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4:新婚約者の理由

「私がこの話を受けたのは、国王陛下からそろそろ身を固めるように言われたこと」


 レイアルーテはその名を聞いて背筋を伸ばし息を呑んだ。まさか、国王陛下直々にそのようなことを……とは思ったが、確かにバイク侯爵様ほどのお方ならば有り得ることだ、とも納得する。


「それでタイミング良く私の父がフォンダー様にお話を?」


「そうだ。タイミングが良かった。それと君自身も婚約者を亡くして直ぐのことで落ち着く先が欲しいだろう、とも思った」


 レイアルーテは目を見開く。

 まさかフォンダーから気遣ってもらえるとは思っていなかった、とでもいうように。


「フォンダー様……」


「私は婚約解消だったが、やはり婚約者が居なくなった時は恋や愛の感情は無くても共に過ごしただけの情があったから暫く落ち着かなかったものだ。君の場合は婚約者を亡くしたのだ。それ以上かと思ってな。君の父親は貴族らしい考え方をしている。娘の君の心よりも貴族として政略結婚を優先させた。それが悪いとは言わないが一ヶ月で新たな婚約者を探す辺り、君は落ち着けないのでは、と思って受け入れた」


 表情は分からない。

 声も温度を感じない。

 けれどフォンダーの優しさが率直な言葉に表れているように思ってレイアルーテは胸が詰まる。


「フォンダー様……、ありがとうございます。そのように仰ってくださり……。私、貴方様の婚約者になれて良かったと思います」


「仮面侯爵なのに?」


 揶揄するというより自身を嘲笑するかのような言葉にレイアルーテは聞こえた。


「仮面を付けられておられようとフォンダー様のお優しさは身に沁みますから」


 レイアルーテは真実フォンダーが優しい、と思う。


「そうか。それと。もう一つ、陛下から見合いをさせられそうにもなった」


「お見合い、でございますか」


「ああ。陛下は他国へ嫁がれた姉君である元王女殿下の娘である他国の王女殿下を、と打診して来てな。あくまでも内々でそのような者が居るが……という程度だったが、その話に頷けば見合いが確定してしまう話だと思って、返事を考えあぐねていた。他国の王女殿下だ。見合いをすれば断れない。そのこともあり、君の父親から頼まれた婚約を受け入れた」


 レイアルーテはヒッと更に息を呑む。

 まさかの陛下からの内々打診……。

 それを断るためにレイアルーテとの婚約、と言われてしまえば本当にそれで良かったのか、とレイアルーテは戦々恐々とした。


「あ、あの、本当に私と婚約をして良かったのでしょうか」


「構わない。既に陛下に届け出て承認も得ているが。他国の王女殿下と婚約し婚姻となった場合、この仮面を取れと命じられてしまえば取らねばならない。だがこう言ってはなんだが、君ならば妻となっても元々は伯爵令嬢。私に命じられる立場には無いから断れる」


 確かに。

 レイアルーテは納得してしまった。

 元々レイアルーテは、人が嫌がるのなら無理に暴くような性格ではない。

 取らない、と宣言したフォンダーの気持ちを尊重しよう、とそのことを受け入れるつもりだ。この婚約が陛下に承認を得てもらっている以上、覆ることもないともレイアルーテは分かっている。

 それならばフォンダーが嫌な気持ちにならないように暮らすのがレイアルーテの務めだろう。


「あの、フォンダー様」


「なんだ」


「改めて婚約して下さりありがとうございます。その、私だけお名前をお呼びするのは居た堪れませんので、どうぞレイアルーテかレイアとお呼び下さいませ」


「……分かった。レイアルーテ、よろしく頼む」


 そうして六十日目の交流が終わり、次は本日から十三日後だ、とフォンダーは自家に帰るレイアルーテに告げた。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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