毒の声
て、だ、け、す、か、れ、た
足元にちらばる声を踏みしめて進む。
きっと誰かが紡いだ言葉が、綺麗な硝子細工のようにころがって、あたり一面を埋め尽くしている。
な、い、め、ご、ん、さ
叫ぶようなものから、消え入りそうなものまで、同じものはない。それらを分け隔てなく踏み潰しながら歩く。
その先に、その人はいた。地面に伏せ、全てに屈するように。全てを受け入れるように。
身体を揺すって起こすと、その人は驚いたように口を開ける。
その声は自分の耳に届く前に地面に落ち、音を立てる。
雹のように、からからと。
それすら、踏み潰す。
こないで
そう、足元から聞こえた。
それだけで、十分だった。
その人の腕を掴み、そこから連れ出す。
また足元は、来た時と同じ様に音色を奏でる。
声がしなくなってから振り返る。
耳をすませて、その時をまつ。
その人は口を開いて、こう言った。
補足、というか説明を。
その人、は聞いた者を死に至らしめる毒の声をもつ人物。だからその声を無効化する、声を結晶化する結界のある何処か、に幽閉されています。
そこへ主人公がやってきて……と言ったところから始まります。