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陰謀の影には美女がいる~続~  作者: 篠貴 美輔
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1章 鹿島社長の受難

裁判長『被告人。前へ。』


鹿島は静かに立ち上がった。



………………….



時は遡る。


鹿島はタイヤメーカー、株式会社ランディアの社長である。


株式会社ランディアが開発した次世代タイヤ《エコライフ》は日本中のドライバーを虜にし、そのシェア率は30%に達するところまで来ていた。栗林繊維の次世代ナノテクノロジーカーボンファイバーを搭載したエコライフは、耐久性をおよそ70%向上させ、世のドライバーを魅了した。

3人に1人がエコライフを車に装着する世の中。エコライフを知らぬ者はいないほどになっていた。



ニュースキャスター『関越道にて車両事故が発生、川越ICと鶴ヶ島IC間で現在通行止めとなっております。』


夏木『最近事故が増えた気がしませんか?社長。』

ニュースを聞き、夏木は鹿島に語りかける。


鹿島『そうか?今までもこんな感じだったろ?…いや、事故が減らないとエコライフの安全性を世の中に訴えられないからな…事故は減ってもらわないと困る。』 


夏木『そうですね、シェア率が上がれば上がるほどエコライフの責任は高まりますからね。とはいえ、事故はタイヤだけのせいではありませんよ。ね、社長。』


鹿島『うむ、では今日も販売店へプレゼンに行くぞ。』



大手のタイヤ販売店への売り込みはほぼほぼ完了したランディアであったが、鹿島は満足することなく小さなタイヤショップの一件一件にプレゼンを行っていた。



株式会社ランディア本社では、優秀なキャリアウーマンの内山が電話の対応に追われていた。


内山『はい、誠に申し訳ございません。現在実態を把握しているところで……はい、申し訳ございませんでした。失礼いたします。』


高中『またクレーム?今回は何の?』

マイペースな高中は興味深そうに内山にクレームの内容を問う。


内山『1日走っただけで溝がほとんどなくなったって…そんなわけないのに…。タイヤの減りが早いとか、いきなり滑るようになったとか、そういうクレームがいきなり増えましたね。』

内山はいきなり増えたクレームに危機感を募らせた。


滝沢『扱う人が増えればクレームは増えるものですから、根気良くいきましょう。』 


滝沢も優秀な女性社員だ。いつも俯瞰して周囲を見渡し、的確に業務を遂行する。


高中『また電話が鳴っているよ。滝沢さん出て。』


滝沢『高中さんが出ればいいじゃないですか。まあ出ますけど。はい、株式会社ランディア本社、営業部滝沢です。』


滝沢『あ、関西支部の坂茶さん?お疲れ様です。えっ、警察?』

電話の内容に滝沢は動揺を隠すことができなかった。


--------



関西支部に警察が押しかけたのは、ここ2ヶ月の奈良県で起きた15件の事故のうち、10件がエコライフが原因となるものだったからであった。


警察はエコライフに関する情報を集めるため関西支部の調査を行っていった。


滝沢『妙ですね、事故の3分の2がエコライフによるものだなんて。』

滝沢は事態の重さをすぐに察した。


高中『あ、また電話だ!滝沢さん!』

高中は電話に出たくない様子で滝沢に押し付ける。


滝沢『だから自分で出てくださいよ…はい、株式会社ランディア本社営業滝沢です。』

滝沢は電話の内容に驚き、神妙な面持ちで話を聞いた。


滝沢『えっ、東北支部もですか?!』


高中『なになに?警察?』


東北支部においても警察の捜査が入った。


高中『いくら警察でも会社の中にずかずか入り込んで捜査なんかできるの?』

高中はダルそうに滝沢のデスクに寄りかかり聞いた。


滝沢『東北支部、関西支部どちらも、エコライフが原因の事故の半数が死亡事故みたい……』


高中『は?うそでしょ?俺たちが作ったタイヤが原因で…人が死んでいるってこと…?』

高中は事態の深刻さに気付き驚いた。



ランディアに暗雲が立ち込めた。



--------



会社に戻った鹿島は、慌てながら社長室へ入っていった。


しばらくして社長室から出てきた鹿島は、夏木に耳打ちをし、また外出してしまった。


夏木『みんな落ち着いて聞いて下さい。社長は警察から事故多発の件で重要参考人として呼び出されました。社長からの指示は、事態が掌握できるまでエコライフの販売を止めるようにとのこと。大変だと思いますが各販売店への連絡をお願いします。』

夏木は鹿島の現状と出された指示をフロアの社員に伝える。


内山『私が仕切ります。お任せください。』

こんなとき内山は率先して立候補し、活躍する。


夏木『お願いします。それと藤木さん。あなたは関西支部の坂茶と合流して三重のランディア研究所に向かって下さい。』


藤木『坂茶さんと会えるのはいいけど…研究所かぁ〜…ハァ、わかりました。行ってきます。』

藤木は気になることがあるのか嫌な顔をして答えた。


夏木『高中、滝沢は東北支部へ。実態の調査をお願い。』


高中『わかりました。出張楽しみだな!』


滝沢『そういう発言は不謹慎で良くないと思います。』


自社で開発したタイヤが原因で事故が多発している。


その事態を掌握するため、それぞれが動き始めた。


--------



本社で事態の掌握に向けて社員を取り仕切っていた夏木は、一本の電話で崩れ落ちた。


夏木『社長が…逮捕された……』


内山『うそでしょ…?なんで…?』

内山は口に手を当て驚く。


夏木『エコライフに重大な欠陥が見つかったって…』


内山『信じられない……。』



誰にも、何が起こっているのかわからなかった。


関西にいる坂茶、藤木。

東北にいる滝沢、高中。

本社にいる夏木、内山。


皆社長のため尽力したが、何も掴めないまま時間だけが過ぎていった。


鹿島の起訴は、程なくして決まった。



……………



そして現在。


裁判長『被告人。前へ。』


鹿島は静かに立ち上がった。

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