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5.それでも出会いのイベントは発動するらしい

 私の処遇は、国家の重要機密として検討に検討を重ねたらしい。私の知らないところで。国賓扱いだけど無能力の私をどう扱うのか、どう判断したらいいのかってそうとう難しかったのだろうなと想思う。私のことが王宮で今すごく噂になっていると、最近すっかり仲良くなった身の回りの世話をしてくれている侍女のサラ・オルソンが私に教えてくれた。


 サラは王宮にお仕えできる侍女なので、一応貴族、オルソン男爵の4女だ。栗色の髪にダークブラウンの瞳で、顔は普通・・・どちらかといえば可愛らしいタイプの子だ。暇な私が無理やり話し相手につき合ってくれていて、おしゃべりしている中で自分たちが同級生だと分かったらもっと仲良くなった。この世界的にはこの歳は、結婚適齢期を越えようとしている微妙なお年頃だ。それも貴族で4人目の娘さんとなると、容姿端麗で誰かに見初められるか、仕事を極めてキャリアウーマンになるしか道がないのだとサラは悩んでいた。


 なんでサラとこんなに仲良くなれたかというと、私は聖女として敬われる立場にいるけれど、容姿は普通、良くも悪くも平坦とよく言われる典型的な日本人顔だったからだと思う。この世界の人から見れば珍しい黒髪に黒の瞳を持つ私は特別だけど、それだけだ。せめて物語補正で和風美女の設定にしてくれてもいいのに、鏡に映る私の顔はいつも見ている女子高生でも女子大学生でもない冴えない女だ。


 でも、この物語ではそんな私が聖女役。ただ、主役じゃなくて脇役設定だ。


この前、宰相様には問題を起こさなければ散歩してもいいと言われていたけど、ゲーム設定の流れを知らない私は気が気ではなかった。知らない内に攻略対象に遭遇するかもしれない。だって、王宮にいる間は王太子とか、王太子の騎士とかの生活圏内だから、もし会ってしまったら・・・それが恐怖だ。仕方がなくこの部屋を一歩も出ることなく10日ほど過ぎたとき、サラから来客があると告げられた。


「 はじめまして 聖女様 」


 シルバーのカソック(司祭服)に紫の腰ひもを着た、ブルーの腰までのサラサラ長髪が眩しい神職の男性が部屋にやってきた。彼のことを女性のようにきれいな顔をしていると感心していると、


「 私は、司教のハノ・ボルツマンと言います 」


彼は右手を胸に当てて自己紹介をして会釈をした。


ハノ? ハノ・ボルツ・・・マンって?  私の後ろに控えているサラを見ると、彼女の目にはハートマークが浮かんでいてとても私を助けてくれそうにない。この人は、小説の中に出てくる攻略対象の1人じゃない? 確か No4  若く司教まで上り詰めて・・・。


「 あ、前大司教 シュー・ボルツマン様のお孫様(という設定の)」


 つい口に出てしまって慌てていると、ハノは一瞬驚いた顔をしたもののすぐに神職らしい微笑を浮かべて、


「 さすが聖女様ですね。他界しましたが、前大司教 シュー・ボルツマンは私の祖父です 」


と仰る。でも、その顔に出ていない表情は、なんでわかるんだ?油断できないなって書いてあった。


「 あ、この前、宰相様にお聞きしたような?? 」

「 ああ、そうでしたか 」


 適当に誤魔化したけど彼の不信感は増すばかりだ。微笑の裏には疑り深く神職とは違う『分析』という顔を隠していると思った。散々ハノの私に対する『分析』視線を浴びせられながら、宰相様から言われていた私の今後の処遇について説明を受けた。


 彼の説明では、何の能力を持っているか分からない私をすぐに王都に野放しにするのは危険だから、教皇院で一時預かりになったという内容のことを丁寧な言い訳で固めて言われていた。確かに私は、言葉はなんとかわかるが字を書いたり書かれている文字を読んだりすることはできないし、国の決まり事特にお金や制度的な暮らしに必要不可欠な知識が不足していた。


「 だいたい分かりました 」

「 そうですか。さすが聖女様ですね ご理解いただけてよかったです 」


ハノはそういうとまたあの微笑を顔に張り付けた。その笑顔、まがい物ですよね。もう一度後ろにいるサラをみると、あの笑顔の魔力に心が囚われて頭はお花畑の中にいるんだろうなって分かる。


「 どうかされましたか?」

「 いえ なんでもないです。お構いなく 」


『変な奴だ』 

 ハノの本音が伝わる。それに全力で気が付かない振りをしないと、あの『分析』に捕まる可能性がある。恐ろしい・・・。ヘラヘラと作り笑いを作ったけど、これでは不十分な気がするな。


 あんなに避けていたのに攻略対象との出会いイベントは回避できないのか?

こんな違う意味で変なドキドキするイベントいるの? 私には利点はないから、セレナの好感度がゆるぎなくなるイベントというわけだろう。そう勝手に理解した。


 その後もハノは今後の私の取り扱いの細かい内容の説明を一通り続けてくれたけど、『分析』の視線を逃れるすべはなくほぼ頭に入ってこなかった。


小説の挿絵で見たことのある目の前でしゃべるイケメン ハノ司教様の姿は見るだけなら感服お腹いっぱい、そしてもし私が関係ない人なら幸せで頓死してもおかしくない。でも今は、今後の展開がどうなるのかと考えてしまって、単純に喜び楽しめないからぼんやりと彼の様子を見ていた。


 

「 それでは、今後あなた様はこの者がお世話させていただきますので 」


 ハノに指名され進み出た男は黒いカソックを身に着けていた。煌びやかなハノの隣りで彼はまったく存在感がない空気みたいだ。


「 私は、教皇院に所属しています助祭のエドガー・ハウプトマンと申します。聖女様、よろしくお願いします 」


 彼は自己紹介をして一礼する。その姿は攻略対象達とは違い、自分と同じ普通で普通な容姿だった。サラと同じような茶色の髪に茶色の瞳、眼鏡をかけている。名前はエドガー・・・


「 エドとお呼びください、姫様 」

「 ?! 」


黒の服が余計に細く背が高く見せているエドガーは、眼鏡の奥の目を細めて笑みを浮かべて私を見ている。私は自分から自己紹介などしていない。それに私を名前で呼ぶのはこの人が初めてだ。その表情を見ても何を考えていそうか雰囲気が伝わってこない。


『 なんだ? 祭司と知り合いなのか? 』

反対に、半歩前にいるハノの表情からは彼の思っていることが浮かび上がって見えるのに・・・


「 出過ぎたことを・・・申し訳ありません 」


 エドガーは私になのか、上司のハノになのか分からないが、謝罪の言葉を述べて頭を下げる。不思議な人だ、この人は・・・そう思うけど、このエドガーからは攻略対象達と対峙するときのような抵抗感や緊張感は感じなかった。


懲りずにまた書き始めました。

少しは楽しめていただけると幸いです

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