐きつつ、軽く頷くと微笑んで見せた。

 そして、「……謝罪を受け入れます」と感情を込めずに言うと、立ち上がろうと足に力を入れた。

 その瞬間、足首に痛みを感じ、顔を(しか)めながら、避ける時に足首をひねったのだと気付いた。


「――アルフレッド殿下、悪いんだけど肩を貸してくれるか?」


「……ああ、もちろんだ」


 アルフレッドはティノに手を伸ばし、彼の腕を肩に回した。

 暫く歩いていると、「ごめん……迷惑かけて……」と言ったティノの言葉を聞き、「気にすんな」と返した。

 そして、シリルが駆け寄ってくると、ティノをシリルに任せ、今日の出来事を考えていた。

 リリーナの攻撃に始まり、1人も止めに来ない教師。

 遠巻きに見ているだけの生徒たちに、カトリーナとエミリの行動。

 少し離れた所にいるリズとベルンの姿に、シリルが駆け寄ってきたタイミング。

 そして、カリウスの行動と発言。


「なるほどな……」


 アルフレッドは囁くように呟くと、拳を静かに握った。


(カリウスは、今の帝国の現状をよく理解してる。そして、彼は状況を利用して、計算の上でボクを孤立させたかったのか……)


 内心で結論を出すと、アルフレッドはキッと笑みを浮かべるカリウスを睨んだ。

 腹立たしい思いとは別に、何か手を打たなければ、他国が攻め込む理由を他にも与えてしまうと考えた。

 ふと視線を感じてそちらの方を向くと、ルシェルの姿があり、彼の口がゆっくりと動くのが見える。

 目を凝らすが、何と言っているのか分からず、首をかしげると、ルシェルが首を左右に振った。

 そして、ルシェルのが両手で指を動かすのが見え、それが2人しか知らない即席符号だと気付く。

 読み取っていくと、『カリウスには気を付けろ』と伝えていて、アルフレッドは一瞬驚きつつも、『お前もな』と返した。


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