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6.教皇院

 教皇院は現代でいえば教会の総本部のようなところだった。国会・内閣・裁判所が三権分立の日本と違って、ルシャーナ王国は国王(王宮)・教皇院・騎士団になっている。もちろん平等という建前の日本とは全く違って力分布は 王宮>教皇院>騎士団となっている。


 ここはもちろん宗教団体であることは間違いないが、現代の常識との違いは小説の中らしく魔法や呪術が日常化されている不思議スポットだ。教皇院は表向き宗教事業と癒し治療を担当する部署(日本でいえば、病院・薬局など)を含んでいる。騎士団が国内外の守りの要で(日本では警察や自衛隊・軍隊など)、教皇院と騎士団の2カ所が被るところに魔導士団が隠れるように存在していた。


「 難しくて覚えられない 」

「 そうですか? 普通ですけど 」


 この世界の常識を今、覚えている。頭を悩ます私に対して、侍女のサラはなんでもない顔で不思議そうに言う。その顔からは言葉通りの意味が伝わって見える。


 王宮から教皇院に移った私は、以前の王宮ゲストルームの半分の大きさの部屋を使わせてもらっている。聖女の私が望めば際限なく希望できそうで怖かったけど、ここは王宮と違い宗教総本山だから贅沢はできないことになっていた。よかった。

ただ、国賓である聖女を敬いたいという心遣いを受けて、身の回りの世話を任せるという名目で侍女の1人が付いてもらうことにした。だから、私は迷わずそれをサラにお願いして、ここまでついて来てもらっている。


「 もう一回説明しますから、メモするなりノートとるなりして覚えてくださいね 」


 私の先生役は、サラと同じく身の回りの世話をしてくれるエドガーだ。最初の1日くらいは礼儀正しく紳士対応だったのに、3日も経つと塾講師の先生みたいに容赦がなくなっている。


「 はいはい。でも、字は日本語しか書けませんからね 」


 言い返す私に、


「 『はい』は1回 」


と透かさず指摘を返す。どうですか?聖女の私に容赦しないとは!


「 聖女とか関係ありませんよ。そう思うならもっと能力磨いてください 」

「 ううう~ 」


 そう、お気づきのように彼、エドガーは人の心が読めます。それもかなり正確に。それと反対に、ここに来て私が備わった人の想いを汲み取れるという(空気が読める)ショボい能力は、彼だけまったく通じないことが分かった。


「 エド、その能力ちょっとズルくない? 」

「 いえ、まったく 」


私が彼を睨んで恨み言を言うけど、彼はまったく気に留めていない。今この部屋にいる人たちは、私が異世界から来た聖女様と敬う気持ちを持っていない、というかすっかり忘れている?みたいだ。教皇院が彼の能力を使って私のことを探らせているのかと思って始めは警戒をしたけど、エドガーは自分の能力を他人に言ったことがないらしく、“組織の秘密任務”とかではないそうだ。


『 司祭様の御心を見たら面白そうな聖女の世話をどうしたもんかって考えているのが分かったから、面白そうだし絶妙なタイミングで私が立候補しただけだよ 』


 ここに来て彼の秘密を私が暴いたときに、彼は眼鏡の奥のつり気味の目を細めて楽しそうに笑んでこう言った。彼、エドガーの教皇院での階級は助祭といい、詳しくは説明されても分からないけど、祭司の部下につく執事のような事務仕事をする職種らしい。教皇院の階級序列は上から 大司教(今はニコラウス・カーティス卿) その次が司教で数人いる。この前あった攻略対象のハノ・ボルツマンもこの1人で次期大司教の筆頭との噂がある。その下が大司祭・司祭・助祭・神官となる。


「 それにしてもここの生活は無難で退屈で・・・姫様は『これは肩透かしだ』とか思っていませんか?」


 普段のようにエドガーを先生にしてルシャーナ王国の歴史・言語の勉強中、サラは仕事のため退室している間に急に言われた。


「 え? (どこまで知ってる?)」

「 どこまでと言われましても・・・私の能力はそこまで深く理解できるわけじゃありませんよ 」

「 あのね、声に出してない言葉と会話しないで欲しいわ 気持ち悪い 」

「 ああ・・・それは申し訳ありませんでした。気を付けます 」


 エドガーは軽く目を閉じ会釈して謝罪するけど、本当に嘘くさい。


「 どこまで知っているか分からないけど、エドが言うことは半分はあってて半分はあってない。できたら私は目立ちたくないと思っているし、退屈だけど私にとってはこれが最善なのよ 」


 彼がどこまで私の心を覗いて状況を知っているのかは分からないけど、彼のお陰で知りたい情報を聞き出せることもあるから本音を話すのも良いとしよう。


「 私に言わせて頂ければ、時間の無駄です。逃げていても解決しないわけですから 」

「 時間って 」


 ここに引っ越して7日が経つ。その間、彼は手際や効率優先主義であるのがわかった。彼は神職というよりも執事みたいな能力に特化していて、この教会の中で私の世話の他に事務的な仕事を専門に担っている。お金・時間・手間に関しては容赦なく厳しい。


「 そこで、今日は無駄を省く良い機会でしょう。もうすぐ、魔導士団・騎士団との合同会議がありますから、さあさあ参りましょうか? 聖女様 」

「 はい? 」


何いているのか分からない。

何で今日はローブ着るの? 確かに今朝起きた時に出された服がいつも違うなと思った。そこで気が付くべきだったよ。

それでも、そういうことは最優先で教えてくれるべきじゃない? ありえないわ

私は、最大限に彼の能力を加味して大声で心の中で悪態をつくが、そんなことお構いなしの彼に背中を押されて、踏み入れてはいけない魔の空間(部屋)へいざなわれるのだった。



次回は攻略対象と総当たり戦?です

登場人物総出演!

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