12 『ハッピーエンドをはじめから』
彼女のデビューアルバムを聴きながら思う。
この世には、実は天才も凡人もいないのではないかと。
ただ、戦い続けていたかどうか、でしかないのだと。
まあ、それにどうしても名前を付けたがるのが、人間なのかもしれないが。
イヤホンを耳から引き抜く。
また失敗した。また、最後まで聴くことが出来なかった。
これは、彼女の声じゃない──。
評判は真っ二つに割れていた。また彼女が発端で言葉の戦争が起きていた。僕たちはいつまで殺し合いをしなければいけないのだろう。そう思いつつ、銃を持つ自分がいた。
もしも肉体はそのままに、魂だけを交換出来るとしたら、それは、その人と言えるのだろうか。
肉体がいつまでも老いないままであれば、それは不老不死の完成と言えるのだろうか。
人間が人生の最期に望むもの──それが、急に僕たちの前に提示された。
その人がその人たる根拠は、どこにあるのだろうか。
僕や彼女は、何をもって僕や彼女と言えるのだろうか。
そんなことばかり、考えるようになった。
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健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、彼女を愛し、彼女を敬い、彼女を慰め、彼女を助け、この命ある限り真心を尽くすことを、愛すべき人たちの前で誓った。
僕のことを、いつも孤独にはしてくれなかった、愛すべき人たちの前で。
そして白いヴェールに包まれた彼女と、唇を重ねた。
みんなが笑顔で、僕たちを祝福してくれた。
僕は往く。虹色の道を。
だから、待ってる。
虹の果てにて、君を待つ。
〈了〉




